現代思想 2017年8月号 特集=「コミュ障」の時代

  • 青土社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791713493

感想・レビュー・書評

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  • 「コミュ障の時代」というタイトルはなかなか目を引くが、中身がコミュニケーションの多様な側面について考えた論の集合で、ちょっとスキャンダラスにし過ぎたのでは、とも思う。個人的には治療的なコミュニケーションと、人格形成というか自己再定義の際のコミュニケーションの働きに一番興味があるのて面白かった。
    オープンダイアローグ来てんな!みたいに最近本や雑誌から感じる事はあるが、精神医療的な利用を検討するのはやや辛い印象。そもそも精神療法をほとんど学ばず治療に活かさせない医者が増えてるなか、少なくとも都市部では臨床的には広まる気がしない。余談ですが。

  • 《國分 ところがアーレントに言わせれば、動機は、明るみに出された途端、その背後に別の動機を潜ませているように思わせてしまう。だから動機を公の光の下に曝け出そうとすれば、誰もが偽善者になる。でも、革命の推進へと向かう動機を尋ねられたほうは、頑張ってそれに応えようとする。そして応えようとすればするほど墓穴を掘ることになり、結局は「お前は偽善者だ。反革命だ」ということになって、ギロチンにかけられることになるわけです。何でもかんでも理性の光の下に晒そうとすると全員偽善者になるので恐怖政治が起こる。これがアーレントによるロベスピエール批判なんですね。
     (…)さらに厄介だと思うのは、ロベスピエールは「お前は偽善者だ!』と言ってきたけれど、今の社会はそうして語られた「動機」を評価してくるし、場合によっては信じてしまうわけでしょう。これは、心には光を当てても見えてこない闇の部分がどうしても残るのだという感覚をずっと否定されているということであって、何か感覚がおかしくなってしまうのではないか。》(p.57)

    《千葉 動機を言語化できなくてはならない、説明できなければ動機ではない。しかしそれこそが、信頼を崩壊させる。だから「心の闇」が大事だということですよね。》(p.57)

    《國分 エビデンシャリズムに対して僕は「言葉の力」ということを言いたいと思うけれど、それは明らかにある種の不平等の肯定とつながることも同時に確認しなければならないと思います。そこには、できる人とできない人という明確な能力差がある。》(p.59)

    《千葉 今コミュニケーションの問題で苦しむというのはどういうことか……一方で、行為を私的所有するネオリベ的主体としてもうまく振る舞えなければ、他方では行為のコミュニズムに身を投じることもできないというダブルバインドがあるのではないでしょうか。》(p.66)

  • 2019.3.2市立図書館
    平田オリザの文章を確認したくて借りたけれど、特集もおもしろく読んだ。

  • 國分と千葉の対談、齋藤環とその他二人の鼎談、武田砂鉄の記事が面白かった。いつぞやからKYとかコミュニケーション能力とかが言われるようになってずいぶん違和感を覚えていたけれど、過剰な忖度とノリの文化を冷静に見つけるいい機会になった。

    オープンダイアローグという手法も学んだ。青年の教育と家庭の治療も仕事として行っているので、考えさせられるところが多かった。



    17.8.21

  • 発達障害の身体性については明らかにされていかなければならないけれども、我々が現実的に向き合っている発達障害の子どもとここに登場する発達障害?には、部分的に連続性はあるかも知れないが、どこかで断絶というか境界があるように思う。なんでもかんでもスペクトラムにしてしまうことの危険性も明らかにすべきだろう。

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著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科准教授

「2020年 『責任の生成 中動態と当事者研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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