- Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
- / ISBN・EAN: 9784790711889
作品紹介・あらすじ
仕事・社会・コミュニケーション・宗教・異文化の5ジャンルを網羅し、40人の初々しいフィールドワークを一挙公開。技術的なノウハウから理論的な設問まで、実践的な助言を満載。フィールドワーカーのセンスを体得できる最良の指南書。
感想・レビュー・書評
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ほとんどが学部学生の実践である。2部では6つの実践のレポートが非常に詳細に掲載されている。その前の1部では、学生の実践とそれに対する筆者の分析が書かれているので、実際にフィールドワークを行う学生には役に立つであろう。
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人類学のフィールドワークとは、<他者>について少しでもわかろうとする実践である。大学生のフィールドワーク演習、仕事、社会の周縁、コミュニケーション、信じる人と信じない人、異文化。
日常に、フィールドワーカーが紛れ込んでいるかもしれない、それだけでも何か、新しい気分。 -
俺に残された日もとうとう残り数日となり、図書館で本を借りることもままならないなか、なんか気軽に読める本ないかなーって自分の本棚を眺めていたら途中(しかもかなり最後の方)で読むのを中断していた教科書があるのに気づいた。
2年のときに履修した工藤先生の少人数セミナーである。普通に超面白かったんだが俺の記憶が正しければ読んでる最中に期末試験の時期を迎えてしまいそこからうやむやになってしまったんだな。うん。
ってことでちょうどいいので読んでみた。
なにこれ、超面白いんだけど。銭湯の話もエチオピアの話もスラスラ読めるwww立花先生の講義よりよっぽど読みやすいしおもしろ・・・うん。
改めて目次を見ると、読んだ記憶はあるのに内容ほとんど忘れたなー
帰国後にでもまた読んでみよう。
〜おわり〜 -
他者を知り自己を知る。
目を凝らせば日常の中に謎がある。
その謎を突き詰めていく手段。
探究心が新たな発見を生み、その集積がやがて知となる。 -
副題は「<実践>人類学入門」。「もし、みんながブッシュマンだったら」の著者、菅原和孝さんが、大学で「社会人類学調査演習」という授業を担当したときの学生のレポートを批評、公開しているもの。基本的に、菅原さんがおもしろいと思ったレポートが紹介されていて、ただ、フィールドワークとして、どこをどうすればもっとよくなるか、というコメントがつけられていて、勉強になる。また、完成度の高い作品6本については、そのまま紹介されている。(っていっても、これが授業の際のレポートというわけではないと思うけれど)「人生至る所フィールドあり」と前書きに書かれているが、本当に、様々な着眼点がある。私と興味の似ているものもあるし、全然、興味のなかったことも、それに関するレポートを読むと、へぇ、おもしろい、と思ったりする。
第一部第四章、「信じることの手ざわり」で、菅原さんは、霊感の強い女子学生が、神秘的な力について、例をあげて語ったときのことを書いておられる。
(彼女の話に対して)わたしが苦笑すると、彼女は言った。「わかってくれなくてもいいんです。わからない人にはわからないんだから」。 わたしはとてもがっかりした。「わからない人にはわからない」と言い切って対話を閉ざしてしまうことは、人類学からもっとも遠い態度であると思えた。わたしがそのことをきちんと彼女に伝えられなかったのは、「信じる」人と「信じない」人とのあいだに横たわる深淵をどうやったら跨ぎこせるのか、自分自身にも見当がつかなかったからだ。(p.117)
これは私も感じている。私自身は、「信じない人」だが、「信じる」人をわかりたいなぁと思うことはある。何か不思議な経験をした人は、あることを信じるようになり、でも、それを経験していない人に伝えるのはむずかしいんだろうなぁ。ユングが「共時性」ということを言っているそうで(このページの説明がわかりやすかった。たとえば、「ある人のことを考えている時、電話が鳴る。出てみると、丁度その時考えていた相手だった。」というような例)、そういう科学的にみえないことについて、学問としては「神秘主義」と批判されたりしている。ただ、「単なる偶然」といえないことがこの世にはあるような気もする。「人間にはわからない大きな力がある」と言われればそうなのかもしれない、とは思う。
夫は特に何かの信仰を持っていたわけではないが、「神様はいるんじゃないかと思うことがある」と言っていた。「物理とか数学を勉強していると、世界があんまり美しいので、何かそういう存在があるのでは、という気がする」と話していた。
信仰について調べたり考えたりするのはおもしろそうだが、菅原さんは、学生がある悪名高い大教団の調査をしたいと言い出したときには即座にそれを禁じたそうだ。「カルト教団の洗脳技術を見くびったらダメだ。君が洗脳されたら、私は教育者として責任がとれない。」その後、実際、教え子をオウムに送り込んだ大学教授が非難をあびるという例があったそうだ。
フィールドワークというのは、観察者として外側から見ているだけじゃなく、内側に入り込まないとわからないことも多いから、そういう注意が必要なのだろう。でも、入り込むからこそおもしろい。ただ、そのためには、他人と結構深く関わりを持つことになる。この本のなかでも、何人もの学生が、「(調査の対象にされている人たちは)迷惑なのでは」と感じてためらう姿が書かれていたけど、その気持ちもよくわかる。人のプライバシーに踏み入ってまで、人の時間をさいてもらってまで、するほどの価値のある研究なのか。...自分が何かの研究を始めるときには、そのあたりのことをはっきりさせておかないといけないな、と思う。 -
本書は、著者の菅原先生の文化人類学実習ゼミに参加した学生が実際に行ったフィールドワークのレポートを元に構成されています。
それぞれのレポートに対して菅原先生の的確なツッコミ(技術的なノウハウ、理論的な設問の立てかた、実践的な助言等)がなされているので、良いレポート・論文を書くために大いに参考になりそうです。レポートの着眼点も秀逸でした。 -
著者が京大で行ってきた文化人類学の演習の中で、学生が提出した成果を取り上げつつ、論じられている。
本格的な学術書だけど、読み物としても面白い。
フィールドにデータを求めるあらゆる領域のフィールドワーカーにとって、この本をどのように読むかが、自らの姿勢を問い直すことにつながるでしょう。フィールドに入るにあたり、研究者が即物的な意味でのお役立ち度をさておき、この本に取り上げられていた「周辺的に生きる」ことを意識する必要性を強く感じさせる。
似たような題材では、「インタビュー調査への招待(河西宏祐著・世界思想社)があるが、本の背景にある学術的理解が深まるかどうかで見ると、こちらの方が上かな(でも、こちらの本も面白いけど)。
(2006/06)