戦後日本のジャズ文化: 映画・文学・アングラ

  • 青土社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791762019

作品紹介・あらすじ

戦後文化に刻まれたビート。黒沢明、裕次郎、そして若松孝二からアニメまで。五木寛之、倉橋由美子、中上健次、平岡正明、筒井康隆、村上春樹、そしてジャズ喫茶からジャズ革命論まで。ジャズはいかに受容され、いかに多くの表現者たちの源泉となってきたか-。日米のジャズ、文学に通暁するこの著者にしか書けなかった、異色のジャズ文化論書き下ろし。戦後カルチャー論の空隙を突く野心作。

感想・レビュー・書評

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  • 戦後の日本のカルチャーとジャズとの関わりについて。特に文学とジャズの関わりについて。

  • 前半は、映画(黒澤明「酔いどれ天使」、裕次郎「嵐を呼ぶ男」)、小説(五木寛之「さらばモスクワ愚連隊」)等がジャズから種々の影響を受けて創作されたことを、具体的に面白く書いてある。戦後の多くの文化人がジャズの影響を受けた。また一度限りの即興性をもつジャズ演奏とは対極になる、レコードによるジャズ喫茶に関する論考も日本的で面白い。しかしジャズを知らない私は徐々に疲れて、226頁で中断。

  • ジャズ好きな外国人がジャズを通してみた戦後日本の昭和史だ。よくここまで調査した。賞賛に値します。

  • 最近、ジャズを聴く事が多い。好きな音楽はいろいろあるのだが、定期的にジャズが聴くものの中心になる。単なる気分なのか。今度の場合、リスニング環境が最近すこし変って、ジャズ以外の音楽が今ひとつうまく再生できないというのもありそうだ。

    いずれにせよ、フリージャズ的なものを中心としながらジャズを聴くと、なんだか時代錯誤な感じがしてくる。もちろん、フリージャズを「これが最先端だ」なんて思って聴いているわけでなくて、単にその辺が個人的に聴いてて面白いから聴いてるだけなんだけど。

    なんてことを思っているうちに、「日本におけるジャズの受容の歴史」みたいなことが気になりだし、この本を手に取ってみた。

    まさに戦後の日本文化に対してジャズの担った役割とその変遷というのが、うまくまとめてあると思う。五木寛之の初期のジャズをテーマにした小説の分析は的確だし、ジャズの精神であるはずの自由に反するジャズ喫茶の抑圧的なルールみたいなのも面白い。また、ジャズ評論家として相倉久人や平岡正明に言及しているも実に鋭い。最後のほうで、やっぱりこの人に出てもらわなきゃな村上春樹もちゃんとでてくる。
    個人的には植草甚一について1度ちょっと触れる程度でまとまった言及がないのは、すこし寂しかったが。。。

    いずれにせよ、一番面白いのは、60年代~70年代前半という日本でのジャズ文化全盛時代の分析で、当時の様々なカウンターカルチャーや政治状況と絡みつつ、多分に観念的なものとして、先進的な若者の必須科目としてジャズがあったということ。

    つまり、絶えず進化しつづける自由な音楽、体制に対する抵抗の音楽として、ジャズが聴かれていたということである。そのこと自体は必ずしも間違いではないのだが、それが、教養主義的、教条主義的な日本的なジャズの聴き方を生み出したわけだ。

    そして、そうしたイデオロギーから解放されて久しい今、ジャズを聴く人は多くない。が、喫茶店やレストランのBGMを通じて、限りなく日常的に消費され続ける音楽となっているわけである。

    というなかで、私は、ornette coleman, eric dolphy, don cherry, art ensemble of chicagoみたいないわゆるフリージャズを今ただ音楽としての面白さのみから聴いているわけだが、なんだかやっぱり変な気持ちになるな。

  •  1960年代に渋谷や新宿あたりの薄暗いジャズ喫茶に入り浸り、マイルスやコルトレーンを聞いていた人間には堪らなく懐かしさを覚える本である。無定形なエネルギーが狂ったように渦巻いていた時代だからこそ、妙にストイックな空間が生まれたのかもしれない。

      ジャズ喫茶はお話するところではありませんよ。‥‥
      アベックで来るなどという不謹慎は許しませんよ。‥‥
      リクエストは‥‥タイトルが間違っていたらかけませんよ。‥‥
      このレコードのA面はよくないからB面しかかけませんよ。‥‥
      本はなるべく読まないでほしいけど、
        どうしてもというなら、単行本にして下さいよ。‥‥
      新聞はガサガサいうから勘弁して下さいよ。
      原稿書きはもってのほかですよ。‥‥
      サングラス、ハラマキ、ステテコは入場お断りですよ。 (本文p.192より)

     当時はこんな掟を当然と思って毎日のように通っていたわけだが、これで商売がやっていけたのだから、まるで夢のような時代である。
     さらにはそんな時代を蘇らせてくれたのが、みずからジャズ・ピアノも弾くという戦後日本文学研究を専門とするアメリカ人というのだから、まさしくThings ain't what they used to be ! である。
     本書はイキのいいアメリカ人と戦後日本のジャズ文化が鎬をけずるジャム・セッションといえよう。

  • 外国人が分析する日本昭和アングラ文化本
    読み物としての面白さもあるが客観的評が個人的には凄く新鮮なモノでジャズ好き以外にも昭和文化が好きな人間には是非お勧めしたい1冊

  • 20100411朝日新聞書評

  • 社会学科研究室 764.7||Mo22

  • [文学賞情報]
    2006年 第28回 サントリー学芸賞・社会・風俗部門受賞

    [要旨]
    戦後文化に刻まれたビート。黒沢明、裕次郎、そして若松孝二からアニメまで。五木寛之、倉橋由美子、中上健次、平岡正明、筒井康隆、村上春樹、そしてジャズ喫茶からジャズ革命論まで。ジャズはいかに受容され、いかに多くの表現者たちの源泉となってきたか―。日米のジャズ、文学に通暁するこの著者にしか書けなかった、異色のジャズ文化論書き下ろし。戦後カルチャー論の空隙を突く野心作。

    [目次]
    第1章 自由・平等・スウィング?―終戦前後の日米ジャズ再考;
    第2章 大衆文化としてのジャズ―戦後映画に響くもの;
    第3章 占領文学としてのジャズ小説―五木寛之の初期作品を中心に;
    第4章 挑発するジャズ・観念としてのジャズ―一九六〇‐七〇年代ジャズ文化論(1);
    第5章 ジャズ喫茶解剖学―儀式とフェティッシュの特異空間;
    第6章 破壊から創造への模索―一九六〇‐七〇年代ジャズ文化論(2);
    第7章 過去の音楽へ―近年のメディアとジャズ文化

    もう少し若いときに出会いたかった
    面白い 良い

  • 戦後文化に刻まれたビート。黒沢明、裕次郎、そして若松孝二からアニメまで。五木寛之、倉橋由美子、中上健次、平岡正明、筒井康隆、村上春樹、そしてジャズ喫茶からジャズ革命論まで。ジャズはいかに受容され、いかに多くの表現者たちの源泉となってきたか―。日米のジャズ、文学に通暁するこの著者にしか書けなかった、異色のジャズ文化論書き下ろし。戦後カルチャー論の空隙を突く野心作。
    (「BOOK」データベースより)

    資料番号:010820272
    請求記号:764.7/モ
    形態:図書

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著者プロフィール

1956年生まれ。シカゴ大学大学院東アジア言語文明学研究科博士課程修了(Ph.D.)。現在、早稲田大学教授。専攻は日本の戦後文化史、日本近現代文学。
著書に、『戦後日本のジャズ文化』(青土社、サントリー学芸賞受賞)、『ジャズ喫茶論』(筑摩書房)、『日本の居酒屋文化――赤提灯の魅力を探る』(光文社新書)などがある。

「2016年 『日本文化に何をみる?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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