時のかけらたち

著者 :
  • 青土社
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本棚登録 : 104
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791756469

作品紹介・あらすじ

靴底を通してのぼってくる、あの舗石の感触は、私に生きることの力を教えてくれる-。遠い石造りの街で出会った人々の思い出に寄り添いながら、ヨーロッパ精神の真髄を描く、著者、最後のエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 須賀敦子さん最後のエッセイ集。彼女は昭和4年生まれ、大学卒業後パリに留学、帰国後今度はイタリアに約12年滞在。夫が亡くなって数年してから42歳のとき帰国。随筆家としての活動は60歳ごろからになります。

    彼女のエッセイ集は5冊と、何冊かから選んで編集された「こころの旅」を読みました。5冊が身近の人々中心に書かれているのに対し、この本はイタリア(一部フランス)の建物・道路・水道橋・階段・彫刻・絵などを通して、関わった人々・詩人・画家等について語ります。

    ほとんど最後のほうにハドリアヌスと墓について語っていたのが興味深いです。おそらくその二年後に亡くなるとは思っていなかったでしょう。
    終わりにいくにしたがって知的な内容がどんどん増えていくの感じ、きっと日本の人たちに伝えたいことがまだまだたくさんあったのだろうなあと思いました。
    詩については本ではなく彼女の声で聞かせてほしかったです。

  • 初めて読んだ須賀敦子さんのエッセイ。今読んでも古くならず、瑞々しい文章に彼女の思想が溢れだしている。慎ましく、謙虚に、長い時代を超えて残っているものに対して敬意を払い、考えると同時に感じることで初めてアウトプットにつながる彼女の作風は、やはり作家が書くエッセイだからのだろうか。
    異邦人として感じる歴史と、その土地の人間に溶け込んでいる歴史にはやはり違いがあるわけで、人との交流や文学、自分で何度も尋ねるなど行動力と好奇心でその「深サ」に触れていく。
    きっと僕がイタリアに行ったり、イタリア語を学んでいたり、芸術にもっと触れていれば、きっと彼女の最後のエッセイをもっと楽しむことはできたのうだろうが、残念ながら彼女の感じたこと、阻害感、それゆえの人の暖かさ、誰もを平等に受け入れる古代からの建築の素晴らしさは、文字通り、文字を読んで感じることしかできなかった。さらに独特の宗教倫理・ラテン語(ラテン語を並列に並べる僕もいかがと思うが)など、変えようのない歴史の重みが僕には、もっと楽しめることがあるのでないかと思わせた。それはきっと、彼女が見たもの、行ったところで、自分なりに勉強してどう感じるかがわからないと行けないのだと思う。
    彼女も一度日本に帰ったあと、ローマに行くのに3年かかった。シンプルに暮らし、爪先に火を灯すような生活をするつもりはないけど、シンプルに生活することで3年後、ローマに立つことを夢見て。彼女ほどの人間が3年かかるローマの道は果てしなく長いが、今この一歩からスタートする。
    彼女の早く終わりすぎた人生は恵まれていたかはわからないけれど、一種普遍性をもつ、冷静で論理的で、なおかつ感情を揺さぶられるイタリアの建造物のように荘厳でいつまでもそこにある、ということが大切だ。きっとこの本を読んで詩や建築や彫刻を目指そうとする人がいるかもしれない。そんなきらきらしたきっかけは、時間のかけらが積層してできた大きな聖堂のようにひっそりと埋まっている。

  • 2013/2/27購入

  • 2000年以来の再読

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