ソリアを森へ マレーグマを救ったチャーンの物語 (翻訳絵本シリーズ)

  • 鈴木出版 (2024年1月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (119ページ) / ISBN・EAN: 9784790254409

作品紹介・あらすじ

幼い頃、虐待されているクマを目撃した主人公チャーンは、野生動物を守る仕事に就くことを決意。目標に向けた日々の努力が実り、保護活動センターのボランティアに採用されます。ある日、センターに保護されてきたマレーグマの赤ちゃんソリアを、「私が森に帰してやる!」と宣言して育て始めます。森で一緒に暮らしながら、自力で生きていくために必要なことを学ばせ、最適な地を探して進みます。ベトナムの自然保護活動家チャン・グエンの若き日の活動にもとづく自伝的グラフィックノベル。精緻に描かれた野生動物や美しい熱帯雨林と、人間が破壊した森林との対比を見事に描き上げた若きベトナム人画家ジート・ズーンは、2023年、イギリスの児童書最高峰の賞であるカーネギー賞画家賞に輝きました。

感想・レビュー・書評

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  • 生後2週間で保護されたマレーグマのソリア。母親がおらず、主人公のチャーンが親代わりとなってソリアを野生に返す話だ。
    マレーグマについては全く知らなかったが、この本でその生態や愛らしさ、そして厳しい現実がよくわかる。

    野生動物が暮らしていた森や自然を、人間が自らの欲望のために破壊していく。絵本だからこそ伝わる、文字にならない現状の悲惨さに胸を痛める。ペットとして野生動物を飼うことや、観光利用のための開発のシーンもあり、日本にいるからといって、全く無関係ではないと思わされる。

    絶滅の危機にある野生動物を、動物園等で保護するだけではいけない。その生き物が自然に野生の状態で生きていくには、環境を守らなければいけない。
    チャーンは苦手な英語も、性別の壁も、年齢の壁も、努力と根気で乗り越える強い少女だ。そんな彼女だからこそ、気弱で愛らしいソリアを野生に返すことができたのだと思う。

    そしてイラストの美しさがすばらしい。漫画のようなコマ割りの工夫もあって、文字を読みながらイラストも味わうことができた(普通の絵本は文字が固まって書かれていることが多いので、絵も一緒に楽しむのは苦手派)。野生動物の生き生きとした表情や、自然の美しさ、悲惨な現状も心に刺さる。

    この作品は、今年から始まった「10代がえらぶ海外文学大賞」で大賞に選ばれた。ノミネート作品全てを読めているわけではないが、多くの10代がこの作品を選んだことに関心するし、これをきっかけに多くの人に手に取ってほしい作品だとも思う。

  • 人間の欲だけで、痛めつけられている動物たちはたくさんいます。
    クマ工場で、クマの胆汁を採取しているなんて…

    「クマは自分が植えたものを食べて、自分が食べるものを植える」

    食べて、フンをして、フンの中の種から芽が出て…という、まさに自然の原理を人間がぶち壊しているわけです。

    マレーグマの女の子を森に返すお話ですが、とてもとても勉強になりました。
    勉強というより、人間として、考えさせられました。

    陰ながら、遠くから、感謝の気持ちを伝えたいです。

  • 8歳にして、野生動物保護の仕事を志したチャーン。作者のチャン・グエンさん自身がモデルの熱血少女です。大の苦手の英語を始め、勉強や体力作りに頑張る姿が眩しい! クマ救助センターで働くチャーンは、母クマを失った赤ちゃんマレーグマ・ソリアを野生に返す訓練に取り組みます。人間から餌をもらわず、森の中で自力で食べ物を探し、自分で生き物たちと関わって生きていけるように。気が弱くて甘えん坊だったソリアの旅立ちのシーンは、チャーンと一緒に泣きました。
    ジート・ズーンさんの絵がまた素晴らしく、チャーンの燃える瞳、ソリアの可愛い仕草、森の生き物たちのリアルな魅力(恐ろしさも)がぎっしり詰まっています。

  • ベトナムの自然保護活動家である著者の体験をもとにしたグラフィック絵本。
    母熊を人間に殺され、孤児になったマレーグマを森に帰すまでのチャーンと、クマのソリアをカラーイラストで描く。

  • マンガなので読みやすい。
    感動した。

  • 自然保護活動家チャン・グエンの自伝的グラフィックノベル。何頭かのクマの話をもとに少し整理して描いてあるようなのでどこまで事実ベースなのかはわからないけれど、マレーグマの生態などは忠実に描かれているみたい。

    とにかく絵がすばらしい。はじめおくびょうで、だんだんたくましくなるマレーグマのソリアの様子も生き生きしているし、主人公のチャーンも目がつよくて表情がかがやいてる。

    ソリアを森へ返すとき、すぐには離れないで何か月も見まもりながら一緒に森で暮らすところ、すごいなあ。どれくらい事実なのかは知らないけど、すごく深い思いが伝わってくる。

  • 原題(英題?)Saving Sorya Chang and the Sun Bear by Trang Nguyen, Jeet Zdung 2020

    杉田七重訳 2024

    グラフィックノベルって言っていいのかな
    ベトナムの少女チャーンが生後2週間で親を失ったマレーグマのソリヤを育てていたが、森に帰すまで。

    ベトナムの自然保護活動家チャン・グエンの自伝的グラフィックノベル

    2023年イギリスカーネギー賞画家賞受賞

    クマの胆汁工場

    カッティエン国立公園

    フリー・ザ・ベアーズ

    クマはくだものを食べたあと、種子をふんといっしょに出して、行く先ざきで「植える」んだよ。

    ソリアはベトナム語で太陽という意味

    世界にいるクマの種類
    ジャイアントパンダ
    ナマケグマ
    ホッキョクグマ
    ツキノワグマ
    メガネグマ
    マレーグマ
    アメリカクロクマ
    ヒグマ

    母親グマがいない子グマだけがする行為
    =足の指を吸う

    https://freethebears.org/

  • 保護したマレーグマのソリアを森に帰すまでの悪戦苦闘の物語でもあり、一人の少女チャーンが胸にちかった思いを実現していく物語でもある。グラフィックノベル(漫画のようなスタイルで描かれた物語)だから読みやすく、理解しやすい。

    動物が好きな人はもちろん、自分の目標や夢を叶えたいと思っている人にぜひ読んでほしい作品。チャーンの固い意志と挑戦し続ける姿に、きっと勇気をもらえるはず。

    動物に対して、人間が数々のひどい行いをしていること。チャーンのように動物を心から守ろうとして行動している人がいること。それをみんなに知ってほしい。

    ソリアを「森に帰す」ということは、ソリアとの「別れ」を意味している。チャーンの努力がついに実った喜びと、同時にやってくる別れの寂しさで、胸がいっぱいになり、涙が目に浮かんできた。

  • マレーグマのソリアのお話。ベトナムの絵本。絵も素晴らしい。力作。

  • 10代がえらぶ海外文学大賞大賞作。
    マレーグマのソリアを森へ帰す。その姿は社会に出る若者の姿にも重なるかも。
    ベトナムの自然保護活動家の自伝的グラフィックノベル。日本の「まんが」とは異なる描写表現にも引き込まれる。

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