サラ-ム・パックス: バグダッドからの日記
- ソニ-・ミュ-ジックソリュ-ションズ (2003年12月27日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
- / ISBN・EAN: 9784789721646
作品紹介・あらすじ
ぼくの名前はサラーム・パックス。ブログ中毒者だ-。アメリカ軍の攻撃にさらされ、破壊されていくバグダッドに暮らすあるイラク人青年。彼がサラーム・パックスという名でインターネット上に綴る日記に世界中からアクセスが殺到した。ブッシュ、フセイン、国連、アル=カーイダ、空爆、連合軍、奪略、占領下での生活…29歳のイラク人青年の日記には、すべてがリアルな素顔をさらけだす。ときに辛辣に、ときに感傷的に、ときにユーモアを交えて綴られる日記は、現在もバグダッドから配信されている。
感想・レビュー・書評
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2003年、アメリカを主体とする同盟軍が、イラクへ侵攻しました。
大量破壊兵器を保有している。
サダム・フセインが独裁政治を行い、国民を苦しめている。
サダム・フセインがテロ組織アルカイダと通じている。
このような理由からです。
BBCが伝える戦争の映像は、夜に行き交う砲弾の光と、サダム・フセインの銅像がイラク国民の手によってなぎ倒されるもの。でも、戦争が終わってみると、大量破壊兵器はなかったし、アルカイダと通じているという証拠も挙がりませんでした。
これが、日本に伝わってくるイラク戦争の顛末です。
しかし、サラーム・パックスというイラクの青年が、イラク国内からインターネットを介して、イラクの日々の生活をブログに綴っていました。
私たちが日本で見聞きしていたことは、すべてアメリカのフィルターを通したもの。
イラクの人びとが実際に見たものでもなく、イラクの人びとが実際に発した声でもありませんでした。
サダム・フセインの圧政からは解放されたかった。でも、その手段が戦争ではなかったし、その後の混乱も望んではいなかった。
ただ、一つだけ、矛盾を感じます。ならばどうしてイラク国民自らが立ち上がって、フセインを倒そうとしなかったのか?フセインがいなくなったときに、イスラムの宗派にとらわれずに、心を一つにして国を守り立てていこうとしないのか?
農耕民族でもなく、狩猟民族でもない。遊牧民族特有の、何もしなくてもなんとかなるさ…的なところがあるのではないでしょうか。
どうしてもそんな人任せな雰囲気を感じてしまうので、★☆☆☆☆詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
イラクのバグダッドで暮らす29歳のイラク人が、2002年のイラク戦争が始まる直前からの日々を記録したブログ。
イスラムについて、イラクについて、遠く悪いニュースばかりで理解しにくく、とっかかりもなかった。
何だかわからない国、から、自分たちと同じ人たちが住んでいる国、に変わった。私にとってすごくいい本でした。
この本を読んで、自分の国で人が争い、他国から制裁措置を受け、他国から自分の愛する街を攻撃され、偶然乗ったタクシーの運ちゃんの自爆テロに巻き込まれたり、ふとしたことで米兵に射殺されてしまう、それが日常に入り込むということがどういうことかを教わりました。
それが昔のことではなく、現代の現実なんだということも。 -
2015/3/7読了。
中東情勢に疎い私には前半理解が出来なくてつらかったけど、後半からは臨場感あふれる文章に釘付けに。
テレビや新聞からは伝わってくることのない、現地に住む人の思い。
そうだよね、人間だもの。
こんなブログをつけ続けた彼は前駆者だと思う。 -
イラク南部のクルナというまち
ティグリスとユーフラテス川が合流する地点
アダムの樹があったけど電話線があったからアメリカに爆撃された
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戦時下でも人は生きている。でも戦争を経験していないわたしは真にその環境を理解することはできないし、現実味のないものとして受け止めてしまう。
イラク人のブログ。知的で皮肉な文章が面白い。
国連のある意味ってなんなんだろう。
戦争で解決できることなんてないって、どうしてまだわからないんだろう
戦争で宗教色が強くなるのは驚きだったけど確かにそうだよね…反動。鋼とかもそうだったし。
爆撃されるとバグダッドの人はほとんど死んじゃったんだろうな、とか思ってたけどそうでもないようで。でもだからこそ怖い。そして、戦時下でも人は生活している。
うまくことばではあらわせないんだけど、みんなに読んでほしい本。
日本の戦争記とかを昔怖いものみたさで読んだりしていたのだけど、このブログを書籍化したものが今までで1番生々しい戦争記だと思う。 -
アメリカ人は、「罪と罰」のラスコーリニコフ、「ぼく地球」の玉蘭みたいだと思った。世の中は善と悪でできていて、自分の信じる正義を貫けば問題は全て解決できると思ってる。
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とあるイラク青年が書いた
ブログをまとめた本。 -
「13歳のハローワーク」読んでて初めて知った。イラク人の生の声なんて聞いたことなかったから、とても興味深く読んだ。面白かった。そしていろいろ考えさせられる。人間はみな同じなんだなあ、とか、国際的な国同士やらボランティアやらの関わり合いの仕方(援助、介入、無関心など)の難しさとか。日本は平和と安全が比較的保たれている国だと思うけど、それをつくって維持するのって大変なのだなあ、とか。ブログも読もう。英語だけど・・・
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バグダッドに住む一人のイスラム青年によるブログを書籍化した。もっとも読み応えあるのは、03年のイラク戦争開戦から。市内や米軍の様子が活き活き書かれた。そこからさかのぼって本書を読むのがいい。前半はバグダッド市民の視点による貴重な日常の記録だが、あまりに淡々と進むため。書籍化の段階で、著者のコメントや世情分析なども加え、大胆に時系列構成を変更したら、違った面白さが出たのでは。
著者はかなりの教育を受けたようで、相当にリベラルな発想を持ったムスリムなキャラクター。乾いたユーモアも持ち合わせるが、肝心の翻訳が妙に馬鹿丁寧で読みづらい。 -
文化圏が違うので、作者が言いたいことを全て理解することはできないけど、イラクの人の生の声を知ることができる面白い本である。戦時状態の緊迫感が伝わってくる。音楽を聞いたり、プロレスをTV観戦して楽しんだり、私とやってることは全然変わらないのになぁ。普通に暮らせることは、本当に幸せなのことなのだと実感させられる。