もういちど自分らしさに出会うための10日間 自尊感情をとりもどすためのプログラム
- 星和書店 (2009年4月15日発売)
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感想 : 4件
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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784791107032
作品紹介・あらすじ
本書に従って10日間の日常練習を行うことで、考え方の歪みに気づき、それが修正され、心の様々な問題が解決されるようにデザインされています。実際的で、日常的で、誰でも感じる悩みをどう扱うかが、認知行動療法の基本原則に則って展開されています。デビッド D.バーンズの著書「いやな気分よ、さようなら」を基盤として、より実際的な練習ができる内容となっています。自己療法に適しているだけでなく、治療機関でのプログラムの教本、予防教育のテキストなど、その使用方法は多彩で、多くの人にとって必携の認知行動療法テキストです。
感想・レビュー・書評
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「すべての人は生まれつき不完全であり、欠点がある」
という原理原則を私たちは忘れがちだ。
出来て当たり前。情報さえ手にできれば失敗は免れる。
努力や忍耐や事前の用意が足りないと責め立てる。
でもデフォルトを
皆不完全にすれば誰しも生きやすくなる。完璧主義の私は特に自分に不完全でいいのだと伝えられれば。
不完全さは人間としての必須条件だと。
だから改善も成長も変化も持続しつづけられるのだから。
恥として欠点や過ちを隠してしまえば、それらが私たち自身を侵食し悦びを奪い、孤立感や絶望感に繋がるという表現は深いものだった(P.278)。
メディアやSNSは、他者の失敗やミスに容赦なく、誰にとってもいつ何時も、とても「居心地のよい」社会に飢餓状態なのかもしれない。
テレビの街の声は最たるものだ。
電車が天候で遅れても、マイナンバーなどの初期不良が出ても、メディアは市民の不平不満を拾って大きくする。
生まれ育ちや生育環境などの難しさがあっても「私は持って生まれた力を使ってベストを尽くしてきたから価値のある人間だ」という自尊感情は、私たちの文化に広く浸透したカルバン主義の労働観に基づいている
という視点に驚いた。
結局こういう考えは自尊感情を条件つきにしてしまう。
日本式に言えば「働かざる者食うべからず」と同様、それは社会全体の秩序や安定、生産性を維持向上させるには必要不可欠ではあっても、万人が常に勤勉で努力を怠らず生産的であるというのは無理難題だ。
できないときも滞るときもある。
否定的な感情に苛まれ足踏みすることもあれば、他者と相容れず対立してしまう状態に留まるときもある。
自尊感情と自信の違いをワークブックに取り組む中で気づけた気がする。
またメディアやSNSの大好物である「共感」や他者への「寛大さ」「寛容さ」も「価値のある人間」の尺度ではないという記述にほっとした。
そして私自身が、自分の失敗やミス、或いは感情の波を露呈することへの恐怖が強いことに気づけた。
さらに常に感情をコントロールしていないと他者から価値のない劣った人間だと他者から軽蔑されるに違いない、と抑制し続ける窮屈さで苦しかったことも発見だった。
加えて「受け入れてばかりの善い人」がどうも最近の私たちの社会では評価されがちのような気がする。
他者との境界線を意識し、まずは自分自身の感覚や感情に目を向け、分かりやすい業績や経済性、地位、寛大さ、評価などばかりに振り回されない安定した無条件の「自尊感情」というものに向き合うとてもよい機会だった。
私が有価値であることは既定の事実であり、それを獲得する必要はないと。
いかにもアメリカ的なという監修の野村先生の言葉もあったけれど、日本語の著作では及ぶことのできない言語による深い洞察や示唆に満ちていた。
本文245頁より
・たとえ困難なときも私はいつも自分が価値ある人間と信じていられる
・私は失敗や拒絶を恐れる必要はなくなる。仕事や個人の生活でより危険を恐れず活動できる
・ものごとが上手くいかないときはがっかりすることもあるかもしれない。しかし劣等感をもったり、恥辱を感じることはなくなるだろう
・私は自分が他人よりも優れてもいないしおとりもしない、皆と同等の人間であることを常に感じていられる。そのことによって人間関係がより実り多いものとなる
・自尊感情が危険にさらされることはないので批判を受けても自己防衛的にならずにすむ
・自分がまともかどうか心配することにエネルギーを費やさずに済むので人生をより多く楽しむことができる
・自分の欠点とより誠実に向き合うことができる
・他人を愛し自分を受け容れる、より広い度量を持つことができる
ただ読むだけでは頭の中がグルグルしてしまうので、実際にワークブックとして書き出すと、思わぬ自分の心の声や思い込みが表出してきて、とても有意義だった。
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認知行動療法を実践するための教科書。
チェックテストが非常に多く、また繰り返し出てくる。同著者の『いやな気分よさようなら』と重複する内容も多い。受け入れの逆説やTIC-TOC技法は初めて知ったが、なかなか興味深い。
『いやな気分よさようなら』ほどではないが、この本もそれなりに分厚い。もっとコンパクトでリファレンス的に使える本なら手元に置きたいと思えるのだが……。
