アダムの呪い

制作 : Bryan Sykes  大野 晶子 
  • ソニーマガジンズ
3.59
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本棚登録 : 142
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784789722797

作品紹介・あらすじ

それは一本の電話がきっかけだった。著者サイクスが自分と同じ姓をもつ赤の他人のDNAを調べると、父方の遠い先祖でつながっていた。そして、父親から息子に引き継がれる男性DNAをたどったとき、そこには驚くべき事実が待っていた。どうして男性が戦い好きでどうして暴力的で、どうして不安定なのか、すべての疑問はひとつの結末にたどりつく…滅亡のシナリオをもった遺伝子Yへと。遺伝子研究からあきらかになる自然が企てた究極の組み換え実験。あなたの体のなかにかくされた滅亡の遺伝子がいま解明される。

感想・レビュー・書評

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  • おもしろかったー!!!

    『イヴの七人の娘たち』の続編にあたる…はずなんだけど、全く存在に気付いてなかった!
    著者は『イヴ~』と同じ、オックスフォード大学の人類遺伝学教授、ブライアン・サイクス氏。
    そしてなかなか衝撃的なタイトル。
    実際、イヴ(卵子のみが持ち、女系で遺伝するミトコンドリアDNA)の物語は、アダム(Y染色体)の物語と比べたらなんと穏やかで牧歌的ですらあったろうかと思う。

    『イヴと七人の娘たち』は、ミトコンドリアDNAを解析・追跡していくブライアン・サイクス氏の、研究生活の物語…という側面が強かったように思う。
    けれど『アダムの呪い』については、利己的な遺伝子(リチャード・ドーキンスの。)として<ミトコンドリアDNA(女性)>と<Y染色体(男性)>をクローズアップしている。
    「性とは何か?」から始まり、多様な動物の多様なクローニングと性のあり方、「Y染色体の追跡調査」、利己的な遺伝子<Y染色体>と<ミトコンドリアDNA>の熾烈な戦いを解説。
    またY染色体の損傷状態から、人類が取り得る方法や男性絶滅の可能性を秘めた未来を描く。

    Y染色体が自己の遺伝子の保存のために「男性」を利用し、性選択の暴走が起きていく一連の流れは、女性としては身近な経験から考えてもマクロな視点で考えても自然に受け入れられる考え方で、だからこそ性選択の暴走状態をコントロールするために著者が投げかけた「イヴが向かうところ、アダムもついて行かざるをえないのだから。」(p.366)という一文には、深い責任を感じた。

    本書は別に、偏った研究結果を見せようとしているわけではなくて、ブライアン・サイクス氏の研究過程を物語的に楽しめる…という点で、『アダムの呪い』もとてもおもしろいかった!!
    おもしろかったし、私は多分、本来自分が持つべき(だけど、教育や経験や流行や空気によって叩きのめされた)勇気を奮い立たせてくれるように思った。
    『イヴの七人の娘たち』と『アダムの呪い』、セットで買いなおそう。

  • ミステリのような面白さだった。三毛猫のオスが存在しない理由がバー小体のせいだったとは。

    男性にしか受け継がれないY染色体が主人公である。
    サイクスという苗字やチンギスハンのルーツを調べて行くところが承前部分である。
    ミトコンドリアDNA(maDNA)は母から娘へと受け継がれて行く。つまりY染色体とmtDNAは自分の遺伝子を残すためにはより多くの男女または女子を作らなければならない。ここで仁義なき戦いが繰り広げられる。男子ばかり、または女子ばかり生まれる家系では何が起きているのか?

    元来は新たな命を生むことができる女神が中心であったのに、何故男性中心の世界になったのか。きっかけは農耕だった。所有物、権力、富が生まれ、それは性淘汰の基準となった。

    クジャクのオスは美しい羽根でメスを獲得するが、羽根が重すぎては食べられて死んでしまうので、ギリギリのところまでしか羽根は大きくならない。しかし富や権力には増えすぎてもデメリットはないのでますます増大する方向に淘汰されていく。Y染色体が暴走を始めると女性は隷属化され、富を求めて環境破壊さえ行われる。

    また男性のY染色体そのものにも呪いがある。卵子と比べて圧倒的に細胞分裂を繰り返し続けるため、遺伝子のミスコピーを起こす確率が飛躍的に高い。そして受精のさいに遺伝子のエラーが取り除かれないためにダメージが蓄積されていく。Y染色体そのものがなくなっていく可能性がある。

    アダムの呪いの報いなのか、mtDNAの逆襲なのか、先進国だけでなく世界的に男性の精子は減り続けている。人工授精で問題を先送りにしたところで精子の減少と劣化は止められない。

    著者は過激とも思える解決策を提案する。男性そのものを放棄すればアダムの呪いから永遠に解放される。精子は卵子にたどり着くための争いがなくなる。性選択によって過当競争となった強欲と野心の破壊的な悪循環もなくなる。

    卵子に別の卵子の核染色体を入れて胎芽を作る。遺伝子も混ざるのでクローンのような問題も起きない。女性同士による有性生殖だ。

  • 2004年刊。

     男系の間のみで授受されるY染色体(男性性決定因子)に関連する書(「女と男」)の読了から、これを論じる本書を紐解く。
     内容は、良く言えば、Y染色体を軸に、統計学的手法を用い、遺伝現象を巨視的に捉えた遺伝統計学の書。

     だが、所謂アフリカでのイブ仮説、すなわち人類出アフリカ説・単一起源説に実証的根拠を付与したミトコンドリアDNA。これをテーマにした著者の書(「イヴと七人の娘たち」)程の意味は、本書には無さげ。

     また内容で見ても、抽出される統計データが広範囲、あるいは多数とは言い難く、かなり雑駁(ただし調査が困難でやむを得ない面はある)。

     むしろゴシップネタを書き散らしたような印象。
     例えば、チンギス・ハーンと同一のY染色体がそこから30世代を経て千六百万人にまで爆発的に拡大(⇔チンギスと同世代に彼と同一のY染色体を持つ者の有無の言及なし)、あるいは同性愛遺伝子の同定論争(⇔X染色体と見る立場に対し、著者はmtDNAがY染色体に影響すると見るようだが、細胞内エネルギー生産工場たるmt内のDNAが、核DMAにいかにに作用するのか、その機序が全く判らない)。
     さらには貧富の差が激しい社会。強権的政治支配者の治める社会は、女性は難儀する一方、経済優先・環境破壊を黙認する人類となったのは女性の性選択の帰結など、Y染色体の役割や機能の解説とは離れた部分も多。だから面白いとも言えるが…。

     ともあれラスト24~25章で若干、精子減少問題、Y染色体の小型化傾向という現代的課題に言及。ここだけで良かったかも(とはいえ実際、最初の方はザッピングのみ)。

     なお、大規模団粒構造を持つ染色体の毀損・修復と核DNAの毀損・修復と同一視してはならぬなど構造と毀損の在り方には注意。

     著者は英OXF.大学人類遺伝学教授。

  • イブの7人の娘たちではミトコンドリアDNAを使って母系の遺伝指紋を追いアフリカで生まれた人類の足跡を追いかけたサイクスが今度はY染色体を使って父系の遺伝子を追いかける。

    偶々同性の製薬会社社長との関係を訪ねられたことからサイクス姓を追いかけた結果その多くが共通祖先を持つことが判明。mtDNAを調べたポリネシアでは母系はほぼアジア(台湾辺り)が発祥だったのに対しラロトンガ島の1/3の男性がヨーロッパ系の遺伝子を受け継いでいた。どうやら大航海時代の名残の様なのだ。

    スコットランドの北西スカイ島にはマクドナルド家の本拠、クラン・ドナルドセンターが有り世界中のマクドナルドさんがここを訪れる。ちなみにマクドゥーガル、マカリスター家も同根だそうだ。Mcは子孫と言う意味らしい。追いかけて行くとアーガイルの領主サマーレッドに行き着く。スコットランドでは領主の名前をもらう習慣が有るため2割くらいが共通祖先サマーレッドの子孫だとして世界中にマクドナルドさんは200万人。つまりサマーレッドの子孫が40万人いる。

    さらに驚くべきY染色体が見つかった。東は太平洋から西はカスピ海まで広がりそれ以外の地域には見つからない遺伝指紋があった。その数1600万人のチンギスハンの子孫だ。

    前作では全てのミトコンドリアDNAが遡ると一人に集約すると言うことがいまいちわからなかったのだがこの本の例で何となく理解できた。男性の性染色体はXY、女性はXXで例えば4組の夫婦がいて祖先がバラバラとするとX染色体は12種類、Y染色体は4種類。子供が男女各4人計8人として男男、男女、女男、女女と確率的にはこうばらける。子供の代では男の子二人のところで父親のX染色体が途切れ、女の子二人のところで父親のY染色体が途切れ性染色体の種類は16から14に減る、さらにこの子供たちが結婚すると今度は10個に減る。こういうのが続いて行くと途切れる系統と拡がる系統に極端に2分化するようだ。女の子が生まれやすい母系を想像するとわかりやすい。結婚するたびに名字が変わるので名前ではわからないが相手の家系のY染色体は次代に次がれず途切れて行き母系のミトコンドリアDNAは繁栄する、一方で男の子が生まれやすい父系の家系のY染色体は途切れたY染色体の分まで繁栄する。

    クジャクの羽根や鹿の角に変わって、人間の性選択は権力や富などの外的要因が影響し、暴力と征服によって繁栄することがY染色体によって起こされているならばこれはアダムの呪いだと言うのがこの題名の元になっている。

  • 息子しかいない女の母系ミトコンドリアは子の代で途絶えて孫には伝わらず、娘しかいない男のY染色体は自分の代で途絶えて子には伝わらないという事実からも、男も女も自分の意思とは無関係に、生殖に関わる細胞レベルではどうにかして自分と同性の子供を作ろうと必死になっているような感すらある。 

    「Y染色体は遺伝子のゴミ箱」とは些かキツイ表現だが、祖父→父→息子と代を重ねるたびにY染色体の中に修復できないエラーが蓄積され、男が女より先に滅ぶのは確定している事なので、子ネズミ「KAGUYA」の様に卵子2個からXXの女児を誕生させる技術がそう遠くない未来に人間にも応用される事を願う。

  • 前作はmtDNA、本作はY染色体のお話。壮絶な"男"と"女"の生き残りをかけた戦い。「体など所詮遺伝子の乗り物に過ぎない」が本当に思えることばかり。著者が言うように12万5千年後果たして男は・・・?

  • 遺伝学者による、Y染色体に注目した本。

    「利己的な遺伝子」や「種の起源」といった進化論と同じく、理論的にはこうだ!という話なので、「ほんまにそうなん?」となんとなく疑問に感じる部分もある。基本的に、ハミルトンによる利己的な遺伝子論を正として論理の展開をしている。

    ここしばらくヒトゲノムという生物学的な本を読むことが多かったが、この本の切り口はまた違う。この人のイブの7人の娘たちも有名だそうだが、この本は、そのイブの元をたどった(女性に受け継がれていくX染色体を調査した)のとは対照的に、Y遺伝子をたどる。そうする中で、人の動きや、人と人との家系的つながりが見えてくる。それを古い名簿や、家計図や歴史書などと照らし合わせていく。そうやって解き明かされていく歴史もあり、なんとも壮大なロマンを感じる。

    ところで、私は、娘ばかり3人姉妹の末っ子である。そして、母は、また3姉妹の真ん中。母の姉妹の子供も女性ばかり。さらに父は男、男、女の真ん中だが、その下の世代(つまりわたしのいとこ)は、計9人(私たち姉妹を含む)の中で男は1人だけだ。

    男がより多く生まれる家系と女が生まれる家系があるらしい。姉たちの子供たちは男ばかりだけれど、それは、姉の夫達のY優勢度が高かったのだろうか?ちなみに、わが夫はいとこ4人の中で男1人。わたしに男は生まれないのかもなぁ・・・などと考えてしまった。

    ともかく、さほど気合を入れなくても楽しく読める本であった。

  • やっぱり面白い。

    専門的な知識がなくても、
    理解力が優れてなくても、
    それなりに専門的な話が
    読めるというのは
    一般書としてかなり優れている
    と思う。

    遺伝子にここまでわくわく
    させられるとは思っても見なかった。

  • サイクス家の起源
    孤独な染色体
    生命のリボン
    最後の抱擁
    性と性染色体
    男性が誕生するまで
    魚に教わる性のヒント
    性は必要?
    理想的な共和国
    性の解釈
    性別
    ふたつの戦線
    必死の説得工作
    世界の男たち
    ヴァイキングの血
    武将サマーレッドのY染色体
    偉大なるチンギスハーン
    古いガッコウ名簿
    トレーシー・ルイスの十一人の娘たち
    罪なき者の虐殺
    暴君の台頭
    “イヴの七人の娘たち”一族の精子
    同性愛遺伝子
    ガイアの復讐
    呪いを解き放つ

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