境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ 家族、友人、パートナーのための実践的アドバイス

  • 星和書店 (2014年4月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (488ページ) / ISBN・EAN: 9784791108718

感想・レビュー・書評

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  • 境界性パーソナリティ障害BPD患者本人に対してではなく、家族に向けたの1冊。
    翻訳本だが、非常にこなれた日本語で読みやすく、示唆に富んでおり、読んでよかった。

    BPD患者は極めて過敏かつ過剰な感情の持ち主であり、気分や感情の切り替えも難しく、かつ感情の制御に困難を抱えるという説明に溜飲が下がった。

    予測不能な行動、感情の苛烈な起伏、強い衝動性等々、何よりも怒りを理不尽かつ執拗に繰り返しぶつけられることによる、家族側の苦悩や心情について、丁寧に言葉で描写されている。

    それ、そうなんだよ。
    過去の暴言、暴力等が想起され、言葉にすることもできないほど、蓄積された私の感情にも言葉が与えられた気がする。

    生まれながらの資質の問題もありながら、親の所為というよりは不運にも親からの「承認」が欠けていたことも寄与してしまうという考察にも納得。

    一時、「褒めて育てる」が日本でも流行ったが、一番基本的なことはまず、「承認」validateである。
    それは「同意」agreeと必ずしも一致するものではなく、個人の内的経験や感情感覚を同定する行為。

    自分の感覚や選択に自信が持てないという根源的な私の不安は、この「承認」を欠いた家庭に育ったことなのだと理解できた。

    BPDの家族に関わる長年の苦悩の蓄積で、やはりまず自分自身の心と身体の安寧が優先だと再認識。
    自己犠牲が美徳でや血縁優先というのは価値観の1つ。
    罪悪感にも悩んできたが、自分が判断することなのだな。

  • 有名人の後追い自殺もBPDが原因の可能性。
    難しい。

  • 読みにくい文章もあるけど、自分の気持ちをよく書いてくれてあるし、パートナーができることや、できない時の対処法が書いてある。

  • BPD本人向けではなく、対応に困っている健常者のためのガイド。最初の数ページを読むだけで何度も激しく頷く。この本にはBPDを表すのに絶妙な表現が駆使されている。

    たとえば

    ・危機を生む行動(あなたの力を奪い去り、とても大切に思う相手と一緒にいようというあなたの決意を弱め続ける、あの行動)

    ・激流にさらわれたように感じるかもしれません。あなたを動揺させている行動がいつ終わるのかわからず、最後にどこに落とされるかわからないのですから。

    ・人を当惑させる行動、感情的なリアクション、対人的失策、自分が何者かについての多くの疑念のため、周りで見ている人はBPDをもつ人の生き方に仰天してしまうことになります。

    ・愉快な一日を過ごしていたと思ったら、突如として結果がどうなるかを考えもせずに正気とは思われないことをしてしまうのです。

    など…これらの表現の意味、わかる人には身に染みてよくわかるだろう。

    とくに
    『あなたは混沌の中で無力に感じ、途方に暮れてしまう可能性があります。理解し、助けたいのですが、(BPDをもつ人は)どうにも自己破壊的な行動をやめようとしません。』

    そう!ほんと、それ!そうなんだよ!と、激しく頷く。

    『時として、適切な対人関係技能がないため、危機の一部になっている人たちや、問題解決を手伝ってくれるかもしれない人たちへの対処の仕方は役に立たず、BPDをもつ人の感情がさらにいっそう高まってしまうこともあります。通常、BPDをもつ人は、問題を解決するどころか悪化させるような決断を続けざまにしてしまうのです。』

    「危機の一部になっている人たち」つまり、本当は離れなければならない害悪のある人間関係を絶つことをせず、むしろそういった害悪に自ら近づいていってしまったり、逆に「問題解決を手伝ってくれるかもしれない人たち」つまり救いの手ともいうべき人間関係を自ら遠ざけてしまう…自爆自滅まっしぐらな行動。そしてBPD本人にはその自覚がないという、救いようのない状態が続く。これも実際にBPDと深く関わり手を差しのべたことのある者なら痛いほどよくわかるでしょう。

    BPDをもつ人は、まさに墓穴を掘る。どんなにサポートしても一瞬で全てを台無しにして勝手に自爆する。手を差しのべて彼らを支えようとする側が受ける影響、傷は大きい。その実例とともに、彼らの精神の脆弱性、原因、そして「あなたの愛する人」(BPD患者)と良い関係を築くための実践的な方法が書かれている。

    この本には実際にBPDをもつ人と深く接したことのある人にしかわからないこと、理不尽さ、キレイゴトでは済まない想いがたくさん書かれていて、他の本やネットなどからは得られないヒントが詰まっている。

    そして
    健常者側が自分を守るためには、限界を悟り、彼らを見放すことも必要だと教えている。実際にそうだ。いくら万策尽くして待ったとて、こちらの被害が増すばかりで、彼らは決して正常にはなれない。
    厳しい言い方だが、救いようのない人間を救おうなどと思っても、ダメなものはダメなのだから。無駄に人生を捧げてはならない。残念ながら、彼らは、自分を受け入れてくれた人ほど深く傷つけ、大きな被害をもたらす。

    ただ、こういった書籍から理解しておくべきなのは、彼らが親の育て方の第一次被害者であり、遺伝的要素は誰のせいでもないし、本人もそうなりたくてなったわけではない、ということ。


  • BPDを持つ人は、周囲の反応や環境に影響を受けやすい。だから、いくら助言をしても変わらない(受け入れない、聞き入れない)ように見えても、周囲の人間が対応を変えれば、その影響を受けて変わる可能性は大いにある。
    そのためにBPDを理解し、対応の方法を学ぼうというのが本書の趣旨。多くの実例がわかりやすい。
    確かに変わるかもしれないと、希望を持てるようになった。何より、家族を悪者扱いしない(親を非難し、親の責任を問う本にはうんざり!)ので、安心して前向きに読めた。
    「承認」することがいかに大切かを痛感させられた。
    今まで、どれほど娘の言葉を否定してきただろう。それがどれほど娘を傷つけ、自分の価値を低めさせてきたことか。よかれと思ってしてきたアドバイスが逆効果と知り、痛恨の思いだ。
    難しいことだけれど、本書に習って「OK」をいっぱい伝えていこうと思う。
    「あなたがそう思うのは当然だ」「当たり前だ」
    「同じ状態におかれたら、誰でもそうする」
    「あなたがそう考えていることは理解できる」
    そしてゆっくり考えてもらおう。
    彼女が自分で答えを見つける力を信じて。

    BPD(に近いと思われる)特性を持つ人への対応に苦慮なさっている方々に、ぜひ読んでいただきたい一冊。
    かなり救われると思う。

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