異郷日記

著者 :
  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791764075

作品紹介・あらすじ

ニューギニアにはじまり、キューバ、中国、バリ、ソマリア、そして三鷹…その場所で生活する人々の息づかいが、流れゆく悠久の時間をも感じさせ、あたかもその場にいるかのように、われわれを異郷へと誘う。日本を代表する文化人類学者が、情感溢れるエピソードと写真で綴る13編の異郷案内。

感想・レビュー・書評

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  •  ほかの本を探しているときに見かけ、気になって購入。言語学、文化人類学の調査で世界各地で調査を行ってきた著者の、専門書ではなく、仕事を離れての旅を中心に綴った紀行文。冒頭『物心がついた頃から、自分は異境にいるのだという感覚が、わたしにはいつも付きまとっている。「わたしにとって、自分の皮膚の外側はすべて異郷だ」と、こんな言葉を機会あるごとに口にしてきた。』という一文から始まる子供時代のエピソードでは、人に囲まれる中でこそ孤独感をおぼえ、周囲との間につくった壁を崩さずに生きてきたと振り返る。『わたしの場合は、世間に歩調を合わせるよりは、余所者の目で周囲を観察したりするほうが、ずっと性に合っている。』といい、語学を学び始めたのも、国際情勢などに興味があったわけではなく、子供のころに虫や鳥や小動物に憧れて『本気で動物になりたいと願』ったのと同じ気持ちの延長上に、奇妙な外国語を話す人々の背後にも、『わたしには想像も出来ない未知の世界が隠されていると思った』からだと明かす。複数の大きく異なる言語の話者が出会ったときに生まれるクレオル語のことをはじめ、世界各国の人々の暮らしの風景と生活の知恵など、気になるエピソードが多数。1960年代のソマリアで、国内で話される言語はほぼソマリア語ひとつだというのに、文字がなかったために地域によって英語、イタリア語、アラビア語と読み書きの言語がばらばらで、郵便局の前に翻訳屋や代筆屋が並んでいたというくだりが印象に残った。言葉や文化に興味のある人は読んで楽しいと思う。

  • 日本を代表する文化人類学者である著者の、様々な場所での滞在中の出来事を記した本。すうっと文章が体内に滑り込んでくる。静かで優しい。

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著者プロフィール

1937年東京生まれ。言語学・文化人類学専攻。現在、早稲田大学文学部教授。卓抜した語学の才能に恵まれ、言語調査のフィールドは世界各地に及んでいる。フィールドでは、たんに調査するのではなく、人びとの暮らしぶりに等身大のまなざしで接する経験は多くの優れたエッセイに結実している。『花のある遠景』や『異郷の景色』『東京のラクダ』などはその代表作であり、ほかに『人かサルかと問われても』という半生記がある。

「1999年 『風に運ばれた道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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