吉原夜話 新装版 (青蛙選書 4)

制作 : 宮内 好太朗 
  • 青蛙房
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784790501046

作品紹介・あらすじ

語り手は、吉原「中米楼」の娘として生まれ初代市川猿之助に嫁した喜熨斗古登子。中米楼に集まるあらゆる種類の客を接待したことが豊富な経験となり教養となって、人に敬い慕われた。きびしくも優雅な吉原のしきたり、風俗のさまざまを粋な江戸言葉でテンポよく語られていく。風俗図56。

感想・レビュー・書評

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  •  表現は悪いですが「色恋沙汰」だけでない、江戸期の文化、風習などをを伝えてくださる歴史の証言者の話が聞けるのではとかなり期待をして読みましたが、物足りなさを感じてしまいました。
     未完の資料のような形でしかなく、非常に残念に思いました。
     それでも貴重な書であることには変わりないですし、いろいろなご苦労の上出版されたことに感謝します。

  • ・喜熨斗古登子 述・宮内好太朗編「吉原夜話」(井蛙房)は先の東京五輪の後に出た。しかし、本当はもつと古い。「あとがき」はまづ、「この吉原夜話を本にすることを最初に勧められたのは長谷川伸さんです。」(246頁)と始まる。「所は台湾の花蓮港市の公会堂の一室、昭和十五年の夏頃だと思います。」(同前)と来るのだからますます古い。最後に「四十年前の書きものが、初めて本になる。」(248頁)といふのが昭和39年である。つまり、本書 の最初は大正のことになる。『都新聞』大正14年7月1日が第1回の演芸欄の囲み記事であつたといふ。話し手の喜熨斗古登子は初代市川猿之助の妻であつた人で、文久元年(1861)に吉原の中米楼に生まれた。中米楼は中店だから特に大きいわけではない。それでも吉原の遊郭の娘である。しかも、「中米楼の衰運を廿歳位の女腕で盛り返した」(225頁、「追補 吉原夜話」)とあるほどの人である。一通り以上のことは知つてゐよう。ただし、古登子は文久生まれで江戸のほとんど終はりの人、そして明治4年 (1872)には吉原の大火もあつて深川の仮宅を経験した。だから、古登子の吉原は江戸といふよりは明治になる。古登子の話がそのまま江戸の吉原となるのかどうかは私には分からない。聞き手の宮内もこのことには何の疑問も持つてゐないらしいから、明治の途中までの吉原は江戸の吉原であつたと言へさうな気がする。建物等は変はつても、明治の初めの吉原はそのまま江戸につながつてゐたのであらう。
    ・当然のことだが、私の吉原は単なる知識である。歌舞伎や落語での見聞、あるいは書物、かういふことが断片的にあるだけである。 だから、「宝暦年間には太夫と称する遊女は姿を没した」(229頁)といふことは大体は知つてゐるのだが、「芝居でお馴染の揚巻、玉菊も太夫ではありません。」(230頁)となると、これはよく分からない。万事が曖昧なのである。吉原の遊郭といつたとこ ろで人が住んでゐる。これも何となく分かつてゐるやうな気はするのだが、(リアルな)映画等を見ないから詳細不明、結局、遊郭は遊郭で人々が暮らす部分がどうなつてゐるかもまた分からない。本書でもかういふことにはあまり触れてゐない。吉原は遊郭だからそれは知らないといふ意識があるからではないかと思ふのだが、逆に言ふと、それゆゑに、所謂年中行事は部分的には詳しい。終はりのあたりでは、仮宅から吉原への練り込みに始まる年末年始の吉原風景に触れてゐる。夷講をしたらしいのはさすが、といふより、客商 売である、当然のことであらう。大鷲神社の酉の市も華やかである。お参りをすませると「あとを振り返らず家に帰る」(197頁) といふのも、その理由は書いてないが、盆行事に限らず、一般的にかういふことが行はれてゐたのかと思はせる。芋や簪を買ふのは吉原で普通に行はれてゐたことか、あるいはこの家独自のことか。「家の吉事として」(198頁)とあるだけである。また浅草の歳の市、さすがにいろいろと買ふ。若水汲みの「手桶は、殊更に念入りに調べてよい品を買い入れて」(203頁)とあるのも時代か吉原かといふところ、まだ若水汲みが行はれてゐたのである。この先も年末、年始を迎へる様々な行事がある。煤払ひの「御祝儀の胴上げ」(208頁)いふことで、「どういうわけか胴上げを必ず行うことにきまってい」(209頁)たといふのもまた、吉原の行事かと思ふ。吉原がまだあつた時代の人はかういふこともよく知つてゐたのであらう。それを知らない人間は、却つて分からないことが増えてしまふばかりである。それでもおもしろい書であつた。

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