小池光歌集: 新選 (現代短歌文庫)

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  • 砂子屋書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784790416395

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  • 「莫大小」読めまい読んで読めたとしそれがなんだかきみらは知らぬ
     小池 光

     1947年、宮城県生まれの作者は、9冊の歌集と多数の著書を持つベテラン歌人。父である大池唯雄は、日中戦争下の第8回直木賞受賞作家で、東北在住者初の受賞でもあったという。

     そのような文学的素地に恵まれつつ、意外にも理系の道を選択した小池光は、大学院に進んだのち、高校の理科教員として定年まで勤めた。

     この度、「現代短歌文庫」シリーズから、エッセーも加えたハンディな歌集が刊行されたが、語彙【ごい】の幅が、理系文系、実に広いことにあらためて気づかされた。

     たとえば掲出歌。「莫大小」は「メリヤス」と読み、私もまるで未知の漢字だった。伸縮性があるので大小が莫【な】い、という由来のようだが、「読めた」としても、かつて軍手や軍足に使われた編み地でもあり、軍隊を知らない「きみら」にはわからないだろう、と暗に歴史を示唆しているようだ。

     インターネット上で地球上のさまざまな場所を画像として見られる「グーグルアース」も、いち早く歌に取り入れていた。

     わが知らぬわが家の屋根をまざまざとインターネットに凝視してしまふ 

     この「凝視」にはプライバシー侵害への危機感も感じられ、冷静な観察眼と思う。

     さて、このような歌材の豊かな小池光は、仙台文学館二代目館長でもあり、館で「小池光短歌講座」も開催している。従来の認識を揺さぶるような、ユニークな短歌指導がなされていることだろう。
    (2017年7月16日掲載)

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著者プロフィール

1947年宮城県生まれ。1972年東北大学理学部大学院修了。学生時代より短歌をはじめ、歌集に『バルサの翼』(現代歌人協会賞)、『廃駅』、『日々の思い出』、『草の庭』(寺山修司短歌賞)、『静物』(芸術選奨文部科学大臣新人賞)、『滴滴集』(斎藤茂吉短歌文学賞)、『時のめぐりに』(迢空賞)、『山鳩集』(小野市詩歌文学賞)など。評論エッセイ集に『茂吉を読む─五十代五歌集』(前川佐美雄賞)、『うたの動物記』(日本エッセイスト・クラブ賞)など。平成25年度紫綬褒章受章。現在、読売新聞歌壇ほか選者。仙台文学館館長。

「2015年 『石川啄木の百首』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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