ソナチネの木 新装版

著者 :
  • 青土社
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本棚登録 : 118
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (50ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791762842

感想・レビュー・書評

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  • 岸田衿子さんの4行詩が50編。そこに安野光雅さんの絵。
    行間からかすかな音楽が聞こえて来そうな美しい詩集でもあり、古代文字と壁画のような絵は黄ばんだ紙に描かれ、うっすらと楽譜が透けて見えてなんとも幻想的。

    どの詩にもタイトルはない。
    それぞれは繋がってるようで、繋がっていないようでもあり。
    記憶の欠片を拾いながら、パズルを丹念に合わせるようにゆっくりゆっくり読み進む。

    「小鳥が一つずつ
     音をくわえてとまった木
     その木を
     ソナチネの木 という」

    この4行で始まる。ここからすでに、心は本の中に旅に出る。

    「島に出会うたびに
     わたしはその島に
     じぶんを ひとりずつ
     おいてきてしまう」

    ああ、そう、そのつぶやきはおそらく私のものでもある・・
    砂に埋もれたまま久しく忘れていた面影が、懐かしくよみがえる。

    「なぜ 花はいつも
     こたえの形をしているのだろう
     なぜ 問いばかり
     天から ふりそそぐのだろう」

    テキストは時にぐにゃりと曲がり、絵の外に転がり出ていたり逆さまになっていたり。
    その装幀ごと、胸の奥に語り掛けてくる。
    ほらね、ここにあった。あなたの探していたものが。

    この本を開くと、はるかな国の青い海や草原を吹く風に出会える。
    遠くで鳴る鐘の音が聞こえる。アッシジのまひるの城跡に入り込める。
    今見えている日々とは、違う時間がここに流れている。

    暑さが和らぐ夕方、庭の片隅で風に吹かれながら読んだ一冊。
    読み終えてしまうのがもったいなくて、ひとつの詩を読むたびに眼を閉じ深呼吸をした。

  • 初版本を持っています。…当時、安野光雅さんの絵を、真似したりして……。 岸田衿子さんの詩の中では、 鳥につばさのあることがふしぎだ 卵から雛がかえる 親鳥になって卵をうむ そんなことよりも    とか  夏の日の てのひらに つめたかった鳥の羽  雪のふる日には ぬくもりがあった羽     とか、ああ、全部、すてきです。 始めて、自分で、買った絵本。

    • seiyan36さん
      おはようございます。
      思い出の本とのこと。
      「いいね」をして良かったです。
      著者の岸田衿子さん、きしだえりこさんと読むのですね。
      おはようございます。
      思い出の本とのこと。
      「いいね」をして良かったです。
      著者の岸田衿子さん、きしだえりこさんと読むのですね。
      2023/04/11
    • りまのさん
      はい。
      ありがとうございます。1981年8月10日発行の初版本で、私の宝物です。さっき本棚から取り出すときに、裏表紙を少し、破いてしまいまし...
      はい。
      ありがとうございます。1981年8月10日発行の初版本で、私の宝物です。さっき本棚から取り出すときに、裏表紙を少し、破いてしまいました。今から仕事に出るので、帰ってから修繕します。
      では、行ってきます。(*^^*)
      2023/04/11
  • あの野辺を歩いたのはだれ ほら狼と人間の足跡が並んでる
    4ッ足と2ッ足ーーそれらには5千年の隔たりがあるけれど
    1頭と1人は やっぱり仲良く並んで違うものを見てる
    一筋は川の畔へ もう一筋は岬に立ち止まりして

  • 季節や景色がめまぐるしくめぐる
    自分が自然と一体化したよう。

  • 宝石のように美しい本。すべてにおいて完璧☆特に、泣きたくなるくらい優しい響きの言葉、暖かみのあるベージュを基調とした光り輝くような絵、そして、本のサイズ(!)もこの作品にピッタリでお気に入り。

  • 読んでいて楽しいの?
    何か為になるの?

    と問われれば「特には…」と答えてしまうけれど、でも
    この本が本棚にあることで少し心が豊かになったりする。

    理解しようとするよりも、滲み出てくる雰囲気を感じる本。

  • 岸田衿子さんの詩に、案野光雅さんの絵がとっても合っていて素敵です。

    昔話の中だったり、海の上だったり、遠い異国の地だったり…。
    ふわふわと漂っている気分です。
    ずっとどこかでオルゴールが鳴っているような心地よさがありました。

  • やさしくてわくわくする詩なのに、なぜかかなしくなった

  • ふわっと優しい風が吹いた後の、静寂がよく似合う詩集でした。ありがたくもあり、寂しくもある孤独感がとても好きです。きっと、世界を愛しているのでしょうね。四行の詩の間から、ぼんやりと光るやわらかい情景が俄かに拡がります。それは草の匂いや水の匂いがたちあがったり、時には世界の音までもが聞こえてきたり、読むこと以上の体験です。そして、ここがいつもスタートラインではないかと思うんです。

  • うつくしい本です。

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著者プロフィール

1929年、劇作家・岸田国士の長女として東京府豊多摩郡に生まれる。立教女学院小学校、立教女学院女学校を経て、東京芸術大学油絵科に入学。1955年、谷川俊太郎の勧めで第一詩集『忘れた秋』を発表し、詩人としてデビューした。童話作家としても活躍し、1966年には画家の中谷千代子とコンビを組んだ『かばくん』でドイツ児童図書賞を受賞した。1973年、『かえってきたきつね』で産経児童出版文化賞大賞を受賞。

「2019年 『岸田衿子の詩による無伴奏男声合唱曲 うたをうたうのはわすれても』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岸田衿子の作品

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