都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌―

著者 : 小川さやか

• 世界思想社 (2011年3月1日発売)

感想・レビュー・書評

[おかにゃんさんの感想 · 2013年1月23日]

著者自らが古着販売を実践しての、フィールドワークの論文。全く予備知識のない内容で、しかも論文！ですが、マチンガたちの暮らしぶりがありありと伝わってくる筆致で、感動的に読みやすい学術書でした。読むのに体力のいる大作だけど、説明がわかりやすくて、解説もふんだんで、典拠もきっちり明示されていて、読み進めるのに全くストレスがない！学問的ワクワク感を追体験できてほんとに楽しい１冊。
社会主義体制から経済が自由化されグローバル資本主義に飲み込まれていく課程で、人びとがどんな風に生き抜こうとするのか。そのあたりを興味深く読みました。「アフリカの底辺に暮らす人々」というと、ともすると同情的に思ってしまいがちだけど、とんでもない。生き生きと、貪欲に、楽しげに生きるマチンガたちが、平和ボケした日本で惰性で生きている私を見たら、全く覇気がなく見えるだろうなぁ。うん、これからは私もウジャンジャに生きよう！

[gakudaiprofさんの感想 · 2023年4月11日]

著者が実際にタンザニアで古着を売る商人と一緒になって古着を売りながら調べたものである。マチンガについて知るために飲み会の費用を全額持ったが結局わからなかったという事例も書かれている。それぞれの商人からの聞き書きの部分はポイントを小さくしているが、字下げで引用してくれた方がよかったと思う。写真や表や図がある。
　様々な本で一部が紹介されていて、博士論文の一部も入っている個人露店商売の集大成の本である。
　タンザニアだけでなく、ほかの国の露天商を研究する上でも役立つと思われる。

[mishuranmanさんの感想 · 2019年5月16日]

どうやって参与観察を研究にするのかのものすごくいい例。それは別にして面白い。最後の電話で借金の話とか。

[hosinotukiさんの感想 · 2012年3月8日]

ウジャンジャ!!このうさん臭い言葉が、この本を読み終わる頃には魔法を懸けられて、何かしら素敵な言葉に見えてくる。
タンザニアの１地方の喧噪が肌で感じられるような、貧しくて、生命力にあふれたしたたかな生活。これからマチンガがどこへ向かうかも興味あるところである。

著者プロフィール

小川さやか（おがわ・さやか）　立命館大学先端総合学術研究科教授。専門は文化人類学。研究テーマは、タンザニアの商人たちのユニークな商慣行や商売の実践。主な著書に『都市を生きぬくための狡知――タンザニアの零細商人マチンガの民族誌』（世界思想社、2011年）、『チョンキンマンションのボスは知っている―アングラ経済の人類学』（春秋社、2019年）など。

「2022年 『自由に生きるための知性とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」