ユリイカ2012年3月号 特集=辞書の世界

  • 青土社 (2012年2月27日発売)
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  • Amazon.co.jp ・雑誌 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791702350

感想・レビュー・書評

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  • 『大渡海』製作スタッフ勢揃い!の表紙がキュートでジャケ買い。なので、特集「辞書を語る」から主に、箇条書きで素人感想を。

    ・国語学・言語学の北原保雄さん(この特集の執筆陣には、「先生」「氏」とかのほうがいいのかもしれないけど)へのインタビュー『オンリーワンの辞書を目指して―辞書の現在、そして未来』。現在流通していることばに対して、お歳にしては非常に柔軟であることに、失礼ながらあらためて感じ入る。「近ごろの若い子のことばはわからん」「団塊のことば、マジ意味わかんねぇし」とかいった世代間対立を真に受けてたら、国語学者やってられないよね(笑)。辞書の未来も語りながら、Wikipediaのような、誰でも項目や記事を追加・編集できる辞書については、もろ手を挙げて賛成ということではない。編者の名前を出して責任の所在を明確にするということで、情報の信頼性を担保する大切さを強調しておられた。

    ・特集前半のエッセイでは、辞書編纂の技術的な点を挙げたものが多いような気がする。飛田良文さん『辞書の正確さとは何か』で、「全然オッケー」の「全然」の用法が誤用か否か、と新聞で取り上げられた問題において、「そもそも『誤用』って言いかたはどこから来たのよ」と緻密に分析。『舟を編む』のひとこまのような緻密さとプライド!倉島節尚さん『辞書を巡る二、三の覚え書き』によるば、「がれき(瓦礫)」は字のごとく、もともと木くずを含まない、とか。だから、「がれきの木で…」という用法は厳密にいえば誤りなんだけど、それが増えてくると、辞書の定義を書き換えることになるだろうという、タイムリーかつ穏やかな分析も面白かった。

    ・特集後半は、技術論を離れて、どちらかというと「辞書をダシにエッセイを書いてみました」といった趣で楽しい。個人的には、外国語・もしくは外国語文学寄りのエッセイに親しみを感じた。高山宏さん『contradictionary』なんて、メルヴィル『白鯨』から書き起こし、辞書と文学作品を縦横無尽にめぐって、私的には読みたい本も増えるブックガイド(笑)。前田塁さん『燃え上がるたほいや』、懐かしさも覚えつつ、こういうふうに文字にされると、意外とハイブロウな番組だったっけ?と記憶を探る。

    ・山本貴光さん『この辞書を見よ!20』は、何かのときに役に立つかもしれないので、マイ資料認定。

    ・電子辞書やWeb上の辞書については、「じっくり調べるには紙の辞書だけど、ぱぱっと使うにはこっちかな」という現実派のかたが多いように思った。

    『ユリイカ』自体をめったに読まないので、索引・バックナンバー紹介を含めて、面白さよりも「なるほどなるほど」とめくった号でした。

  • 雑誌

  • 辞書って「正しい」とか「開けば答えがある」とか、
    なんか完璧なものだと勝手に思ってましたがそんなわけなかった。
    http://feelingbooks.blog56.fc2.com/blog-entry-882.html

  • ユリイカは、毎回寄稿する人たちの特集に対する愛情がとても伝わってくる雑誌。今回の特集は「辞書」。辞書に対するいろんな人のいろんな愛情が寄せ集まっていて、読んでいてたのしくなる。
    辞書に掲載されているゆかいな説明文から、辞書の歴史、辞書の種類、「読む」と「引く」の違い、などなど、寄稿者によって切り取る側面もさまざまで、おもしろい。

    本屋大賞を受賞した三浦しをんさんの「舟を編む」も、対談のほかにも複数の記事で取り上げられています。

  • 「引く」ことはもちろん、「読む」ことも楽しむことができる辞書。今回の特集では、たくさんある辞書の特色について、少し理解できました。

    なにより興味深かったのが、各々の辞書は編者の壮大な夢・世界観が反映されているということ。言葉を選び、解釈するということは、世界をどう把握するかを熟考することにひとしい。確かに。こういう見方で辞書を捉えたことはありませんでした。

    今度辞書を選ぶときは、編者のまえがきを読もうと思います。

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著者プロフィール

前筑波大

「2018年 『方言(新装版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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