はじまりのとき (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)

制作 : Thanhha Lai  代田 亜香子 
  • 鈴木出版
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本棚登録 : 16
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784790232889

作品紹介・あらすじ

戦火のベトナムをのがれ、難民としてアメリカ合衆国でくらすことになった家族が、あらたに一歩をふみだすまでの1年。英語も話せないままいきなりアメリカにとびこんだ10歳の少女の目でみずみずしく描かれる、戦争、いじめ、隣人、家族……。じーんと心があたたまる物語。2011年全米図書賞児童書部門 2012年ニューベリー賞オナーブック受賞

感想・レビュー・書評

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  • ベトナム戦争によって、南側の将校だった父が行方不明になり、母と兄とアメリカへ亡命する少女の話。
    作者の自伝的小説…日記風に横書きで書かれている。
    ベトナム戦争の始まりの頃の様子…食料が手に入らなくなり生活が困窮していくことなど…少女の視点から書かれている。また、行方不明の父の友人の力添えでアメリカに亡命し、新たな地での不安な生活や学校でいじめられながらも全く分からなかった英語を覚えて、逞しく生きる様子が描かれている。
    戦争のない場所に移ってからも多くの困難があることを、子どもの視点からその心情が詳しく書かれている。紛争で犠牲になるのはいつも小さな子ども達だ。

  • ベトナム戦争、アメリカ移民、いじめ、人間のやることとは…

  • ベトナム戦争の終結とともに、ベトナムを後にして難民としてアメリカのアラバマ州に逃れたベトナムの10歳の少女ハの日記のような詩のような記憶の本。

    キム・ハは、母と兄三人とともに南ベトナムに暮らす。
    父は海軍の兵士で、九年前につかまって帰ってこない。
    それから、クアン兄さん、ヴュ兄さん(ブルース・リー)、ホイ兄さん(エンジニアになる勉強をしている)と母とともに父の帰りを待ちながら、ベトナムの戦況を見守ってきた。母は海軍の事務所で働きながら、洋裁の内職もして家計を守っている。

    母親は子どもたちにしっかりとして職業につくように、教育をつけようと考えるしっかりもの。

    前半はベトナムの日常生活を、テト(正月?)のような行事やものの値段を記しことで克明に表している。

    一転、ベトナム戦争の終結で、ベトナムを離れる決断をする母。子ども四人を説得し、行き先を決め、船を選ぶ。自ら運命を切り開き、子どもの将来を守る決意が感じられる。

    そしてどうにか渡ったアメリカのアラバマ州、保証人はカウボーイ。(でも馬は持っていないらしい)

    親切なカウボーイだが、その妻は難民受け入れについては賛成してないらしい。
    学校でのからかい。
    ベトナムでは決して落ちこぼれではなかったのに、英語がわからないことでまるで自分が幼い子供のように扱われていることに腹を立て、イラだつハ。

    それでもふんばって生きていかなければならない。

    文化の違いを受け入れられないでいる幼いハ。
    妹を守ろうとする兄たち。
    ひとりで子どもたちを見守る母。
    どのような状況でも生きていこうとする家族の力が感じられる。

    テトにはすべてを新してむかえる。

    P34母さんは
    心をしずめなさいってしからないでほしい。
    よけいにかっかしてくるから。

    P79わたしたちは
    司令官のキャビンに入ることをゆるされた。
    そこのお手洗いは、
    真っ白で清潔で
    なだか恥ずかしくなった。

    P92船のうしろにまわってふたりっきりになると、
    あたしは母さんの白いハンカチをひらいた。
    包んであったのは、ネズミにかじられた人形。
    人形は腕に、兄さんのヒヨコの
    ぐったりしたからだを抱いている。
    ヒヨコごと人形をハンカチでしっかり包む。
    ホイ兄さんはうなずき、
    あたしはにっこりした。
    だけど、その白い堤が
    海の中に沈んでいくのを見たとたん
    人形をとりかえしたくなった。

    P125おまえたちみんな
    英語を習得するまで
    英語以外のことは
    考えても願ってもいけません
    お父さんのことも、
    前の家のことも、
    昔のともだちのことも
    将来のことも、ぜんぶ忘れなさい。

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プロフィール

Thanhha Lai タィン=ハ・ライ /1965年、ベトナムに生まれる。1975年、サイゴン陥落によって難民となり、アメリカ合衆国に渡る。受け入れ先のアラバマ州で、言葉や習慣の違いにとまどいながらの慣れない生活がはじまる。その後、テキサス州に移りテキサス大学でジャーナリズムを学び、カリフォルニア州の新聞社に勤める。作家を志してニューヨーク大学で学び直し、自らの経験をもとにした本作品を発表。現在は、ニューヨークに夫と娘と住み、創作活動に励んでいる。本作品は、2011年全米図書賞児童書部門、2012年ニューベリー賞オナーブックに選ばれている。

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