- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784790717836
作品紹介・あらすじ
生きづらさの往復インタビュー
自閉スペクトラム症/ADHDの当事者と、潰瘍性大腸炎の当事者が、互いを取材して考えた、それぞれが抱える苦悩と、それぞれにしか見えない世界
【本文より――はじめに(頭木)】
横道さんは発達障害の当事者で、私は潰瘍性大腸炎という難病の当事者です。
つまり、心で困っている人と、体で困っている人です。
当事者研究の本を、横道さんも私もそれぞれに出していますが、ふたりで一緒に作ることには、また新しい意義があるのではないか(…)それぞれ心と体の仮の代表として、議論をたたかわせ、ケンカしてみるのも、おもしろいのではないかと思いました。
感想・レビュー・書評
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なかなか心と体はやはり切っても切れないものだし、それぞれの経験は深いから一冊にまとめるのは難しい気がした。
横道さんの生い立ちも凄まじく、宗教二世の話もあり、心云々の前にそれに驚いてしまったし、性についての話は少し読んでて疲れた。
頭木弘樹さんの本としては「食べることと出すこと」の方がおすすめ。
横道さんの
「大衆文学は難しい
大衆文学は、定型発達者同士の情緒的な交流
大衆文学は共感を求めてくるから非常に読みにくい
純文学のほうがむしろ読みやすい
純文学は一種の抽象性
現代アート的、単純化
それがある意味わかりやすい」
という内容は、そういう見方もあるんだなと、印象に残った。
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まず、タイトルと表紙の虎がすごくいい!
おふたりはそれぞれ自分の心や体に困ってる“当事者”だけれど、困りごとの種類や状態、対処法も全然違う。そんな真逆のふたりがお互いにインタビューし合うことで理解を深めながら見えて来た世界とは?横道さんの発達障害の説明はわかりやすく(時には過剰なほど詳細だけど)編集者が大胆に再構成し大幅に短縮した、とのことで一冊丸ごと読み易いのに読み応えあり。
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横道さんの本は自分にとって未知の領域が多く、きづけば手にとって読んでいる。頭木さんについては本書で初めて知った。20代の頃から13年間闘病し、貴重な青年時代をわたしも同じように失ったとして、その経験を他人に語ろうと思えないかもしれない。
p25
頭木 自閉スペクトラム症やADHDと診断される人が増えてきて、重い人だけでなく、グレゾーンの人もたくさんいるとわかってきたと。
そうすると、「病気」なのか、「障害」なのか、という区別よりも、そもそも「病気や障害」なのかということが問題になってきますね。
横道 それに対する大きな問題提起として、90年代から自閉症の権利運動として、「これは『脳の多様性』なんだ、『ニューロダイバーシティ』なんだ」という見解が出てきたわけなんです。英語圏から始まって、世界中に広まっています。
先行する同種の運動には、1995年に日本で出された聾文化宣言などがあります。耳が聞こえないということは、いまでも多くの人にとっては「障害」だと思われていると見受けますけれども、実際に耳が聞こえない人たちから、じぶんたちはそういう独自の文化を生きていんだという考え方が出されて、広く支持されるようになりました。
つまり、自閉スペクトラム症をたんなる「欠損状態」と考えるのではなくて、独自の文化を生きている状態なんだと考えるわけです。『ニューロダイバーシティの教科書』(金子書房)という本を出した村中直人さんは定型発達者を Windows に、発達障害者をMacに喩えて、MacにできなくてWindows にできることがあっても、それは欠損や障害じゃないと説明しています。
さかのぼれば、黒人の人権運動とか、女性のフェミニズムとか、そういうものにもつながっています。それまで認知されてきた白人文化とは違ったかたちで黒人文化があって、それ劣っているとか低俗だとか卑しいとか、そういうことではないと。
頭木 病気や障害、優劣というとらえ方ではなく、それぞれの文化であって、そもそも多いものなんだということですね。
横道 発達障害には発達障害の文化がある。日本ではとくにこれが最近注目されていて、2022年の5月には、経済産業省がニューロダイバーシティを尊重しながら経済を回していこうという宣言を出していました。
p112
頭木 実際、生理用品を使っている人はけっこういたみたいです。私も使ってみたんですが、女性への尊敬がすごく増しました。勝手な尊敬かもしれないですけど。つけてもわからないみたいなCMをよくやってるから、さぞつけ心地がいいんだろうと思ってつけたら、ものすごい違和感でね。
男女では体のかたちが違うせいもあるのかもしれないけど、気になって気になって、つけてるのを忘れるどころじゃない。ズレて漏れたりしないかも、すごく気になるし。これを毎月つけるのは、ほんとうに大変だなと思って。こういう経験をしてるか、してないかだけでも、男と女はまるで人間のレベルが違うんじゃないかと思いましたね。
じぶんの体のことを他人に隠して、漏れないようにとか、気をつかいながら生活しているっ
てこと、健康な男にはまったくないじゃないですか。たとえば急にどこかに連れていかれても、男の場合、平気なわけで。でも女性だと、生理用品のないところに1カ月以上、連れていかれると困るわけですよね。事前の準備が必要です。そういう事情を抱えているか、抱えていないかって、やっぱり人への思いやりが違ってくるんじゃないですかね。 -
対決というよりは、真っ当な対話だと思う。
「ASDのこだわりをADHDが邪魔をする」という現象が、もう本当に当事者じゃないと分からない感覚だなとびっくりした。 -
女子栄養大学図書館OPAC▼https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000067909
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頭木さんの文章は好きだし、横道さんも注目の書き手なので読んでみた。
大変よかった。
確かにインタビュアーとインタビュイーが固定だと、インタビュアーは(自分は安全地帯にいるのに相手のことに突っ込むのはどうかと思い)遠慮したり忖度したりしてしまう可能性がある。交代で役割を変えることによって、自分も突っ込まれる覚悟を持ってさえいれば、相手にも突っ込めるというわけ。
特によかったのは、発達「障害」なのか?という日頃から抱いていた疑問に答えが出たこと。「発達障害」は行政用語で、障害ではなく「ニューロダイバーシティ」、つまり脳の多様性だという考えが90年代から出てきているらしい。かつては同性愛やトランスジェンダーも精神疾患として治療の対象となっていたが、社会の方が変わった。発達障害という概念も修正される可能性は大いにあるということ。
また、自閉スペクトラム症には男性の方が多いというのも不思議の一つだったが、それは基準が男性中心に作られているからだというのも、なるほどと思った。
頭木さんの、発達障害の人には固有の感じ方考え方がありそれが文化と言えるが、(頭木さんの持病である)潰瘍性大腸炎の文化はないと思う、という言葉に対し、横道さんがある、と答えているのも興味深い。
発達障害の人がドラマに出てくる「天才的能力を持つ発達障害者の女性と理解ある彼くん」にうんざりするとか、病人にも病人を差別する感情があるとか、納得する話も多かった。
頭木さんのタイムスリップものや難病ものに対する怒りにも共感。
新しい知見が得られ、当事者にしか言えないことを聞け、本物の「多様性」や、人間存在そのものについても深い気づきを得ることができた。
お二人とも肝を据えて語った、素晴らしい本。 -
私自身は体はそこまでひどくないし
心も別の病気だけれどこういうのは書けないし客観的になれないなあ -
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