黄色い雨

制作 : Julio Llamazares  木村 榮一 
  • ソニーマガジンズ
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レビュー : 56
  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784789725125

感想・レビュー・書評

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  • 全てが朽ち果て腐敗していく沈黙と記憶の中、男は誰も彼もを亡くし、何もかもを失くしました。人は一生のうち何度心が死に絶えるのでしょうか。孤独と絶望だけが残り、何度も死というものについて考えます。
    黄色い雨が全て洗い流してくれればいい。雌犬の温もりは錆び付いた心を癒しました。自然は貴方が地に足付けた場所から真っ直ぐ花を咲かすでしょう。でも私は看病してくれる、あなたの優しい手さえあれば良かった。あなたが、良かった。
    黄色い雨が私を包み込む。木の葉で何も見えなくなる。薄れゆく視覚と静寂に、私は初めて死を愛しいと抱きしめました。

  • 約四時間で読み終えてしまった。素晴らしかった。孤独と死の淵の狭間で絶望的でしかないのに、詩的でどんどん静かな仏教でいえば中陰の世界のような透明感を帯びてくる。主人公はやがて土地と一体化し村の土地の精になって還っていくようであった。傑作。もっとリャサーレスの本が読みたい。

  • 秋がこのように荒々しく冷たい土地があるのだ、ということにはっとさせられた。このおじいさんの愛情はとても古風で伝わらなくて、もどかしい。でも、愛情があれば思い出せることがある。

    わたしには愛する土地もなければ、亡霊になって出て来てくれる家族もいそうになく。ただある日ふっと死んでしまうことになりそうだ。どっちの方がつらくないのだろう。

  • その村からは、村民がひとりふたりと姿を消し、一軒だけが残った。

    娘はとうに死に、息子は村を出て行き、残った男と妻と一匹の雌犬は、朽ちていく村で静かに暮らしていたが、
    妻は、怖ろしく寒い冬の日、首をくくって自殺した。
    男は、雌犬とこの世に残され、深い静寂に包まれた誰もいない村で、最後のひとり、最後の一匹として生きている。

    死期を感じた男は、自分の墓穴を掘り、雌犬の頭を猟銃で吹き飛ばして殺し、たったひとりでいいから、自分がこの廃村で生きていることを思いだし、雌犬と同じように頭を吹き飛ばしてくれる人間が現われることを夢見る。

    とてつもなく暗くて悲しい闇の塊が重く貫いている小説だ。

    最初の第一章の文は殆どといってよいほど、「だろう」で終り、この推量の終止形の連発に違和感を持つ。
    しかし、平坦な文章の連なりの中に、読者は発見を見出す。
    一人称で語っている彼はもう死者なのか?

    その後も一人称の語りは続き、まるで、寒く冷たい朽ち果てた村を間近で見ているように、引きずり込まれていく。

    男は回想する。悲しい記憶ばかりだ。
    雌犬が彼を困らせることはない。
    男も犬も誰からも忘れられて村と一緒に滅ぶ。

    黄色い雨が降る。

    訳者の木村栄一氏は、神戸外大の学長で、スペインの小さな町の書店の店主にこの本を薦められたという。

    この店主は、『黄色い雨』を薦める前に、ブッツアーティの『タタール人の砂漠』を薦めたり、なかなか通の人物である。

    作者のフリオ・リャマサーレスは、1955年スペイン生まれで、弁護士からジャーナリストに転身した人物らしい。

    フリオ・リャマサーレスは、早くから詩人として知られ、散文に転向したらしいが、本書の魅力は、詩的表現の頻出と韻文的な言葉の用い方、悲嘆と絶望を独創的なリアリズムで描ききる力量、人間の命と村の命との連関における循環構造の悲哀。

    ---夜があの男のためにとどまっている---

    畏敬の念を覚える作家である。

  • タイトルと装丁に魅かれて、図書館で借りた。

    ずっと夜道を歩いているような、黄色い雨(「時間」の比喩表現?)をただ眺めているような感覚で、たまに主人公が生きているのか死んでいるのか分からなくなったことも多々あった。

    そして読了後の不思議な感覚。
    自分では解釈できない言葉もいくつかあったが、それでもいいんじゃないかと思ったし、何よりこの感覚が好きだと思った。

    もう一度読みたい、文庫化したら買って手元に置きたいという思いだけが心に残った。

  • 寒くてさみしくて、しかし文章は美しい。と言うことで、私の中ではアリステア・マクラウドと同じところに記憶する。
    村と、過去の記憶と共に朽ちゆく男。生きているのか死んでいるのか分からないくらいの圧倒的な孤独感。
    読んでいる時は気が滅入りっぱなしだったのに、読み終わったらまたいつか読みたくなりそうな予感がした。

  • 散文でありながら、これは詩だ。詩文の簡潔で物事の本質を刺すような方法を使って描かれる、一人の男、否、一つの村のhistoriaの終焉。
    その土地の、その先祖の記憶から離れて生きていく事の出来なかった不器用な男の孤独な死に様に、時間という名の黄色い雨が降り注ぐ。

  • 全て読み終わって、じわじわとその衝撃が胸に広がるような、久々に「文学作品」を読んだという実感の湧いた本だった。
    時を置いて、是非読み返したいと思った本は久しぶり。

    全編、山間の寒村に住む老人の独白である。
    ほかの住人が一人減り二人減り、息子も妻もいなくなってたったひとり取り残された老人の、死を待つだけの孤独な日々。

    独特の語り口、展開で、読みにくいのかなと始め思ったが、その詩的な散文のような文章は、陰鬱なのだが描かれている情景はなぜが美しく、また物悲しく、すぐに物語に引きこまれてしまった。
    リャマサーレスはもとは詩人なのだそう。納得である。

    巻末の翻訳者の木村氏の解説がまた非常に興味深く、「狼たちの月」も是非読んでみたくなった。

  • この小説は、死に逝く者の溜息である。

    忘却と雪に包まれた廃村で、男が一人息絶えようとしている。
    村にいる人間は彼一人。
    かつての住人は皆、村を去った。


    この小説は、死に逝く者の妄想である。

    ポプラの葉が降り注ぐ廃村で、男は自分の人生を想っている。
    そこには死者が顔を出し、隣村の住人が自分の屍を探して駆け付ける。
    しかし村には、男の他に誰もいない。


    この小説は、死に逝く者の残り火である。

    今見ているこの世界が、夢であれば良いと思う。
    この苦しみに満ちた現実が、実は嘘であれば良いと思う。

    そんな願いすら、黄色い雨が無化するだろう。
    そして男は、一人きりで死ぬだろう。

    この途方もない淋しさ。

  • 廃村になったアイニェーリェ村を死が蝕んでいく。
    くらい話でしたね。
    読んでて寒くなりました。
    この死でいっぱいの小説を美しいと思えるようになるのはまだまだ先のようです。
    訳者があとがきで言ってるように、ルルフォの小説を彷彿とさせるような話です。
    ルルフォの『ペドロパラモ』のコマラ村にも死者はいっぱいだったのに、なぜか居心地よさそう!なんて思ったけど、これはそんな風には思わなかったなぁ。
    だってほんとにむせそうなくらい、の死。
    黄色い雨、っていうより黒い雨って気分。あ、言いすぎ・・・なんで黄色なんだろう。
    黄色・・・なんか、うーん。黄色って幸せなイメージだけどな。
    詩集っぽかったです。

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