つぶやきの政治思想: 求められるまなざし・かなしみへの、そして秘められたものへの
- 青土社 (1998年12月1日発売)
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感想 : 2件
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- Amazon.co.jp ・本
- / ISBN・EAN: 9784791756841
作品紹介・あらすじ
傷つけられた人びとの記憶と証言をめぐる政治的エッセイ。でありながら、忘れられない、語れない何かをみつめるために、ここでは日本語がかつてない官能をおびる。知性と感情、具体と抽象、普遍と特殊、支配と従属、男と女…あらゆる対立を、決して超越的に乗り越えることなく、みつめつづけることによってその関係を変えていってしまうような、そんな思想の萌芽が息づく。
感想・レビュー・書評
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aus Pflicht.
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身体的経験を伴った《記憶》は、簡単に忘れることはできない。しかし、またそれは、経験した本人にしか分からない感覚である。いじめれた人はどんなに些細なことでも忘れずにいるが、当のいじめた本人は、そんなことはサッサと忘れてしまうだろう(これはイグザンプルでもあり、また、メタファーでもある)。そんなことをいつまで……と、彼らは言うが、「そんなこと」の重さなど当事者にしか分からないのだ。記憶から連続した現在に生きる人々に、私たちは、「憎しみの連鎖は断ち切らなければならない」と、どこまで胸を張って言えるだろうか――そう慮(おもんぱか)る、人の《痛み》を推し測る力こそ、私たち現代人が《生》の中で損ない続けているエッセンシャルなモノなのかもしれない。先生のエッセイは、そんな「つぶやき」を私たちに投げかけているのだろう。
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