アメリカ: 非道の大陸

著者 :
  • 青土社
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本棚登録 : 205
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791763047

作品紹介・あらすじ

未知の記憶を背負った人々の移り住む土地アメリカであなたを見舞う、数奇な出来事。旅する作家が切りひらく物語の新世界。

感想・レビュー・書評

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  • なんともつかみどころがない、手に取ればさらさら零れ落ちてしまう乾いた砂のよう。自信過剰のハリボテ、無機質な中心の外縁にある乾涸びた辺境に歪んだ異界への入口が薄ら浮かんでは消える。狂気の手前の諦念感が、悲しい笑いとなって響いてくる。遠く近く。マジョリティもマイノリティも全てが均一化され平たくなって崩れ落ちる。アメリカ。

  • 「あなた」とは誰だろう。著者の端正な語りはこの二人称で「非道の大陸」「アメリカ」という世界へと読者を誘導する。飛行機に搭乗して(という第一章を経て)ドライブするこの大陸は、それこそカフカの作品を思わせる微細な動作の描写でこちらを惹きつけ、筋なんてあるんだかないんだかわからないにも関わらずグイグイ読ませる。様々なところにこの主人公が見た(というか書き手によって誘導された「あなた」こと私たちが見た)世界の不条理に気付かされる。それらはスムーズな筆遣いの中に仕込まれたスパイスのようだ。なるほど美味なクセになる味

  • 著者と思しき主人公が「あなた」と呼ばれる、特殊な二人称作品。
    フィクションなのか判別つけ難く、創作だとしても不思議ではありません。
    「あなた」はアメリカ各地に滞在し、助手席に座り、人々と語り合います。

    NY、シカゴ、LA、ボストン、北東部国境近く、コネチカット、フロリダ、インディアナ、サンディエゴ、ペンシルバニア、ラスベガス、砂漠

    書き下ろされた終章は夢のような一編です。

  • レビューはこちらに書きました。
    https://www.yoiyoru.org/entry/2019/03/19/014724

  • アメリカの都市名は出てくるが現実離れしていて、人の名前は出てくるが章ごとに姿を消し。急に走り出したり裸だったりするのは演劇的でもあるし、印象として、晴れることのないハイウェイ、時々夜にはヘッドライトで行く道をさぐるという感じ。

  • まるで社会派ノンフィクションみたいなタイトルだけど、小説です。異国にいる主人公が二人称あなたで語られるあたり『容疑者の夜行列車』に近いテイストだったかも。

    全部で13章あるけれど、おそらく章ごとの「あなた」は別人。各章に共通の登場人物は出てこないし「あなた」の設定も微妙に違う。「留学生あるある」というか「旅行者あるある」というか、アメリカのどこかしらの土地で「あなた」は知り合ったさして親しくない相手とおもにドライブするはめになり、出会う相手はけして悪人ではないけれど、ちょっと変な人、ちょっと面倒くさい人だったりする。だからといって突拍子もない不条理ではなく、日常の延長上のちょっと理不尽な出来事が妙にシュールに感じられるような。

    明確に幻想的なのは最終章のみだけど、全体的に悪夢的。淡々としているのに妙に惹きこまれる。砂漠でサボテンを触ったらものすごくいっぱい棘がささってしまう「とげと砂の道」がなぜか好きでした。

    スラムポエットリー/鳥瞰図/免許証/駐車場/フロントガラス/きつねの森/マナティ/練習帳/水の道/馬車/メインストリート/とげと砂の道/無灯運転

  • 完全に小説である。車での移動で最後は空想になる。

  • かつて「ユリイカ」に連載されていた、アメリカの各地を舞台にした連作短編集。多和田葉子さんの作品は、これまで『犬婿入り』しか読んだことがなかったが、その時の印象とは随分と違っている。最終章の「無灯運転」だけが書き下ろしなのだが、こちらのシュール感はまさしく多和田作品と安心する。連載の短篇は作家自身が違ったタッチを試みていたのだろう。ロスやシカゴや砂漠の街と、アメリカ各地が舞台に選ばれ、「あなた」(それは読者である私でもあるか)が移動してゆくのだ。個々の作品も、そして全体としても"アメリカ"感が横溢している。

  • 広くて人が少なくて、殺伐としていて…
    外国人から見たアメリカって、そうそう、こんな感じ!
    っていう感じでした。

  • 物語が「あなた」といういろいろな人で語られる。
    はじめはとても違和感があり、読み進めにくいけれど、
    なれてくると大丈夫。
    ちいさないろいろなストーリーがひっそりとあって、
    どの物語も特別なようで普通な話。

    いい話でも悪い話でもないけれど、
    アメリカを旅して出会った人々とのことが書かれているので、
    静かに、一緒に車に乗っているような気持ちになる。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。小説家、詩人、戯曲家。1982年よりドイツ在住。日本語とドイツ語で作品を発表。91年『かかとを失くして』で「群像新人文学賞」、93年『犬婿入り』で「芥川賞」を受賞する。ドイツでゲーテ・メダルや、日本人初となるクライスト賞を受賞する。主な著書に、『容疑者の夜行列車』『雪の練習生』『献灯使』『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』等がある。

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