聖母のいない国

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  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791759620

感想・レビュー・書評

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  • 実現すべき自己など持たぬ人が大多数

  • 著者は比較文学者ということで、タイトルから、日本文学と欧米との比較だろうと推測して読みはじめましたが、純粋に北米に対象を絞った文学論となっています。
    この著者の文章を読むのは初めてで、舌鋒鋭い書きっぷりにはじめ抵抗を感じましたが、読み進んでいくうちに多少はなじんできました。
    ある意味、小気味良くはありますが、作家と批評家の間には大きな溝があるのだとわかる反面、作品から距離をおいたところから述べている考えは冷静で、距離がなければ批評ができないのは事実だとも思います。

    『風と共に去りぬ』が「大衆小説」扱いされることを前から不思議に思っていましたが、フェミニズム的観点からの説明がなされていました。
    『大草原の小さな家』は、子供の頃に好きな物語でしたが、シリーズの中で読んでいなかった『農場の少年』の主人公アルバートは、インガルス家の養子になったものの、コカイン中毒になったりした挙句、白血病で死んでしまうと知りました。
    子供の頃に知ったらショックを受けたことでしょう。
    『トム・ソーヤーの冒険』の「グッド・バッド・ボーイ」についての論考は、なるほどとわかりやすく読みました。

    原作を持っていながらなんとなく読み進められずにいたヘンリー・ジェイムズの『エイジ・オブ・イノセンス』の解説もあり、その読みづらさが漠然ながら理解出来ました。
    やはり文学は、物語のバックボーンや風土を理解してこそ楽しめるものだとの再認識に至ります。

    この映画化の話から展開された、伝統的にブロンド女性が聖女的、黒髪の女がファム・ファタール的な意味を持っていたとの記述が意外でした。『風と共に去りぬ』のスカーレットが黒髪で、貞淑なメラニーが金髪だったことにつき、確かに前々から不思議に思っていましたが、これで納得がいきました。
    ハリウッドが金髪にセクシーさを加えたため、イメージが180度変換されたのだそうです。

    村上春樹とアーヴィングの作品類似点が挙げられており、それらが全て、私が村上作品で苦手に感じる点だったため、村上作品と言うよりはアーヴィング作品が苦手だということに気がつきました。
    とすると村上作品の特色はなんだろうと、新たな疑問も湧いてきます。

    アメリカ文学はおおまかな理解しかできていませんでしたが、文学紹介とは違う文芸批評のアプローチが興味深かったです。
    最後まで読んで、結局聖母の話が登場しなかったと思ったところ、仮題の「アメリカ小説を読む」では味気ないというのでとっさに着けたタイトルで、本文とは関係がないとあとがきにあり、気が抜けました。

    激しさの見える文章と断定の強さに最後まで圧されて 個人的にはあまり馴染めませんでしたが、その分刺激が多く、気づきの多い作品論でした。

  • 「”赤毛のアン”」という邦題をアンが聞いたら嘆き哀しむだろう」と書いている所が一番好きかもしれない。ファンの人たちもそう思っているのでしょうか?

    アメリカ小説のガイドブックと書くにはちょっともったいない刺激になる批評。結構面白い。「もてない男」よりずっと楽しめた。あ、でもヘミングウェイについては疑問が残るなあ。

    この作者さんは何か特定人の本や芝居をハマり続けることが出来ないという。
    それって愛好家にはなれないけど、冷酷(冷静)な批評家にはもってこいの性質なんではないかと思う。(実際、そうでらっしゃるし。)
    どんな作家や舞台でも常に高水準を保っていられるはずもなく、でもそれを愛好家としての目がゆるく見てしまうと正しい批評にはなりにくいと思うから。
    自分の好きなものをけなされるとイヤなくせに、他人の好きなものを平気でけなす人がいる。
    普段は冷酷な批評をするのに、自分の好きなものとなるとベタ誉めって人がいる。
    そういう人は愛好家でいた方がいいと思う。頼むから。でもファンがダメにするetcてのもあるよね。

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