都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌―

著者 :
  • 世界思想社
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本棚登録 : 147
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784790715139

作品紹介・あらすじ

嘘や騙しをふくむ熾烈な駆け引きを展開するマチンガ。彼らのアナーキーな仲間関係や商売はどのように成りたっているのか。みずから古着を売り歩き、500人以上の常連客をもった著者が、ストリートで培われる狡知(ウジャンジャ)に着目して解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • どうやって参与観察を研究にするのかのものすごくいい例。それは別にして面白い。最後の電話で借金の話とか。

  • 社会

  • タンザニアの都市路上零細商人マチンガ。彼らがウジャンジャ(狡智)を駆使して、不安定で不確実な日々の生活を生き抜いていく様、その論理を明らかにしようという試み。/「うまく騙し、うまく騙されることができること人間こそ仲間なのだ」「かるめとることを覚えなければ泥棒になる」「彼らも商売をしているのだから、仕方がない。生活のためのカネを稼ぐのに嘘も騙しもあるものか」(マチンガたちの声)/その生活世界は流動的で多様で流動的。商慣行は、口約束だけの信用取引(マリ・カウリ取引)。マチンガどうしの関係は、流動的に職を転々とし、好機があればいつでも職・場所を変えるかわからず、現住所・本名・出自も正確に知り得ないまま取り結んでいる関係(p.76より)/なぜ、卸商は信用ならないもの、騙すものとより商関係を結ぼうとするのか。ウジャンジャに基づいて行動できるものは、こちらの要求、無意識のシグナル、客とのやりとり、交渉、商機をとらえること、お互いの状態を理解し合うことについて高い能力を有していると判断するから、と。そして、新たにやってきたものへの教育は、基本、放置。彼らが自分なりに新しいポーズ/スタイル(得意分野、やり方など)を打ち出したら、尊重し邪魔せず協力はする、といったもの。/「ウィットが効いた皮肉で、相手を思わず笑わせる」「卑屈におだてるのではなく、大胆に誰でもわかるゴマスリをし、相手を閉口させる」「必死に道化を演じて、相手にむしろ哀れだと思わせる」「あまりに非常識な田舎者や何を言っても動じない頑固者でありつづけて、相手にもうお手上げだと降参させる」というのは、ウジャンジャな交渉術の真骨頂である。p.169/マチンガにとってのウジャンジャの発揮には「制限」がある。それが「盗み」「詐欺」に思える場合でも、基本的に、事後的になんとかごまかせたり、許されたり、取り返しがついたりする範囲内の「かすめてとる」ではないか。マイナスの意味だけでなくプラスの意味でもあくまで非計画的、非建設的なものではないか(p.147より)/マチンガのウジャンジャが発揮される際の特徴 1.商人間で各々の役割を瞬時に判断すること 2.客の期待することを演じること 3.癖を技化すること(スタイルを応用すること) 4.「リジキを判断すること」(お互いにとって生活を営む最低限のラインを了解すること)(p.156より)/「ふだんからオレを騙そうとする小売商のほうが、断然扱いやすい。何も不満を言わず、生活補助も要求しないような田舎者の小売商は、持ち逃げしやすい。彼らはオレたちが言っている嘘や要求にも気づかない。オレが困難を訴えてもうまく動けず、突然、怒りだしたり、いなくなったりする」(p.181-182)/小売商は、ウジャンジャを駆使して、困難や不満を中間卸売商に訴え、「仲間」としての共感にもとづいた値下げや生活補助を引き出す。中間卸売商はウジャンジャを駆使して、小売商に「仲間」としてこちらの事情に気づくことを求め、ときには売りにくい古着を販売させる(p.186-187) やりすぎるとどちらかに不満がたまるし、うまくバランスをとることが求められ、バランスが崩れると即、離れてしまう、緊張感をはらんだ関係に思える。/生活の必要や有用性に限定された便宜であるという理由で、彼らはウジャンジャなかすめとりを詐欺や盗みとは異なるものにしている。(p.328)//現代日本と対比するなら、その厳しさ、緊張感の持続、絶え間なく頭を働かせ、機会をとらえ、隙あらば食い入っていかなければいけない。現に、ウジャンジャを発揮しての暮らしというのも、若いうちの特権という一面もあるようだ。ただ、だからこそ、機会があればまずやってみる、やってみないとはじまらないという起業家的なマインドは、より発揮されているように感じる。ベースとなる社会の安定性の違いがあるからどちらがいいかなんて一概には言えないけど。

  • 見事な民族誌。そもそも、着眼点が良い。生き抜くための狡知とは、著者自身も書いているとおり、何もマチンガだけのものではない。社会という空間で様々な他者と関係する我々はきっとどかで各々のウジャンジャを駆使して生きている。それが普段は見えにくいだけで。しかし、この狡知こそ世界を活気良く動かす潤滑油でもあるのだろう。

  • 著者自らが古着販売を実践しての、フィールドワークの論文。全く予備知識のない内容で、しかも論文!ですが、マチンガたちの暮らしぶりがありありと伝わってくる筆致で、感動的に読みやすい学術書でした。読むのに体力のいる大作だけど、説明がわかりやすくて、解説もふんだんで、典拠もきっちり明示されていて、読み進めるのに全くストレスがない!学問的ワクワク感を追体験できてほんとに楽しい1冊。
    社会主義体制から経済が自由化されグローバル資本主義に飲み込まれていく課程で、人びとがどんな風に生き抜こうとするのか。そのあたりを興味深く読みました。「アフリカの底辺に暮らす人々」というと、ともすると同情的に思ってしまいがちだけど、とんでもない。生き生きと、貪欲に、楽しげに生きるマチンガたちが、平和ボケした日本で惰性で生きている私を見たら、全く覇気がなく見えるだろうなぁ。うん、これからは私もウジャンジャに生きよう!

  • 読了。古来いにしえの昔から、商いのもとことはこんな狡知から始まった…と思わせる 現代のマチンガたち。現地でのフィールドワークに脱帽!

  • ウジャンジャ!!このうさん臭い言葉が、この本を読み終わる頃には魔法を懸けられて、何かしら素敵な言葉に見えてくる。
    タンザニアの1地方の喧噪が肌で感じられるような、貧しくて、生命力にあふれたしたたかな生活。これからマチンガがどこへ向かうかも興味あるところである。

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著者プロフィール

1978年愛知県生まれ。専門は文化人類学、アフリカ研究。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程指導認定退学。博士(地域研究)。日本学術振興会特別研究員、国立民族学博物館研究戦略センター機関研究員、同センター助教、立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授を経て、現在、同研究科教授。著書に、『都市を生きぬくための狡知』(世界思想社)、『「その日暮らし」の人類学』(光文社新書)がある。

「2019年 『チョンキンマンションのボスは知っている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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