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本 ・本 (244ページ) / ISBN・EAN: 9784790712718
感想・レビュー・書評
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「風景」をめぐる私たちの経験を手がかりに、人間存在の本質に切り込む試みがなされています。
近代哲学の知覚論は、主体の視点から空間を遠近法的に統一して把握するという発想に基づいており、見る主体と見られる対象とを切り離す二元論的立場だということができます。しかしそうした立場では、知覚する主体が知覚される風景のただなかに存在しているという事態が顧みられることはありません。著者はこうした西洋哲学の知覚論にひそむ問題を克服するために、「風景」をめぐる私たちの経験の問いなおしをおこないます。
風景を眺めるわれわれの視点は、まさに当の風景のただなかに開かれており、われわれは自分を取り巻く自然と渾然一体となった一定の「気分」のもとに置かれている自分自身を発見することになります。著者はこうした場面に定位して、われわれと風景とのかかわりについての考察をおこないます。ただし著者は、われわれの風景にまつわる経験は個人の内部で完結するものではなく、同じ風景に共に立ち会っている人びととのかかわりのなかで形成されるという点に注目しています。こうして、われわれの経験構造が間主観的な性格をもっているということが、本書の主要テーマとして浮かびあがってくることになります。
著者は、言語によって分節化される以前の生きられた経験を「基本風景」のもとでの経験と呼びます。この基本風景から出発して、私たちの経験は文化的な「型」を通って共同的な経験へと組織され、さらにはことばなどの「形」をもつ表現へと発展していくと著者はいいます。本書は、こうした風景にまつわるわれわれの経験がもっている弁証法的構造を解明することがめざされています。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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