成人アスペルガー症候群の認知行動療法

制作 : 伊藤 絵美  伊藤 絵美  吉村 由未  荒井 まゆみ 
  • 星和書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791108282

感想・レビュー・書評

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  • 治療者のための内容で、私が期待してた当事者向けのCBTではなくてざんねんだった。
    それでも、後半のセッションの内容、交わされるやりとり、ひざうつぐらい共感した。そうそう!そうなの!
    著者が言うことが、私にも言われてるような感覚がして、ほんの少し癒され感だった。

    ちまたにあるような、
    自分でできるCBT、AS特化の当事者向けのCBTの本が出ることを期待したいです。

  • 【第2章 成人のアスペルガー症候群のメンタルヘルスに関する問題のケースフォーミュレーション】

    [p.52]図2.1 ASにおける中核的な問題と、そこからメンタルヘルスの問題に至る流れ

    A.他者についての情報処理における中核的問題
    ・心の理論
    ・社会的手がかりに注意し、それを用いる
    ・需要的な言語の語用論

    B.事故についての情報処理における中核的問題
    ・感情の知覚と調節
    ・感覚運動の知覚と調節

    C.非社会的な情報処理における中核的問題
    ・計画と目標決定
    ・整理
    ・姿勢、および注意のシフトー柔軟性
    ・中心統合

    A+B

    行動における問題「社会的スキルの乏しさ」
    ・奇妙な動き、ないし習癖
    ・自己顕示的な話し方
    ・手ぬかりややりすぎによる不適切な態度

    社会的結果
    ・他者に無視される、拒否される、馬鹿にされる

    ★乏しいソーシャルサポート

    B+C

    自己管理の問題「日常生活における活動障害」
    ・不十分な作業管理
    ・先延ばし/自己の方向づけの乏しさ
    ・基礎的な問題解決能力の乏しさ

    日常生活の結果
    ・日常的な苛立ちごと
    ・ストレスフルな出来事

    ★慢性的ストレス

    ★★→不安・うつ

    [p.67-68]
    ASのよくある誤解に、共感性の欠落があるが、著者の経験的にはASにも共感能力はある。ASに欠けているのは、共感能力そのものではなく、その能力を発揮するための情報処理能力。

    対人反応目録(Interpersonal Reactivity Index: IRI)という共感尺度において、下記の尺度を試験。by. Roger, Dziobek, Hassenstab, Wold and Convit.

    共感の認知的要素:
    ・視点取得(perspective-taking: 自分の見方を他者の見方に自発的に合わせる傾向)
    ・ファンタジー(架空の人物に自分を重ね合わせる傾向)

    共感の感情的要素:
    ・共感的配慮(empathic concern: 不運な他者への同情と思いやりの気持ちを経験する傾向)
    ・個人的苦悩(personal distress: 他者の極度の苦痛に反応して、自分自身が苦痛と不快感を経験する傾向)

    AS群は共感の認知的な要素に関する下位尺度は優位に低かった。しかし、共感の感情的要素について、共感的配慮はAS群と対照群に差はみられず、個人的苦悩はAS群は対照群より優位に高得点を示した。これは、他者の極度の苦痛に直面したとき、ASが一般人以上に苦痛を感じることを示唆する。(ただ、個人的苦悩の下位尺度は不安にも関係しており、ASにおいて報告される全般性の不安の強さを反映している可能性もある。)


    [p.78] アレキシサイミア(失感情症)
    自分が感じている感情を言葉で説明できない、あるいは自分の感情がはっきりわからない状態。脳損傷のある患者において観察されることが多い。高機能自閉症(HFA)の成人集団にアレキシサイミアがどの程度存在するか調査した結果、被験者は対照群よりアレキシサイミア傾向が強かった。同時に抑うつ質問票も実施し、HFAはより抑うつ的だった。
    アレキシサイミア的な人が、どうして自らの抑うつ症状を報告できるのか? 結果を分析すると、自分の感情を同定するうえで、認知的な面を測定する指標はHFAと一般成人間に相違が出たが、感情的な面を測定する指標は、相違が出なかった。


    【第3症 初期のアセスメント】

    [p.128]表3.4 成人のASDの診断の際の補助的アセスメントツール
    ▶︎自閉症の診断のための構造化面接ー改訂版(ADI-R: Autism Diagnostic Interview - Revised)
    ・全年齢対象、構造化面接を実施、介護者が回答
    ・難易度-高、単独での有用性-高
    ▶︎自閉症の診断のための行動観察目録(ADOS: Autism Diagnostic Observation Schedule)
    ・全年齢対象、行動観察実施、本人が回答
    ・難易度-高、単独での有用性-高
    ・認知的な能力の高い当事者は精度が低くなる可能性あり。
    ▶︎Gilliamアスペルガー障害尺度(GADS: Gilliam Asperger's Disorder Scale)
    ・3-22歳対象、質問紙で実施、介護者が回答
    ・難易度-中、単独での有用性-低
    ▶︎アスペルガー症候群診断尺度(ASDS: Asperger Syndrome Diagnostic Scale)
    ・5-18歳対象、質問紙で実施、介護者が回答
    ・難易度-中、単独での有用性-低
    ▶︎オーストラリア版アスペルガー症候群尺度(ASAS: Australian Scale for Asperger's Syndrome)
    ・3-19歳対象、質問紙で実施、介護者が回答
    ・難易度-低、単独での有用性-低
    ▶︎自閉症スペクトラム指数(AQ: Autism Spectrum Quotient)
    ・成人対象、質問紙で実施、本人が回答
    ・難易度-低、単独での有用性-低


    【第8章 補助的な治療、および他の専門家との連携】
    [p.347] 刑事的弁護
    ASの人々は法的な機関と否定的な形で遭遇する状況に陥りやすい。有益なテキストは、
    "Autism, Advocates, and Law Enforcement Professionals: Recognizing and Reducing Risk Situations for People with Autism Spectrum Disorders"(「自閉症者とその家族、そして法律専門家:自閉症スペクトラム障害の人々にとっての危険な状況に気づき、それを軽減するために」)


    【第10章 治療の終結と展望】
    [p.383] 成人アスペルガー症候群の人々の今後のために ー ジェンダーの問題
    自閉症スペクトラム障害の有病率は、女性より男性の方が高いため、多くの研究は男性当事者を用いて行われてきており、罹患女性についての情報がほとんどないまま。最近では、症状発現におけるジェンダーの違いや、性差に関する領域で、さらなる研究の必要性に注目が集まってきている。
    参考文献↓
    文献10) Attwood, T.(2006b). The complete guide to Asperger's syndrome. London: Kingsley.
    文献117) Koenig, K., & Tsatsanis, D.(2005). Pervasive developmental disorders in girls. In D.G.Bell & S.L.Foster (Eds.), Handbook of behavioral and emotional problems in girls. (pp.211-237). New York: Kluwer Academic/Plenum Press.


    【付録】セラピー・リソース

    <専門家向け概説書>
    ・Attwood, T.(2006b). The complete guide to Asperger's syndrome. London: Kingsley.

    <自閉症スペクトラム上にある当事者による自伝とセルフヘルプ用の書籍>
    ・Grandin,T.(1995). Thinking in pictures and other reports from my life with autism.
    ・Grandin,T.(2004). Developing talents: Careers for individuals with Asperger syndrome and high functioning autism.
    ・Newport, J.(2001). Your life is not a label: A guide to living fully with autism and Asperger syndrome.
    ・Paridiz,V.(2002). Elijah's cup: A family's journey into the community and culture of high-functioning autism and Asperger syndrome.
    ・Prince-Hughes,D.(2004). Songs of the gorilla nation: My journey through autism.
    ・Shore,S.M.(2001). Beyond the wall: Personal experiences with autism and Asperger syndrome.
    ・Shore,S.(Ed.).(2004). Ask and tell: Self-advocacy and disclosure for people on the autism spectrum.
    ・Willey,L.H.(1999). Pretending to be normal: Living with Asperger syndrome.
    ・Willey,L.H.(2001). Asperger syndrome in the family: Redefining normal.
    ・Zaks,Z.(2006). Life and love: Positive strategies for autistic adults.

    <ASとHFAのための教育、権利擁護、サポート団体に関するウェブサイト>
    >> Asperger Syndrome and High Functioning Autism Association
    www.ahany.org
    >> Asperger Foundation International
    www.aspfi.org
    >> Asperger syndrome Education Network(ASPEN)
    www.aspennj.org
    >> Autism Network International
    www.ani.autistics.org
    >> Autism Society of America(ASA)
    www.autism-society.org
    >> Autism Speaks
    www.autismspeaks.org
    >> Global and Regional Asperger syndrome Partnership (GRASP)
    www.grasp.org
    >> More Advanced Individuals with Autism/Asperger syndrome and Pervasive Developmental Disorders(MAAP)
    www.maapservices.org
    >> National Association for the Dually Diagnosed(DD/mental illness)
    www.thenadd.org
    >> The National Autistic Society (United Kingdom)
    www.nas.org.uk
    >> Online Asperger Syndrome Information and Support (OASIS)
    www.aspergersyndrome.org
    >> Organization for Autism Research (OAR)
    www.researchautism.org

    <自閉症スペクトラムに特化した出版社>
    書籍
    >> Autism Asperger Publishing Company
    >> Future Horizons, Inc.
    >> Jessica Kingsley Publishers

    雑誌
    >> Autism Spectrum Quarterly
    www.asquarterly.com
    >> The Autism Perspective (TAP)
    www.TheAutismPerspective.org
    >> Spectrum Magazine
    www.spectrumpublications.com

  • 著者がアスペルガー症候群の患者に対する臨床研究をベースにした本。あくまで治療者のための本であり、当事者がワークブックとして使うための本ではないので注意。
    とはいえ、第6章以降のセッションの模様は当事者が読んでも腑に落ちる内容であり、読んで損は無いと思う。特に第7章はアスペルガー症候群に併存するメンタルヘルスの問題について取り上げており、認知行動療法をどのように活用すれば良いのかという部分が分かりやすくなっている。

    巻末には付録としてセルフヘルプ用の書籍やウェブサイト、出版社などのアスペルガーに対するセラピー・リソースが掲載されているが、全て英語。日本語のセラピー・リソースもあると嬉しかった(「あまり無いから取り上げられなかった」という可能性もあるが)。

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