現代思想 2019年11月号 特集=反出生主義を考える ―「生まれてこない方が良かった」という思想―

  • 青土社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791713882

感想・レビュー・書評

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  • (忘れないように自分用記録、長い)


    現状としてベネターの反出生主義の論理に対する反論、それに対する反論、、と議論の決着はついていないみたいで、結局「新たな生をうみだしていくべきか否かはまだわからない」だからこれからも考え続けていくしかないスタンスが1番しっくりきた。決断を後回しにしてるだけと言われればその通りではあるのだけれど...

    .
    ベネターの詳しい理論、もろもろについては割愛するとして、自分の思ったこと、

    何かの善悪を判断するときに絶対的(宇宙的)な評価なんてなくて「誰かにとっての、相対的な」評価にしかなりえず、そこには自分自身の人生を基にしたバイアスがかかっている。だとしても(!!!)、人は自分本位な選択をしていいと思う。「頭では分かっていても、、」っていう論理と実際の欲求の齟齬みたいなのは絶対あって、理屈の方を優先し続けることと、その人が幸せになることが直結しないと思うからだ。でもそれは、理屈抜きで本能のおもむくまま獣のように生きましょう。というはなしでもなくて、なぜ自分がその選択をしたいのか、ほんとにそれは(自分にとって、周りの人にとって、○○にとって)正しいのか、を論理的に考える過程も経てその上で「納得のいく折り合い点」をそのつど修正していくべきなんじゃないか、そのための判断材料を蓄えておいて考え続けることが大事なのでは、と"いまのところは"思っている。

    .
    だらだら抽象的なことを書いたけど、いざ子どもをつくるとか、もしその子どもが早い段階で障害を持っていることが判明したら、とか、喫緊の要因が(気候変動が、新しいウイルスが、戦争が、、)でてきたりしたときに自分がどうしたいかは、そんときになってみないと分からないというのが正直なところです。でもそういうときのために、偏見を持たずに、いろいろ考えていきたい

  • 気になる章のみ読んだ。

    門外漢なりの理解だが、ベネターは反出生主義を論理パズルのように唱えている。

    だが、本文中で森岡先生が言っていたように「生まれてこない方がよいのか」という問は自分の生、実存に突き刺さるもっと重いものだと思う。


    反出生主義は、分析哲学の知能パズルでもメンヘラでもない。ベネターに始まった訳ではなく、ショーペンハウアー、ニーチェ、もっと遡れば古代インド哲学の輪廻転成の思想とも結びつく人類の普遍的な思想だといえる。

    英語圏より日本の方が、反出生主義は受け入れられているのが悲しかった。
    自分の生を肯定できない日本人が相対的に多いということか。



    「こんな目に遭うなら生まれてこなければよかった」


    それに対しての森岡先生の答えが好き。

    「生まれてこなければよかった」と思っている人は既に生まれていて、生まれる前に戻ることはできない。この問題は生まれてきてしまっている我々が残りの人生を生き続けることによって解決するしかない。残りの人生の中でたしかに生まれてこない方が良かったという考えに何度も何度も落ち込んでしまうけれども、それをくぐりぬけて、生まれてきて本当によかったという道にたどりつくにはどうすればいいのかを模索するしかない。


    ※ベネターは自著の中で自殺を進めているのではない。

  • 「ただしい人類滅亡計画」と「夏物語」を読んだこともあり、反出生主義に興味がわき更に深ぼるために読んだ。冒頭の森岡さんと戸谷さんの対談が非常に学びになったし、考えを煮詰める後押しになった。また、ベネターの反出生主義の主張を、「知的な論理パズル」にせず、「普遍的な問い」として扱っていかねばいけないと思った。

  • 何年か前にデビッドベネター氏の反出生主義を知った時、衝撃を受けた事を覚えている。すごく腑に落ちたと言うかカタルシスさえ感じていた。
    ただ暗い考え方ではあるので、自分が子どもを持つ事になるかもしれないタイミングで、論破してくれる人はいないかと思いこの本を手に取った。
    哲学的に理解するには難しく、自分の中では、やはり感覚的に反出生主義がしっくりくる…という結論に行き着いてしまった。

    その中でも、この感覚とうまく付き合っていくコツというかプラスな考え方を得る事ができて良かった。
    要は『どちらが正しいではなく考えることが大切』だと言うこと。そして、それは一生かけて探求するテーマになりそうだ。
    これからも繰り返し読んでいきたい本になった。

    ●反-出生奨励主義と生の価値への不可知論
    (p.84)
    ●ベネターの反出生主義ににおける「良さ」と「悪さ」について
    (p.125)
    ●釈迦の死生観
    (p.154)
    ●トランスジェンダーの未来
    (p.198)

  • 素人が興味本位で手に取るには学術的すぎて、読破にはだいぶ時間がかかった…

    最も興味深かったのは、巻頭の森岡正博・戸谷洋志の討議。
    ベネターの主張に対して思想の変遷としてのある種の妥当性も認めつつ、それをどう乗り越えるか?生まれてきて良かった、と思えるようにするにはどうすればよいのか?という前向きな話だった。
    自身としては直観的にベネターの反出生主義に賛同しているため、このような反論があり得るということが非常に勉強になった。

    「今日の反出生主義も、やはりこれはいわゆるメンヘラカルチャーの産物でもなければ、ただの論理パズルでもない、人類の普遍的な問いの一つだと思います。」(p19.戸谷)

  • 様々な著者が反出生主義を論じている。
    森岡正博と戸谷さんの対談は見ごたえあり

  • 10/15

  • ベネターの『生まれてこない方が良かった―存在してしまうことの害悪』をまだ読んでいないまま、本雑誌を読んだので話の論点が???となってしまうところが多々あった。特に非対称性の議論など。ベネター本を読んでから改めて読みたい。

  • 反出生主義を考えると「存在」,「時間」,「論理」が鍵概念のように思う.

    「日本死ね」と,「転生モノ」の流行は,反出生主義とつながっているのでは?

    個として生きづらい日本で,
    「生まない」は僅かに許された表現であり,
    実存のあり方であって,
    社会に対する恨みが原因の緩慢なテロのようにも思う.

    今の日本社会は反出生で殺して,今の日本ではない場所にならば,転生し,出生したいのではないか?

    「親ガチャ」と反出生主義は連関している.
    じぶんの子どもにハズレ(じぶん)を引かさずに済むように産もうとせず,
    じぶんから見て,多くのハズレの親がした子どもを生むという判断を否定したくなるのだと思う.

    過去から現在までの「生まれてこないほうが良かった」という思想は,
    やはり,未来からの不安による「はやく死にたい」という思いと連関していないとは言えないと思う.「メンヘラカルチャー」とも連関しているとも思う.

    生まれてきてから,生まれてこないほうが良かった,と思考するのは,不可逆な「過去」にとらわれているからだと思う.「過去」に生まれてきて良かった,来ないほうが良かった「理由」を求めている.

    多分,分析哲学の根底にある「論理」じたいの問題とつながっていると思う.

  • 【特集】反出生主義を考える

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著者プロフィール

1958年高知県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得退学。大阪府立大学にて、博士(人間科学)。東京大学、国際日本文化研究センター、大阪府立大学現代システム科学域を経て、早稲田大学人間科学部教授。哲学、倫理学、生命学を中心に、学術書からエッセイまで幅広い執筆活動を行なう。著書に、『生命学に何ができるか――脳死・フェミニズム・優生思想』(勁草書房)、『増補決定版 脳死の人』『完全版 宗教なき時代を生きるために』(法藏館)、『無痛文明論』(トランスビュー)、『決定版 感じない男』『自分と向き合う「知」の方法』(ちくま文庫)、『生命観を問いなおす――エコロジーから脳死まで』(ちくま新書)、『草食系男子の恋愛学』(MF文庫ダ・ヴィンチ)、『33個めの石――傷ついた現代のための哲学』(角川文庫)、『生者と死者をつなぐ――鎮魂と再生のための哲学』(春秋社)、『まんが 哲学入門――生きるって何だろう?』(講談社現代新書)、『生まれてこないほうが良かったのか?』(筑摩選書)ほか多数。

「2022年 『人生相談を哲学する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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