わたしの心のなか (鈴木出版の海外児童文学 この地球を生きる子どもたち)

  • 鈴木出版
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784790232940

作品紹介・あらすじ

メロディは、生まれてからずっと、さまざまな言葉や事柄をすべて記憶してきた。でも、脳性麻痺のせいで言葉を発することができず、それを知る人はだれもいなかった。10歳のとき、かわりに声を出してくれる機器を手に入れ、言葉で伝えることができるようになる。知性を証明できたメロディの人生は、大きくかわっていく。

感想・レビュー・書評

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  • たださんのレビューを読んで。
    素晴らしい本に巡り合えました。
    たださん、ありがとうございます。

    この本を読み終わるまでにとても時間がかかってしまいました。なぜかというと、体調を崩してしまって読めなかったからです。図書館の貸出期限が過ぎてしまって一回返却して、もう一度借り直しました。今はすっかり回復して元気になったのですが、不調が続き、病院で訴えてもイマイチ分かってもらえず、悶々とした日を送っていました。その時、言葉の力って大きいなぁと実感したのです。私は腹部に違和感があったのですが、それを伝えるにしても“キリキリ痛む“とか、“ズーンと重い感じ“とか、様々な言葉を駆使して伝えようと誰もがすると思うのです。もし、自分が話せなかったとしたら‥‥。

    この物語の主人公メロディは、脳性麻痺の10歳の女の子。話すことも歩くことも自分で食べることもできない。でも、心の中にはたくさんの言葉が溢れている。だけど皆はそんなことに気付いてくれない。クラスメイトは言う。「いじわるじゃないですけど、率直にいって、メロディが何かを考えてるなんて思いもしませんでした」と。
    この本は児童書なので、色々あったけれど最後には友情が芽生えました‥‥というラストだと思って読んでいました。でも違いました。
    5年生、10歳、というのが、どんなに難しい年頃なのか、大人と子どもの狭間で揺れ動いている少年少女たちの心がどんなに複雑なのか、ストレートに描かれています。(そういえば、『Wonder』も5年生のお話だったな)
    自分が透明人間のように扱われるのが嫌なメロディ。そんなの当たり前だ。皆と同じに心があるのだから。
    東田直樹さんの『自閉症の僕が跳びはねる理由』もとても素晴らしい本でした。
    私たちは学ぶべきです。皆、同じ人間だってことを。


    • たださん
      こっとんさん

      タイトルを見て、まさかと思ったのですが、私のレビューが、読むきっかけになったことを、素直に嬉しく感じ、更にご自身の体験を踏ま...
      こっとんさん

      タイトルを見て、まさかと思ったのですが、私のレビューが、読むきっかけになったことを、素直に嬉しく感じ、更にご自身の体験を踏まえての、素晴らしいレビューを、ありがとうございます。

      既に読み終えた私の心に、再度、メロディの真っ直ぐな思いがよみがえってきて、感無量であります。

      あの時の私は、自分の中で勝手にメロディの未来が閉じてしまったかのような、勝手な思い込みをしていたのですが、そうじゃなくて、物語は終わったけれど、メロディの人生が終わったわけではないことに、思い至った瞬間、この物語はこれでいいんだと思えました。

      こっとんさんの、皆、同じ人間だということ、本当にその通りだと思います。

      それって、当たり前だと思うのに、人が如何に見た目や、自分の知りうることのみの、狭い視点で物事を見ているのかに、改めて気付かせてくれました。
      ありがとうございます(^_^)
      2022/04/29
    • こっとんさん
      たださん、こんばんは。
      私の方こそ、たださんの子ども時代の実体験を踏まえたレビューを読んでこの本を手にしたのです。
      子どもの時にこの本に出合...
      たださん、こんばんは。
      私の方こそ、たださんの子ども時代の実体験を踏まえたレビューを読んでこの本を手にしたのです。
      子どもの時にこの本に出合えていたら‥‥私もそう思います。なるべくたくさんの子どもたちに、こういう本と巡り合ってほしいですよね。
      そして、私もたださんと同じように、この物語はこれでいいんだと思います。最後の最後、メロディの力強さを感じましたよね。
      これからも素敵な本をたくさん教えてください!よろしくお願いします。
      2022/04/29
    • たださん
      こっとんさん、こんばんは。

      私もメロディの最後の力強さこそ、人間の底知れぬ可能性を感じました。

      素敵な本なのか、正直、自信は無いのですが...
      こっとんさん、こんばんは。

      私もメロディの最後の力強さこそ、人間の底知れぬ可能性を感じました。

      素敵な本なのか、正直、自信は無いのですが(読みたいものを読んでるだけなので)、こっとんさんの言葉に励まされました。
      ありがとうございます(^o^)

      私も東田直樹さんの本、読んでみますね(^_^)
      2022/04/29
  • 読んでいる途中から、涙が止まらなくなった。
    最初は、こんな展開って、無いと思った。
    あまりに酷すぎるし、悲しすぎるじゃないか、と。
    しかし、読み終わって、時間を置いて、あれこれ考えに耽っていると、実はそうでもないのかもしれないと思えてきました。

    主人公の小学五年生、「メロディ」は、脳性麻痺で、生まれてからずっと一度も言葉を話したことがなく、車椅子が必要な生活で、移動や食事などもままならない。

    しかし、だからといって、メロディの心の中までそうかというと、それは間違いで、考えていることは、いい音楽だなとか、あんな服を着てみたいとか、あの子と友達になりたいとか、普通の小学五年生と何ら変わることはなく、むしろ、言葉が話せない分、その思いは誰よりも強い。
    そんなメロディの心の中の思いが、みんなに伝わればいいのにね。

    と思っていたら、「メディ・トーカー」という、予め登録しておいた言葉を、ボタン一つで声に出して伝えてくれるという、画期的な機械で、それは解決したかに見えた。

    実際にメロディの両親が、それを初めて聞いたときの筆舌に尽くしがたい思いは、子供のいない私でさえも、その気持ちが分かるようで、思わずもらい泣きしてしまった、素晴らしい場面でした。

    ただ、それが学校のインクルージョンクラスになると、また違った反応になり・・・

    私の中で、「普通」という言葉は嫌いなのですが、メロディにとって、どうしても手に入れたいのは、まさにその「普通」であって、こうした言葉ひとつとっても、人それぞれで意味合いや価値観や大切さが異なることをメロディに教えられたようで、人を理解することや、思いやりって、そういうところから始まるのでしょうね。

    制約はあるが、言葉を伝えられるようになった。
    これで、メロディにとって、憧れの普通に近づけたと思った。
    しかし、また別の問題が発生してしまった。

    私が小学六年生の頃、言葉の話せない子の隣の席になったことがあるのですが─おそらく、先生から安心だと思われたのかもしれない。その頃、私は一部の仲良い子とは普通に大声でしゃべれたが、それ以外は、逆におとなしかった─その時、どれだけその子のことを考えられたかというと、見守るだけで、何もしなかった(せいぜい、机から落とした物を拾ってあげたくらい)、いや、そもそも何かをしようとすら思いもしなかったのです。

    ただ、それは悪意があったとかではなく、単に知識がなかったことが大きくて・・その頃に、この作品を読んでいれば、少しは変わったかもしれませんが、おそらく物語の中の同級生たちも、そのような気持ちでいたのではないか。

    もちろん、中には、偏見を持った意地悪な見方をする子もいたが、反面、ヴァイオレットやキャサリンのように、メロディのことを分かってくれる人達もいる。

    要は、もっとメロディのような人達のことを、偏見なく、正しく知ってくれる人達が増えてくれれば、メロディにとっての、「普通」への道も、より歩きやすくなるのだと思うのです。

    そして、長くなりましたが、最初の物語の感想に戻ると、メロディは辛い悲しみも体験したけれど、それに対して、メロディは自分で考えてある行動を起こす。

    たとえ、その結果自体が苦いものだとしても、メロディの中で何かふっきれたような、一つの成長を見たような気が、今ではするのです。

    読み終わった当初は、それを辛く感じた私だったが・・長い人生、ある程度の苦難は付きもので、メロディにとって、「普通」を求めたいという思いが、そのまま他の人にとっての「生きる」という思いだとするのなら、それで音をあげるわけにはいかないよね。

    メロディの人生はまだ始まったばかり。
    これから、いくらでも良い結果がついてくるであろう彼女の人生の喜びを、期待せずにはいられない。

  • おすすめの本紹介 - 高校生・勤労青少年におすすめの本 | 家庭教育応援ナビ
    https://www.edu.pref.ibaraki.jp/katei/book/detail-7.html

    月刊児童文学翻訳2015年10月号
    http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2015/10.htm

    Welcome to the Official Site of Sharon Draper
    https://sharondraper.com/


    鈴木出版 Suzuki Publishing
    http://www.suzuki-syuppan.co.jp/script/detail.php?id=1050023303

  • 脳性麻痺の為に重度の障害があり、コミュニケーションもままならない少女の心の中を描く。
    車椅子に座り、身体の自由もきかないけれど、心は自由に羽ばたき、身体に不自由がない人以上に物事を深く捉え、考えている。そして、ウィットも忘れない。
    心無い仕打ちを受けもする、美化をせず事実に基づいた物語。

  • 『わたしの心のきらめき』が今年1番、と先輩司書さん。こちらが先に出ていると知ってまず読みました。

    星10個ぐらい!?

    頭の中は言葉でいっぱい。
    でも、それを自分の声で話すことができないもどかしさ。

    特別支援学級の子どもたち、そして日本に来たばかりの外国籍の子どもたちの顔が浮かびました。

    医者や何人かの学校の先生の無能ぶりに比べ、ご両親はもちろん、ヴァイオレット、キャサリン、メロディの力を信じる周りの人々が素晴らしい。

    本当に多くのことを気づかせてくれる本。

    中高生以上、特に子どもと関わる人、これから子どもを育てるすべての人にとって必読書だと思います。




  • メロディの心のなか、痛いよ。ありのまま受け入れてくれる親と、サポートしてくれる多くの人がいて、たくさんの愛を受けとっていても、それでも多くのものと戦ってる。心ない視線や言葉、嫉妬、冷たさ。自分が動けないという悔しさ。いつもいつもいつも、それに負けじと頑張っている。不幸だとは思わないけど(この世の中に生まれて来るには、必ず何かの意味があると、思うから)、痛んだ。私の心のなかにも似たような痛さがあるから。でも、心を閉ざさないところが強さかな。そういう心を持ったこどもに生まれることができたメロディは幸せだよ。原題はout of my mindで、金魚鉢から飛び出す金魚の装丁(表1?)がぴったりで、表4?を見れば、金魚鉢の中にいる金魚。邦題のわたしの心のなか、ってすごく響いた。大切な人に勧めたい本だな。

  • 脳性麻痺のため言葉を発することすらできない少女 メロディ の心のなかを描いた物語。
    作者はアメリカ・オハイオ州在住のシャロン・M・ドレイパー。
    他人からみれば、何も考えていないかに見えるメロディだが、両親や周りの理解者たちにより、自分を表現する手段としてVOCA(携帯用会話補助装置 小説内では「メディ・トーカー」という架空の機器名)を手に入れた時の喜びに、こちらも思わずわくわく!その後、健常者たちとも交流を広げていくも心の壁(クラスメートや教師)はなかなかぬぐいされない。
    きれいごとでもなく、現実の物語。だが、メロディの生き方に励まされる。
    障害を抱えた人々を取り巻く環境・人々の意識が貧困なことが、我が国のみではなく、わかる作品。
    とりあえず分類上 絵本・児童書のカテゴリとして登録したが、多くの健常者だと思っている大人たちにこそ読まれるべき作品。

  • メロディは、自分の身体を思い通りに動かすことができない。話すこともできない。だけど、その頭には周りの人が思いもよらないほどの多くの言葉がつまっており、ひじょうに些細な出来事まで記憶に残っていた……。

    小説で良かった、と思える作品。文字で表された作品でなければ、このメロディの抱えた言葉の豊富さ、その不自由さが表せないのでないだろうか。
    言葉、というものの、私達が当たり前に使っているように思えるものの大切さについて考えさせられる。
    メロディには理解してくれる味方もいれば、まったく理解してくれない、理解しようとしない人たちも(大人も子どもも)いて、それがはっきりしているのが読みやすく、単純に読みながら一喜一憂してしまった。
    メロディが同じクラスの子どもたちのことを紹介してくれるのだが、それがびっくりするくらい一人ひとりに個性があって、それなのにみんなひとまとめに同じ授業を受けさせられるのだ、と思うとちょっとぞっとする。だけど一人ひとりに合わせてということを考えれば、確かに大変なこともわかり、メロディにキャサリンがついてくれたことは幸運としかいいようがない。
    メロディが力を見せつけて、スッキリして終われたら良かったのに、そうはならないのがリアルではあるけれど、ちょっと残念で悲しくはあった。

  • 脳性まひの少女メロディ。体を思い通りに動かすことができない、言葉をちゃんと話せない、食事もトイレも自分ではできない、という症状の11歳の女の子の、心の中、考えていることが、描かれている小説。
    実は、ずっとノンフィクションだと思って読み進めてしまって、途中でフィクションだと気づいた時、無駄にショックをうけてしまった。小説だと思って読んでいたら、またちょっと読み取り方は違っていたかも。
    とはいえ、車いすのお子様がいたり、取材もかなりされたようで、そのためか、リアルに感じた。メロディが、決してただの良い子ではなくて、自己主張も諦めも投げなりな部分も、たくさん持っていて、そういうマイナスな所を、ごまかさずに表現しているのが、そのリアルさにつながっているのかも、と思った。
    特に良かったのは、自分を置いて行ったクラスメイトに、ちゃんとケリをつけたラストの展開。颯爽と教室を出て、自分から皆に決別する様は、多少の寂しさを伴ったが、胸がスカッとした。
    ただ、フィクションなら、もう少し、ハッピーな終わりでも良かったかもなぁ。ま、これは個人的な趣味の問題。

  • 30章の終わりからはしばらく先を読むのが怖かった。

    全体を通して、とてもハッピーエンドとは言えないけれどこれが現実なんだと思った。

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