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本 ・本 (3546ページ) / ISBN・EAN: 9784790708223
感想・レビュー・書評
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メモ
・財政
江戸時代の大名の平均石高は6万6613石。明治維新に石高は家禄に変わり、平均家禄は2906石に減少(元の4.4%)した。
公家については維新前の299石から維新後280石に減少。宮内省が運用する御下賜金からの配当もあり、元の荘園の小作人から米を贈られたりした。そういう特権が無くなったのは戦後。
大名は、家禄が金禄公債に変えられると、その資金運用の巧拙によって経済状態が大きく左右。華族銀行たる第15銀行(1875設立)は最大の預金高を誇る国立銀行としてスタートしたが、1927年の金融恐慌で大きな打撃を受けた。これが華族の明暗を分けた。
・家系
地域的には明治になり東京在住が命じられたので、武家も公家も主に山の手に集中した
婚姻は同格どうしが慣行だったので、ふさわしい結婚相手がいる場合には、実家同士の歴史的関係には目をつぶることが必要だった。公家と大名、旧華族と新華族、外様と譜代、北日本と南日本、会津藩と薩摩藩、将軍家と皇室といった組み合わせの結婚例が多くみられた。(慶喜の孫の本には維新時の敵藩とは縁組しないと書いてあったが)
跡継ぎ確保の養子縁組も華族階級の内部で行われた。
・国元との関係
戦前は東京住まいの当主が国元へ変えると、国元にいる元家臣たちが歓迎セレモニー的なものをした。
当主が国元に再び住もうかとして、何件かの企業から誘いをうけたが、一つたてれば一つは敵になり、選挙で誰を応援するかも微妙で、結局は東京住まいがよい、と国元へ帰らなかった。
使用人については、戦争中空襲をおそれ里帰りさせ、1985年の調査では8割が使用人を雇っていない。華族令廃止の際には、梨本宮家では華令が財産を勝手に処理した、と伊都子姫が書き残している。が今なお良い交流のある家もある。
著者のこの本の目的は、敗戦と同時に過去のものとがった華族が、懐古ではなく、華族に代表される身分文化が現代の日本にも生き続けていると仮定して、それを証拠立てること。日本人がよく口にする「名家」「一流企業」「名門校」といった表現からブランドへのこだわりまで、正当の血筋とか貴種などの概念に通じるものがあると見る。
身分文化は世界のどこにでも見られアメリカにもある。日本の特例を示すことにより、普遍的な身分文化への理解を一層高めることを願う、としている。
タキエ・スギヤマ・リブラ 1930年静岡県に生まれる。戦後津田塾、学習院を卒業。アメリカに留学。ピッツバーグ大学で修士号(政治学)と博士号(社会学)。ハワイ大学人類学部教授。現在名誉教授。
2000.8.10第1刷 図書館詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
原題:Above the clouds: Status Culture of the Modern Japanese Nobility
著者:Takie Sugiyama Lebra
訳者:竹内 洋、井上義和、海部優子
【メモ】
著者の名前でくぐってみると、英語版Wikipediaの「Nihonjinron」(https://en.m.wikipedia.org/wiki/Nihonjinron)という記事に行き当たった。私以外にはどうでもいい情報かも。
参考になるのはこっち。
http://www.us-japan.org/otr/bios/lebrat.html
http://www.librarything.com/author/lebratakiesugiyama
【簡易目次】
第1章 華族の研究――なぜ、何を、どういう手法で?
第2章 華族の誕生(抄訳)
第3章 世襲カリスマの構築(抄訳)
第4章 跡目相続(抄訳)
第5章 生活様式――身分とヒエラルキーを示すもの
第6章 婚姻――男女の再編成
第7章 社会化――身分文化の習得と伝達
第8章 身分と職業(抄訳)
第9章 結論
エピローグ――昭和の終焉 -
華族の成り立ちを非常に丁寧に解説。
前置きとして、華族研究をするにあたっての注意点や分野の諸事情・特性にまず一章を割いています。精密な研究には情報提供者への細やかな配慮も必須ということなどなど、歴史研究の心構えの勉強になりました。
内容は、華族の生活の実態をメインに、華族の近代社会への役割を論じています。 -
分類=日本史・近代史・明治時代・華族・大名。00年7月。
著者プロフィール
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