傑作はまだ

著者 :
  • エムオン・エンタテインメント
3.87
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本棚登録 : 2723
感想 : 336
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784789736855

作品紹介・あらすじ

2019年本屋大賞ノミネート作家・瀬尾まいこの最新作
不器用な父と息子の切なくて温かい物語

引きこもりの小説家・加賀野(かがの)の元へ、生まれて以来一度も会ったことのなかった息子・智(とも)が突然訪ねてきた。加賀野は、しばらく泊めてほしいと言う智の頼みで、
会ったばかりの【息子】と一緒に暮らすことになり--。

感想・レビュー・書評

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  • 「実の父親に言うのはおかしいんだけど、やっぱりはじめましてで、いいんだよね?」と突然やってきた永原智を玄関で迎える。

    『これはいったいどういうことだ?』と、頭が混乱する。息子と名乗るこの青年をどうも父親であろう加賀野正吉は、知っているようではあるが『ひょっとして、作家の財産目当ての新たな詐欺か?』と想像しながら、読み進めると、若かりし頃に加賀野の不祥事によるものであるとわかる。
    と、言うよりも加賀野の社会性ゼロで最悪な性格であるということがわかる。例えば、以下のように…

    ・純粋でまじめだった俺は、妊娠させてしまったことにおびえ、自分に子どもができるということに頭が混乱した。
    結婚しなきゃいけない。まったく好きでもない女と。

    ・自治会に入るだなんて考えたこともなかった。引っ越してきた時に当時の会長に、自治会の説明を受けたけれどそれだけで、その後は入会を勧められたことはない。隣の家の人ですら、二ヶ月に一度、家の前ですれ違えばいいところだ。それなのに、当然回覧板を隣に届けなくてはならないなんて、想像するだけで、ぞっとした。

    そんな加賀野が智と暮らしはじめ、段々と世界が広がってくる。
    自治会のイベントに智に連れられて嫌々ながらでも参加し、自治会の森川さんとの縁ができる。
    ローソンの「からあげクン」の美味しさを知る。
    コーヒーの美味しい飲み方を覚える。
    コーヒー大福を自らが智のためのお土産として買って帰る。
    そして、とうとう25年間会っていなかった両親に会いに、実家に自らが足を運ぶようになる。

    子供が世界を広げるのとは異なり、大人が世界を広げていく。そこには子供のような好奇心とは異なり、対面の人のことを考えた優しさ、自分の無知を受け入れる恥じらい、そこから新たな思いや気づきが感じられる。

    そのせいか孤独で世間知らずの父親と社交性があり健やかすぎる息子のやりとりは、嫌味がない。このよくできた息子が去った後の虚しさの中、自らが実家の両親に会いに行ったことは、智と暮らす前の加賀野には考えれないほどの進展だ。
    だからこそ実家で美月と智の話を聞いた時に、加賀野の心に響いてくるものがあったのであろう。

    「智」の名前の通り、「これからの俺の日々が、きみを知る日だ。」との締めくくりは、それまでの加賀野の変化の過程が思い出されて読後に加賀野の将来の明るい展望を予感する。

    加賀野の傑作は智ではないのだろうか…と、思ってしまった。
    人として見習いたいと思うことが随所に感じられる作品であった。

  • あー、やっぱり瀬尾まいこさん、好きだなぁ。 
    50歳の小説家が、産まれてから25年間一度も会ったことのない我が子と生活を共にする話。
    主人公の俺は仕事柄家に籠りっぱなしで、ご近所付き合いはおろか、他人と会話をすることも滅多にない。それが息子の智(とも)の影響で、ご近所付き合いが始まりどんどん知り合いが増えていく過程が面白い!自治会のおじいちゃんの家にちょっと顔を出したら野菜や肉、土鍋やらを持たされて家に帰ってくるくだりとか、もう大爆笑しながら読みました。(さすがに自転車をもらうのはお断りしたとか(笑)) 
    産まれてから一度も会ったことのない息子‥‥なんてよくよく考えたらとんでもない設定なのに、瀬尾マジックで大爆笑のお話になる。そしてホロリともさせられる。
    養育費は支払ってはいたものの、智と母親はどんな暮らしをしていたのか?俺は知りたいと思ったが、智を見ていれば聞かなくてもそれは分かる。
    そして、他人と関わらずストレスなく暮らしていた俺だが、ご近所付き合いを始めた今、めんどくさくもありながら嫌われたくないと思ったり、ちょっとでも認められたいと思ったり。
    作風が暗くて装丁がいつも黒とか灰色だった俺の小説、次の小説はパッと明るい表紙になるといいですね〜

  • 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐべく、7都府県に緊急事態宣言が出されました。外出を避け、自宅での生活を余儀なくされる日々、色々な噂が人々の中に疑心暗鬼を生み、いつ終わるかもわからない不安に鬱屈した暮らしを余儀なくされる精神的負担は、この先いつまで続くのでしょうか。人と人が交わるとそこにはストレスが生まれるもの。『痛勤』と揶揄される満員電車を降りても待っているのは、職場の果てしないストレスフルな長い一日。それが思いがけずテレワークの一言で全て吹き飛び、ストレスフリーの快適な在宅勤務が待っていた。その初日、二日目とその快適さを感じた人もいたのではないでしょうか。でも実際にはそうではなかった。それは終わらない。三日、四日…とその先へ続いていく。人と関わらない毎日の光と影。人間が集団社会で生きる生き物だったことに気づく瞬間。さて、人にとってコミュニケーションとは何なのでしょうか。コミュニケーションを欠いた生活に人は何を思うのでしょうか。

    『「実の父親に言うのはおかしいけど、やっぱりはじめましてで、いいんだよね?」突然やってきた青年に玄関でそう頭を下げられ、俺はただ、「ああ、まあ」としか声が出なかった』という加賀野正吉は、『すでに三十冊近く本になっているから、印税だけで十分生活できる』という小説家。そこに突然現れた彼の息子を名乗る青年・永原智。『血のつながった俺のれっきとした息子だ。毎月養育費を振り込んだ後に一枚送られてくる写真を二十年間見てきたから、顔はよく知っている。でも、生まれたことを告げられただけで、今まで一度も会ったことはなかった』となんとも不思議な二人の関係が明らかになります。そして『しばらく住ませてよ。食事や洗濯は勝手にするし、ただ寝る場所貸してくれりゃいいんだから、そんな気にしないで』と何食わぬ顔の智。正吉と智の一つ屋根の下での父と子の生活が始まりました。

    『八月からここの近くのローソンでバイトしてる』という智。一方の正吉は『パソコンで小説を書き、メールで出版社に送る。できたゲラを郵送でやり取りして、本になる。家から一歩も出ずに、仕事は成り立つ』と家に篭りきりで、周囲と一切の関係を絶った生活を送ってきました。血の繋がった息子とはいえ、父と子という生活を全く送ってこなかった正吉には智の生き方に戸惑いを隠せません。また、地域の自治会の人々、バイト先の店長など多くの人と自然なコミュニケーションをする智を見て、人とのコミュニケーションを永年自らの意志で絶った自身の生き方に次第に疑問を、不安を覚え、それが正吉の中に大きな変化を生んでいきます。

    日々の暮らしが忙しければ忙しい程に人は余裕を失っていきます。自分の心がささくれれば、それはその人と関わる人にだった伝わるものです。ささくれは伝染していき、人間社会がささくれていく。人と関わらずに生きたい、ストレスのない世界に生きたい、学校に行きたくない、職場に行きたくない、そんな願いが思いもよらぬ形で強制的に実現された社会が、ある意味今の日本の状況なのかもしれません。ストレスフリーだけれど、直接のコミュニケーションが絶たれた世界。そして次第に気づく人と人が直に関わることの大切さ。コミュニケーションなしでは、人間社会はとても味けないものです。人と関わりたい、人と交わりたい、人はコミュニケーションなしではやはり生きていけないのだと思います。

    そして、作品は後半に向かってまさかの展開を見せます。人ってどうしてこんなにも優しいんだろう、人ってどうしてこんなにも愛おしいんだろう、とその展開にとても心が温められました。

    智をきっかけに出会った自治会の長老・森川は『何のために生きるのかなんて、よっぽど時間に余裕がある人間しか考えないよなあ』と笑って正吉に語ります。コミュニケーションを遠ざけた人間には見えなかった、リアルな人と人とのつながりがそこにはありました。ずっと身近に、目の前に、人の優しさ、人のぬくもりがありました。それは、この小説の中だけのことではありません。我々のリアルな日常だって同じこと。人として生きていくために、人が人らしく生きていくためにも、人と人との繋がりは欠かせない。それは大切に育んでいかなければいけないんだということを、とても感じました。

    私はこの作品に、全く意図せず、今の世界のコロナ禍の中で出会いました。もしかすると、今でなければこの作品で描かれる正吉の気づきに、正吉の感じたことに気づけなかったかもしれません。『人間らしい暮らし』という言葉があります。この言葉から何を思い浮かべるでしょうか。今の私は、それは『コミュニケーションのある暮らし』であると答えたいと思います。この国に、そしてこの世界に、再び人と人とのコミュニケーションが普通に取れる暮らしが一日も早く戻ることを願ってやみません。

    少し感想からずれてしまったかもしれませんが、これを読んでくださっている今の皆さんに、せめて文字でこの気持ちを共有したい、そう思って少し長くなりましたが、書かせていただきました。

    「傑作はまだ」。今の落ち込んでいる気持ちの中にひとつ光を与えてもらった、瀬尾さんらしい、とてもあたたかい作品でした。ありがとうございました。

    • さてさてさん
      hiromida2さん、こんにちは。
      コメントをありがとうございました。
      この作品の主人公は自らの意思で人と関わることを避けた生き方をするよ...
      hiromida2さん、こんにちは。
      コメントをありがとうございました。
      この作品の主人公は自らの意思で人と関わることを避けた生き方をするようになりました。今のコロナ禍はそのきっかけこそは違いますが、テレワーク、そして人との接触を避けるという状況下は、コミュニケーション不足を生み、人の心にも何かしら影響を与えていくということでは同じだと思います。この状況が一日も早く収束しますように、この私の感想がただの過去の感想の一つに変わりますように願ってやみません。
      今後ともよろしくお願いします。
      2020/04/15
    • hiromida2さん
      さてさてさん ありがとうございます。
      本当ですね。今は、当たり前の日常に「喝!」を入れられてる気分
      この事態を教訓と受け止めて…さてさてさん...
      さてさてさん ありがとうございます。
      本当ですね。今は、当たり前の日常に「喝!」を入れられてる気分
      この事態を教訓と受け止めて…さてさてさんの仰るように、収束して、過去の出来事になる日が早く来るといいですね。
      頑張りましょう(^^)また、本棚覗かせてもらいます。こちらこそ、よろしくお願いします。
      2020/04/15
    • さてさてさん
      hiromida2さん、ありがとうございました。
      文字の上の短い時間でしたが、コミュニケーションを取らせていただけて良かったです。
      また、よ...
      hiromida2さん、ありがとうございました。
      文字の上の短い時間でしたが、コミュニケーションを取らせていただけて良かったです。
      また、よろしくお願いします。
      2020/04/15
  • 人に関わるのが苦手な引きこもりの作家。
    生まれてから25年間一度も会ったことのない息子が訪ねてくる。

    現代にありがちな家族関係なのだが、そこからの展開がもはやファンタジー(いい意味で)。
    25年もほったらかしにしていたのに、こんなにもダメ男な主人公を思っていてくれる家族がいるなんて!

    個人的には、瀬尾まいこさんによる、理想の息子パート2と言える(パート1は、「戸村飯店青春100連発」の兄弟)。
    2021.12.25

  • 瀬尾作品はいつも登場人物の会話が楽しくてあっという間に読み終わってしまう。普通なら悲しい出来事も、当人が明るくサバサバしているので、こちらも暗い気持ちにならない。

    おっさんの余りの無関心や美月の飛び抜けた母性?に疑問はあったけど、智のほんわかさとコミュ力がすべてまとめてくれて楽しく読めた。
    これから先、どう言う意図で写真を選んでたのか?この家族の未来がどうなるかとかもっと続きが読みたかった。

  • 思ったとおりホッコリする作品だったし、スマホもSNSも出てこないのもいい!
    小説家の俺はコミュニティとも没交渉で余程でない限り篭りきりで仕事と暮らしを営んできた。
    其処へいきなり25年間会わずにいた息子なる若者が来訪し、少しの間だけ寝泊りさせてくれと有無を言わせず上がり込む。確かに弾みとは言え一夜の間違いで子供が出来て、彼が成人する迄毎月10万円送金してきたが領収書代わりに息子の写真だけが送られてくるだけの間柄だ。
    その押し掛け息子は僅か2ヵ月足らずの居候だったのに、知らず知らずのうちに俺の心身の変化たるや!常識やら世間やら家族やら町内会やらと少しずつ少しずつ繋がって行くこの辺りの件りが実にイイのであります♪
    やっぱり瀬尾さんの作品は宜しいなあ。

  • 誰かと居ることで増える悩み。
    でも同時に、誰かと居ることで生まれるしあわせもある。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    まあまあ売れている50歳の小説家・加賀野の家へ、生まれてから一度も会ったことのない25歳の息子・智が突然訪れる。
    仕事場が近いからと、加賀野の家に住まわせてくれというのだ。

    小説を書くだけで必要以外の人間と関わってこなかった引きこもり生活の加賀野は、むすことの暮らしに戸惑いを覚えるが、やがて…

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    先日読み終えた「紙のむすめ」という絵本があります。

    こちらは紙でできた娘が、人間は自分ひとりだけの世界で暮らしています。
    娘ひとりの暮らしには、人間関係のいざこざさまったくありません。
    けれど娘は、心動かされる出来事をわかちあう人がいないということに、深く悩むお話です。

    「すべての悩みは、人間関係の悩みである」(「嫌われる勇気」より。アドラー心理学)という言葉がありますが、わたしは最初、ひとりだけで住む紙のむすめの暮らしも、小説家・加賀野の暮らしも、人間関係の煩わしさがまったくない理想の暮らしだなと思いました。
    だからそこに他の人間が関わってくることが
    「しあわせにつながる」と、言いきってほしくなかったのです。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    「紙のむすめ」はひとりだけの暮らしに悩んでいましたが、「傑作はまだ」の加賀野は、まったくその暮らしに悩んでいませんでした。
    だから25年間、一度も会ったことのない息子が訪ねてきたことで、加賀野はペースを乱されて混乱します。

    「紙のむすめ」と「傑作はまだ」という、似たような状況下のお話を読んでみて、その人が何に悩んでいるか(もしくはまったく悩んでいないか)で、しあわせの定義は変わるのだなとつくづく思いました。
    またいつの世も、人間関係は大なり小なり悩みの種を作り出しますが、やはりそこからは悩みだけでなく喜びも生まれることも事実だなあと感じました。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    「しあわせ」というものは、ひとりひとり違う形をしています。
    おなじような状況下でも、しあわせを感じる人と、そうでない人がいます。
    それでいいのだと思います。

    「すべての悩みは人間関係の悩みである」のかもしれませんが、人間関係をなくせばすべての悩みがなくなり、人間はしあわせになれる、とは限りません。

    加賀野は、一人で暮らしているときも確かにしあわせでした。
    でも、息子が来たことで、ひとりのときとは違うしあわせを、見つけたのです。

    人間と関わらない暮らし、関わる暮らし。
    そのどちらもが正解なのかもしれないし、不正解なのかもしれない。
    でもそれは、他人が決めることではなく、本人が決めることなのです。

    ただしそれを決めるのは、人間と関わる暮らしと関わらない暮らし、どちらも経験してからの方がいいということは、この2作を読んだおかげで、確信できました。

  • 良い作品を読んだ…読了後、まず真っ先に心に浮かんだのはこの思いだった。

    引きこもり鈍感作家と初対面の25才の息子とのしばしの生活。

    二人の笑いありの掛け合いにほっこりし、自分以外の世界を知る大切さ、素晴らしさに、読みながら自然と温かいものに包まれていった。

    心を守るのは簡単。でも自分から開いて目を向けるのは案外難しい。

    時にはストレスを避けるように傷つかないように心を守ることも必要だけれど、人との繋がりでそれ以上に心に栄養をもらえることもある…
    そんなことを柔らかく教えてもらった気がする。

    瀬尾さんは本当に、血の繋がりある家族、ない家族、周りの人との繋がり、その繋がりの向こうに広がる世界を描くのが巧みな作家さんだと思う。

    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      すごく高評価✧*。(ˊᗜˋ*)✧*。嬉しい♪
      私「バトン」より好きだったので本当に嬉しい。
      父親の性格わ...
      こんばんは(^-^)/

      すごく高評価✧*。(ˊᗜˋ*)✧*。嬉しい♪
      私「バトン」より好きだったので本当に嬉しい。
      父親の性格わかるよね(*≧艸≦)
      人に物を貰ったりするとどうしていいかわからないんだよね(笑)
      人とは少し距離を置きたい気がする。
      けど、それでは寂しい気もする。
      難しいね。
      2019/06/04
    • くるたんさん
      けいたん♪

      すごい良かったー!私もバトンより好き!

      鈍感でダメダメだけど憎めない!やっぱりいろいろ似てたりわかってしまうからかな(笑)。...
      けいたん♪

      すごい良かったー!私もバトンより好き!

      鈍感でダメダメだけど憎めない!やっぱりいろいろ似てたりわかってしまうからかな(笑)。

      あと、積極的に外に出ない私は身につまされる思いがしたわ(>_< )

      ちょっと老後が不安になったわ。

      智くんがよくできた子だったね♪

      読後感、ほんと良かったなぁ( ˃̵͈ ˂̵͈ )♡
      2019/06/04
  • ★3.5

    実の父親に言うのはおかしいけど、やっぱりはじめましてで、いいんだよね?
    そこそこ売れている引きこもりの作家・加賀野の元へ、
    生まれてから一度も会ったことのない25歳の息子・智が突然訪ねてきた。
    月十万円の養育費を振込むと、息子の写真が一枚届く。
    それが唯一の関わりだった二人。
    真意を測りかね戸惑う加賀野だが、「しばらく住ませて」と言う智に押し切られ、
    初対面の息子と同居生活を送ることに―。孤独に慣れ切った世間知らずな父と、
    近所付き合いも完璧にこなす健やかすぎる息子、
    血のつながりしかない二人は家族になれるのか?


    血の繋がりしかない親子のお話。
    学生時代に小説家デビューし、殆ど人との付き合いをせず、
    半ば引きこもり状態の父親。
    人との関わりが面倒で、誰に対しても無関心。
    最初は何だこの父親は…と思ったが、
    悪い人ではない。嫌…最低の人だったかな。
    人とはズレていて、鈍感でありながら人の目が気になって
    仕方がない人なんだってわかった。
    息子との生活で少しずつ人らしい(笑)心が呼び覚まされていく。
    突然息子がやってきた理由も明らかになった。

    誰かと近づけば、傷つくことも傷つけてしまうこともある。
    自分のペースで進めないし、何気ない相手のふるまいに不安に駆られることもある。
    自分がどう思われているかが気にかかり、それと同時に誰も自分なんか
    見ていないんだと自意識の強さに恥ずかしくなる。
    自分の価値がどれくらいなのか無意味のことばかりうかがっては、
    優越感や劣等感に襲われる。
    一人で過ごしていれば、そういう醜いものを全て切り捨てられる。
    でも嬉しい気持ちになることは、一人では起こらない。

    人とのつながり、家族との絆がとても大切なんだと気付かせてくれた。
    人間愛に満ちてて、心がほっこり温かくなりました。

  • さすがは瀬尾まいこ。あり得ないだろ!(笑)とツッコミどころ満載の内容だが、なんとも温かく、ほのぼのとさせてくれる。

    50歳のそこそこ売れっ子作家、正吉の元に青年がやって来る。青年はなんと、一度も会ったことのない実の息子。バイトが変わり、ここから近いからしばらく居候させてくれということに。
    青年の名前は智。 一度きりの関係を持った、顔だけの女が生んだ子どもだった。もちろん子どもの存在は知っていたし、20歳までは毎月養育費を送金し、受け取った旨を知らせる素っ気ない返事と一緒に智の写真が添えられているという関係が続いていた。
    しかし、20歳を超えてからはそのやり取りすらなくなっていた。

    実はこの正吉、妻子(正確に言えば妻ではないのだが)に興味がないだけでなく、元々人間にも世間にも興味がなく、小説以外ではほとんど世間と触れ合うことなく生きてきた変わり者。両親とも28年間も会っていないまま。

    さて、智がやって来た本当の目的は?奇妙な同居生活で正吉は変わっていくのか。

    正吉はとにかくどうしようもない男なのだが、周りの人たちが本当に素晴らしい。月日が経ち、美月(智の母親)も変わったのだなと思ったが、実は違った。この物語は大切なことを気付かせてくれた。

    人間は、自分が変わることで、周りの見え方がだいぶ違うんだなと。

    どうしようもない中年のおっさんの再スタート!まだまだやり直せるよ、おっさん!

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著者プロフィール

瀬尾まいこ(せお・まいこ)
1974年、大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒。2001年「卵の緒」で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年、単行本『卵の緒』で作家デビュー。05年『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞、08年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞、19年『そして、バトンは渡された』で本屋大賞を受賞。『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』など著書多数。唯一無二の、爽やかで感動的な作風が愛されている。

「2022年 『掬えば手には』 で使われていた紹介文から引用しています。」

瀬尾まいこの作品

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