日本フリージャズ史

著者 :
  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791759569

感想・レビュー・書評

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  • 舞踏と並び日本で開花したフリージャズ。その歴史を知ることのできる貴重な作品。

  • 2016/3/26購入

  • ★60年代 富樫雅彦と唐十郎と足立正生を新宿の三大天才と呼ぶ



    石原慎太郎・裕次郎兄弟に津川雅彦や北原三枝の若さが弾ける『太陽の季節』の続編、中平康の映画『狂った果実』(1956年・原作/石原慎太郎)が50年代末からのフランス・ヌーベルバーグの俊英トリュフォーに多大な影響を与えたことはよく知られていますが、1960年代後半、疾風怒濤の時代に先鋭的に突出した日本フリージャズ=山下洋輔・富樫雅彦・阿部薫・近藤等則なども、世界を牽引した独自の表現でした。

    本書はその初期から現代に至るまで、ともにミュージシャンと格闘して常に開拓の先頭に立ってきた副島輝人が激白する、当事者でしか書けない貴重な記録で熱く演奏した前衛たちの軌轍です。

    中でも私にとって忘れられないひとり、日本のフリー・ジャズ・シーンを牽引し駆け抜けた富樫雅彦は、存命なら今年で72歳、1940年3月22日に東京で生まれましたが、残念ながら2007年に67歳で亡くなったジャズドラマー、ジャズパーカッショニスト。

    遅れてきた世代の私たちは、天才的な演奏者を目の当たりに出来ない不幸に見舞われているのはこれはどうしようもないことなのですが、伝説のテナー・サックス奏者の武田和命も、革命的アルト・サックス奏者の阿部薫も、そしてこの天才の名をほしいままにした富樫雅彦も、実際に目の前で聞くことが出来なかったことは悔しさを通り越して無念とさえいえます。

    そしてその無念という言葉は、私の場合に二重の意味で使わなければならないものなのです。というのは、とても恥ずかしい話なのですが、1970年に事故で下半身不随になった富樫雅彦が、1年半後に奇跡的な復帰を果たして佐藤充彦らと結成したJJスピリッツの1994年の演奏を、実は幸運にも中学生の私は新宿ピットインで目の前にしていたのですが、連日の徹夜読書のために、たぶんその時はトーマス・マン『魔の山』だった記憶がありますが、とんでもない睡魔に襲われて爆睡してしまって、せっかくの大音響のガンガンのエネルギッシュな演奏を、まったく聞くことができなかったのでした。
    この千載一遇のチャンスを逃したことは、本当に返す返すも残念で仕方ありません。

    思い出したら、また悔しさが蘇ってきて涙が出てきました。

  • 当事者たちの貴重な証言の数々は非常に興味深くて、最後まで飽きませんでした。
    日本独自のフリージャズ解釈が生まれた謎の一端が垣間見えたような気がいたします。

  • 非常に貴重な、日本におけるフリージャズの歴史と変遷。
    富樫雅彦・高柳昌行・山下洋輔・阿部薫らの
    陽と陰が克明に記録されている。
    資料として一読の価値あり。

  • 貴重なドキュメント。それぞれの時代に目配り聴いた、みごとな日本フリージャズの概論になっている。
    もっと当時の音楽風景を読みたくなる。続編を切望。

  • 日々実験的な音を産み出そうとする若き日のジャズメンたちの熱気が読んでて伝わり息苦しさに押しつぶされそうになる。
    演る方も聴く方もギラギラした真剣勝負、この時代の空気を体験できなかったことが非常に悔やまれる。

  • 著者は、日本フリージャズ創世記、60年代からの今日のポップ・アヴァンギャルドに至るまでの、前衛ジャズの「歴史」を「運動」の参加者の観点から実作者に時には厳しく、又著者副島が参加者、運動者であるが故の愛着を持って実作者の活動とその音楽に対する姿勢を記述している。■実作者たちとの交流と彼らのプロデュースを通じた自らの半生記にもなっており、その記述は暖かく、正鵠を得ている。ドイツのメールス祭―――前衛ジャズ祭―――に日本のフリージャズを積極的に紹介し、縦横無尽に奔走し、日本ジャズの卓越性を海外にまで広げた功績は、すばらしく、また彼には批評家を超えた容喙することの無い寛容が宿っている。■副島は、とかく前衛評論家にありがちな、観念的なもの達だけを、自らの嗜好的価値に沿って取り上げるだけではない。その守備範囲は広く、唐十郎から詩人吉増剛三、舞踏家土方撰、田中泯にまで及ぶ。90年代ジャズまで取り上げられており、現在の実作者の動きまでが取り上げられている。それらは乱立と混沌の状況だが、それこそが現代ニュージャズの動きが健在であることの立証にもなっている。音楽情報収集について、怠慢な筆者は、ご多分に漏れず「日本」のジャズが、これほどの評価を「海外」で持っているとは、知らなかった。これほど多くの者たちが、今現在活躍しているということも知らなかった。その意味では、貴重な情報的啓蒙とも筆者にはなった。■フリージャズというより、日本前衛ジャズは、「表」の文化規範となりえてないという意味でアンダーグラウンド・ジャズといった方がいいのかもしれない。期せずして2003年に60年代から70年代までのニュージャズを再発行している。聞きもらした「熱き」時代の音楽の一端を、聞けるのもうれしい知らせだ。
     ■採り上げている実作者は、かなり多く、めぼしいところを取り上げれば以下の通りである。
    山下洋輔、坂田明等の意気のいい演奏家を旗頭に、富樫雅彦や佐藤允彦といったクラッシク的観念性、硬質感のあるものから、高柳昌行のギターを破壊した音響としての「現代音楽」、演歌をも楽しむというフリージャズの猛者、現在活躍中の「渋さ知らず」―――海外ツアーのプロデュースを副島は手がけている―――の不破大輔まで取り上げられており、「いま」の状態を知りたいものにもいい手助けにもなるノートにもなっている。

  • 「史」というには副島氏の個人氏的色彩が濃いが、臨場感があることは確か。学生運動・労働運動の添え物としてしか語られてこなかった日本のオリジナル・ジャズの歴史が活き活きと描かれている。ディスクガイドにはならないけれども、リアルなジャズはライヴの現場で起きているのだ。

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