ユリイカ 2016年12月臨時増刊号 総特集◎『シン・ゴジラ』とはなにか
- 青土社 (2016年11月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791703180
感想・レビュー・書評
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シン・ゴジラをネタに文化人があれやこれやと論じた内容のまとめ。真剣なもの茶化したようなもの色々。ジ・アート・オブが出てしまった後では見当外れになってしまったものもいくつか。
池田氏の論文内にあるように世代で評価軸が決まってしまっており重複感ある論も多い。その辺りをクロスオーバーで語らせることができればもっと幅が出て面白かったかな。 -
シン・ゴジラの論評としては最も充実している。
この映画が何を表現しようとしているのか。
当然原発や安全保障体制なども入ってくるだろう。
しかし、この本にも書かれているが、これを安倍首相は、自衛隊の活躍と、日本政府・官僚が日本の危機を救うという、まるで自身を賛美されたかのような発言をしていることには、腰を抜かしそうになる。
どこをどう見たらその様な発想になるのだろうか。
実際映画では自衛隊は損害こそ目立たなかったものの(これは撮影協力が自衛隊ということで撃墜されるとかのシーンは入れられないからとのこと)、対ゴジラ戦では全く無力であったし、かろうじて損害を与えた米軍の攻撃部隊は壊滅した。政権は何の成果も出せないまま崩壊する。
これを自衛隊が良く描かれているとして、自衛隊幹部が並ぶ前で得意気にしゃべったそうだから、幹部も苦笑するしかなかっただろう。 -
シン・ゴジラという作品について、様々な視点・立場からの
論説をまとめた本。こういう本が成立するくらいの作品では
あったということであろう。
以下、個人的に引っかかった論点
・エヴァとゴジラの1作目と3.11のMADでしかない
・内閣のメンバーが一気に死んでから後の『ニッポン』は
理想的な虚構である
・天皇の不在
・対話の欠除
・登場人物の擬人化 -
感心するようなトリビアから、なるほど、という時勢をからめた切り取り方から、それはご自分の専門にひきつけすぎでしょ、と思ったり、ないものねだりの言いがかりだなあ、と思うものもあったり、難解で立論についてけないものも、含めて、楽しめた。こういう様々な視点から語られる一冊を待っていた。/最後のシーンのゴジラのしっぽにこめられていた意味、カヨコの巨大生物への呼び方が 「ガッズィーラ」から、「ゴジラ」へ変わった契機への着目。日本との対比で、軍事力の行使をためらわないロシア軍に、「冷温停止」はできなかったのでは、ロシアにこそ巨災対が必要だったのでは、という問いかけ。初代ゴジラの足音と咆哮のからくり。 「エヴァンゲリオン」、「ゴジラ」第一作、3・11ドキュメンタリの3つの素材をDJ庵野秀明がマッシュアップしたMADである、という断言。初代ゴジラも、シン・ゴジラも、記録的観客動員数を記録するも、どちらも「君の名は。」という同名映画に年間興収トップを阻まれたというトリビア。 シン・ゴジラによる破壊は、容易にあれこれの「意味」へと回収可能な「記号」ではなく、そのような安易な置き換えに抵抗する圧倒的な何かの出現を示す「しるし」だった、という指摘。尾頭ヒロミだけで一章をさき、キューティーハニーの夏子の進化系であるヒロミ、という枠組みを押し通す論考。野暮を承知で、生命科学の見地から、経口投与しても血液凝固させられませんよなどなど指摘せずにはいられない、まさに空想科学読本を地でいく論考。/また、さらに読みたく、観たくなったのは、下記の5つ。(1)片山杜秀「音楽から"深読み"する「シン・ゴジラ」 (2)部谷直亮「中野区にゾンビ襲来!本気で対応策を考えてみた」「JB PRESS」2016/4/6 (3)映画「日本のいちばん長い日」 (4)宮沢賢治「春と修羅」…「しるし」に満ちた作品として (5)モルモット吉田「初代ゴジラの”呪縛”から逃れた「シン・ゴジラ」