エリス島物語: 移民たちの彷徨と希望

  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791758531

作品紹介・あらすじ

飢えや迫害などの苦難を逃れ、「自由の国」アメリカにやって来た移住者の語られざる試練の体験を照らし出す、異色のドキュメンタリー・ノヴェル。

感想・レビュー・書評

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  • 1892年-1924年に西側諸国からアメリカ入国をする際に、入国管理を行なった舞台「エリス島」と、イタリア人・ユダヤ人の入国体験を綴った一冊。

    わずか30年ほどで1600万人が踏んだその島の思い出をまとめており、個別詳細な記述が勉強になった。
    多少インタビューの偏りはあるのかもしれないが、当時の西側諸国からの移民がアメリカの自由さに希望を持つ背景は祖国の政治状況の悪化が大きなプッシュ要因となっていたこと、兵役拒否を理由に渡米する人が一定するいたということ。
    そしてこれだけ大量の人を選別し審査するために非常に機械的・非人道的な手法が採られていた。

    一方で一度入国をすれば現地人コミュニティの協力がありなんとか食いつなぐことができたが、次には過酷な労働環境という試練があり、皆ストライキなどの労働闘争を行うことで結果としてアメリカ社会を発展させていったのだと(行間から)思われる。

    入国管理においては現在アメリカだけでなく中東・アフリカの窓口になっているヨーロッパ、そして日本も大量移民の時代を迎えつつある中、どのような入国管理を行なっているのか、そしてそれが一個人に何をもたらすのか、について考えさせられる1冊だった。

  • エリス島は、マンハッタンの沖合にある、貧しい移民用のイミグレーションが置かれていた「涙の島」。また、G・ペレックは実験文学集団OULIPOの中核メンバー。ここでは映画監督のR・ポールとともに、エリス島を回顧するドキュメンタリー映画を製作。その書籍版が本書。「今、何故エリス島か?」の問いには、やはり彼らの共通する出自―すなわちユダヤ人であることが深く関わるだろう。ヨーロッパのいずれの地にいても、ドイツ人でもなく、ポーランド人でもなかった彼らユダヤ人にとって合州国は、新天地だったのかを深層から問うのである。

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著者プロフィール

1936年生まれのフランスの作家(両親はポーランド系ユダヤ人で、第二次大戦中に死去)。パリ大学、チュニス大学の文学部で学んだ後、国立学術研究センターに勤務。1965年、ヌーヴォー・ロマンの手法を駆使して消費社会の空しさを暴き出した処女作『物の時代』でルノドー賞を受賞。以後、大胆な実験作を次々と発表して注目を集め、1978年には大作『人生使用法』にメディシス賞が与えられたが、1982年、46歳の若さで病没。広範な視野から現代世界を鋭く抉るその前衛的作品群は、文学の新たな可能性をひらくものと評価されている。日本文学にも関心を寄せていたことは、本書中の『枕草子』からの引用においても示されている。邦訳作品に『眠る男』(海老坂武訳、晶文社)、『物の時代』『小さなバイク』(弓削三男訳、白水社)、『人生使用法』(酒詰治男訳、水声社)などがある。

「2000年 『考える/分類する 日常生活の社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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