動機づけ面接法 基礎・実践編

  • 星和書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791106288

作品紹介・あらすじ

クライアントがアンビバレントな状態にあるとき、あなたはどう援助しますか?なぜ人は変わることができるのでしょうか?その答えが…本書の中にあります。依存症の治療に革命をもたらし、精神科を越えてあらゆる領域で応用されている画期的面接法!世界標準の技法となった「Motivational Interviewing」の邦訳、ついに刊行。

感想・レビュー・書評

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  • 人の変わりたいという気持ちを、対人援助の場面でいかに支援するかということに関して述べた本。動機づけ面接の段階や、応答の仕方、陥りがちな落とし穴など、実践でとても役に立つ情報について、豊富な面接の実例とともに紹介してくれているので、大いに役に立った。確かに動機づけ面接法という1つの技法の紹介ではあるのだが、基盤をロジャーズのクライエント中心療法に置いていることからもわかるように、どのような対人援助職にとっても、ある程度の経験があればとても有益な本なのではないかと感じた。

  • ある変化に、どの程度成功すると思うか質問すると、答えはその人の実際の変化の程度を、かなりよく予想していたのである。近年では、この効果を自己効力感(self-efficacy)と呼んでいるが、すべての時代を通じて、治療者たちは信頼と希望の力をよく認識していた。効果的な治療を受けていると信じることは大変重要なので、新薬の治験では、薬を一切服用しない場合とではなく、プラセボ(偽薬)を服用した場合と比較することになっている。

    矛盾が十分に大きく変化が重要と思われる時、人は変化の可能な方法を探し始める。重要性の認識が十分にあり、効果があると信じられる変化の方法を発見し(一般的効力感)、その方法なら自分にもできると思える時(自己効力感)、行動の変化が始まる。矛盾の大きさに気づいても改善する方法が一つも見つからない時には、全く別な経過をたどる。行動を変える代わりに、人は思考過程と認識を「防衛」を用いて変換し、不快感を軽減しようとする。これはアンナ・フロイトが提唱した古典的な「防衛機制」の反復でもある。つまり、否認(そんなにひどくない)、合理化(もともと変わろうとなんて思っていない)、投影(それは私の問題ではなく、彼らの問題だ)を用いる。

    私たちのクライアントのほとんどが、充分な苦悩を体験していた。屈辱、恥、罪悪感、不安は変化の原動力にはならない。皮肉にも、人はそのような苦渋の敬虔によって身動きできず、変化を遠ざけてさえいる。それよりも、人の建設的な行動の変化は、その人の内的価値、重要なこと、大切にしているものに触れた時に起こるようである。

    治療を強いられ腹を立てている人には、動機付け面接法が特に効果的で、治療初期に怒りのレベルが低い人は、動機付け面接法よりも、認知行動療法や12ステップカウンセリングが効果的であると報告されている。

    逆説的ではあるが、人をありのままに受容する態度は、その人を自由にして、変わる方向へ導く。一方、非受容的態度(あなたは間違っている、変わるべきである)は、変化の過程で人を身動きできなくさせる。家族療法家は、この現象を「アイロニーのプロセス」と言う。なぜならギリシャ悲劇では、ある行動そのものが、その行動によって避けるつもりであった結果を、惹き起こすからである。


    「チェインジ・トーク」
    現状維持の不利益
    変化の利点
    変わる意志
    変わることに楽観的

    「レジスタンス・トーク」
    現状維持の利点
    変化の不利益
    変わらない意志
    変わることに悲観的


    もし、ほんの数分しかないように急がせれば、馬を変えるのに一日かかる。
    しかし、時間が一日中あるように振る舞えば、ほんの2、3分で済んでしまう。
    ―モンティー・ロバーツ


    言語学的には、質問は解答を要求する。本来の意味について質問の形式で聴かれれば、その意味を味わうことからは距離ができる。一歩引いて自己を観察し、先ほど「言葉で」表現したことを実際にしているのか、または感じているのかどうか自問し始める。この違いは微妙で、誰でも気がつくわけではない。二種類の振り返りの、音の違いを比べてみよう。

    「気持ちが落ち着かない?」
    「気持ちが落ち着かない」

    「お母さんに怒っている?」
    「お母さんに怒っている」


    熟練した振り返りは、遠くへ飛躍しすぎない程度に、クライアントの言葉を超えるのである。この技術は、力動的精神療法で解釈を挟むタイミングをはかるのと、そろえほど違いはない。もし、クライアントがたじろいで尻込みしたなら、振り返りの言葉が強すぎたか、タイミングが早すぎたからであろう。


    クライアントの自己探索を推奨するために、振り返りを用いる場合、話し手が伝えたい意味よりも、少し控えめな言葉で返すことをお勧めしたい。


    動機付け面接に熟練したカウンセラーは、平均して、一つの質問をした後二つまたは三つの振り返りの言葉を返しており、応答のほぼ半数が振り返りであることがわかった。それに比べて普通のカウンセラーは、一つの振り返りに大して10の割合で質問をしており、応答全体に占める振り返りの割合が、かなり少なかった。


    抵抗は過去形であるが、チェインジ・トークは現在形である。


    「変化を成功に導く性格特徴」

    活動的な
    我慢強い
    順応性がある
    大胆な
    人懐っこい
    愛情深い
    肯定的な
    利発な
    活き活きとした
    意欲的な
    落ち着いた
    自己主張できる
    自信のある
    親切な
    注意深い
    献身的な
    人情家
    計画性がある
    他人の話しを聞く
    判断力がある
    諦めのよい
    冷静な
    頭が良い
    欲のない
    几帳面な
    動揺しない
    行動力がある
    手際の良い
    社交的な
    束縛されていない
    創造的である
    理解力がある
    希望的な
    人生に前向きな
    気前の良い
    愉快な
    健康な
    楽観的な
    慌てない
    従順な
    体力がある
    解決能力がある
    やる気がある
    世話好きな
    噂をしない
    他者の悲しみがわかる
    柔軟性がある
    目的意識がある
    懐の深い
    自由奔放な
    勇敢な
    おおらかな
    快活な
    有能な
    慎重な
    陽気な
    賢い
    受容的
    自分の意見をもっている
    決断力がある
    思いやりがある
    ユーモアがある
    勉強家
    勇気がある
    独創的
    粘り強い
    努力か
    良し悪しがわかる
    孤独に耐えられる
    物怖じしない
    我慢強い
    知恵のある
    先見の明がある
    意志が強い
    辛抱強い
    自発的な
    グズグズしない
    飲み込みが早い
    指導力がある
    勤勉な
    独立心が強い
    聡明な
    負けず嫌い
    知識豊かである
    積極的
    説得力がある
    率直な
    丁寧に物事を行う
    細心な
    精神力がある
    器用な
    真面目な
    情に流されない
    経験のある
    大胆不敵な
    妥協できる
    忍耐力がある
    穏やかな
    思いきりが良い
    根気強い
    常識的
    信頼できる
    責任感のある
    正義感が強い
    働き者
    討論が上手
    共感性が高い
    ものわかりがよい
    奥ゆかしい
    弱音を吐かない
    感謝の心をもつ
    不屈の
    断固とした
    肝っ玉が大きい
    誘惑されない
    信仰心のある
    物に執着しない
    頑強な
    頼りになる
    元気な
    霊的である
    堅実な
    愚痴を言わない
    思慮深い
    自律心がある
    洞察力がある
    愛嬌のある
    情熱的な
    力強い
    ほどよい
    敏捷な
    円熟した
    ゆったりしている
    公平な
    規律を守る
    正直な
    きちんとやり遂げる
    権利を守れる
    しっかりした
    誠実な
    勘が鋭い
    交渉が上手
    寛大な

  • 「なぜ困ったこと(依存,嗜癖,暴力)があるとわかってるのに行動を変えない(抵抗を示す)のか」という疑問から動機づけ面接は生まれた.古典的には「変化の動機づけは,不快の回避だ」という考えがある.懲罰的対応により,「それは不快な経験が足りないからだ」で行動を変えようとする.だがそれだけでは変わらない人がいる.
    一方動機づけ面接は「矛盾に気づかせ,両価性を探索し,それを拡大させる」ことで、本人が自ら「変化する立場を主張」するように誘導する。それはつまり、本人の本来の価値観、望むものに気づかせるということであり、”相手の幸福を常に第一に”考えることを要請する。

  • 図書館本 493.74-Mi27 (100070066699)

  • たぶん、ほとんどのカウンセラーが経験の中で、やってる技法じゃないかな。
    ただ、個人的に瞠目だったのは11章の事例の後半部分。そうかー十分にチェインジトークが出たと思ってまとめ上げたあとも、ここまで慎重に、量化性について吟味しなきゃならないんだな。ここだけ何度も読み返したい

  • とてもよくできている。今だとまた違うだろうと思うけれど。倫理の話は、結構おっかない。相手に害を与えてはならない。
    相手より話す時間を少なくする。質問について2回以上の振り返りをする。質疑応答1に対し開かれた質問が倍以上。共感的な傾聴の技術。理解した内容を含む振り返り。
    何について相手が話したいか聞いてもよい。適切な主題が何かについて争わない。自信がないことが障害になる。共感を表現する。矛盾を拡大する。抵抗に巻き込まれ転がりながら進む。自己効力感を拡大する。
    矛盾を拡大するには、自分でなく相手が変化について話すようにする。変化は、現在の行動と重要な相手の個人的目標や価値との矛盾によって動機づけられる。
    変化に関する直接的な議論を避ける。抵抗に反論しない。新しい見方を提案するが押し付けない。相手の中に最良の解決法や回答を見出す。抵抗は応答を変えるための信号である。
    できているところがある。そこは何か。
    振り返りの傾聴は、相手の発話の意味を理解していると仮定せず、推定した意味があっているかどうか確認する。
    自信の測定。0でない部分はどこか。変化が起こったと仮定する。何が一番役に立ったか。相手のチェンジトークを深く具体的に考える質問。事態が複雑なら、全体的な変化の構図を変える。自信を深める。出来たことの認識。
    何をするつもりか。今、対象についてどう考えているか。できるとすれば、どこから変えようと考えるか。振り返って、次に何をするとよい(と思う)か。何ができると思われるか。何が一番気になる点か。それについて、。理想的には今どのようなことが起きてほしいと思うか。変わったらどのようなよいことがあるか。
    変わる決断について尋ねるとき、変化についてその時点で考えていること、変化の計画に関連して起こったことを尋ねる。助言や情報の前に、このことについて相手自身の考えや情報を引き出す試みをすでに十分行ったか。助言や情報は、相手の安全や変わりたいと思う気持ちを強化することに重要か。検討する。

  • 動機づけ面接とは精神科や心療内科で患者に対して、ある行動の動機づけを行うカウンセリング手法である。

    つまり他人を説得するという、最も難しい行為を学術的に系統立てて説明している。

    私なりの感想としては動機づけ面接とは「クライアントの心の中を整理する。矛盾点に気づかせ、それを拡大させる。結果として変化を促す方法」だと思う。

    本書は精神科や心療内科での現場を想定して書かれているが、一般のコミュニケーションでも十分に使える。

    日常生活で多くの人が感じているとおり、他人を議論・論破して相手を納得させることは基本的にはできない。

    いわゆる「抵抗」にあい、むしろ説得した方向と逆の行動を起こさせる可能性が非常に高い。

    動機づけ面接のポイントは「答えはすべてクライアントが持っている」「クライアント自身に気づいてもらう」ということだと思う。

    だからカウセンラーがすべきことは、
     しっかり傾聴、共感、振り返りすることで安心感を与え、抵抗をなくす
     両価性(矛盾する2つの気持ち)に視点をあて、矛盾を拡大させることで、問題点を可視化する
     現状のデメリット、変わることのメリットに気づかせる
     価値観をとう
     変化の兆しであるチェインジトークを引き出す
     心情を数値化したり、要約することでクライアントの頭の中を整理する
     自信がない場合には、過去にうまくいったケースや成功イメージを持たせて自信をもたせる
    などとなる。

    決して答えを教えたり、自分の考えを押し付け、説得するわけではない。
    もちろん、カウンセラーは専門職なので対応策を聞かれれば選択肢として情報をもっていることはある。
    そんな場合でも「カウンセラーはあくまで情報提供者であり、決めるのはクライアント自身である」というスタンスを常に忘れないことが大事になってくる。

    このような働きかけがクライアント自身が自分の心の中の矛盾点に気づき、変わり始めることができるのである

    いわれると原理自体は簡単なことであり、内容自体が理解できないという人はあまりいないだろう。そうはいっても日常生活でこのような説得の仕方やコミュニケーション手法を身につけている人は極めてまれである。

    少々分厚いが、ざっとでも読んでおくと他人とのコミュニケーション全般に使えると思う。

  • ずっと積ん読にしていましたが、集中セミナー(MI3)受講後に読んでみたら、すっと入ってきました。

    動機付け面接法(MI)についての本。
    どんな面接を行えば、相談者の方が変化に向けて動き始めるのことができるのかが丁寧に紹介されています。

    本書はMI2なので、MI3では変わっている部分もありましたが、セミナーの時に残った疑問、後から湧いてきた疑問など、いくつか解消できました。

    MIは、共感的でありながら、一方で指示的でもあるように感じたのですが、MIの理解をさらに深めると、そもそも相談者の方が願いもしないものは扱わないので、その意味において、倫理的な部分は守られるのかな、と思いました。

    興味深い技法なので、もう少し、学びを深めていこうと思います。

  • 2013年126冊目

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