選挙のパラドクス―なぜあの人が選ばれるのか?

  • 青土社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791764150

作品紹介・あらすじ

選挙で候補者が3人以上いると、ときに、多くの人が望んでいなかった、とんでもない候補が選ばれることがある。真に民主的な投票は論理的に不可能-ノーベル賞受賞者アローの「不可能性定理」を覆す道はないのか。ゲーム理論、社会的選択理論などの知見を総動員し、アメリカ史上の突飛な投票結果を実例に、様々な投票方法の驚くべき落とし穴を明快に解説したうえ、投票者を最も満足させる意外な方法にたどりつく、知と論理の極上エンタテインメント。

感想・レビュー・書評

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  • いろいろな選挙制度について最近の学説も踏まえて、わかりやすく説明してある作品。

    相対投票制度ではスポイラー(票割れ)により意図しない候補者を当選させる。ことができる。

    単記移譲制度(IRV)からボルダ式得点法、コンドルセ投票など。
    単記移譲制度(IRV)において最下位の候補者にライバルを入れることで蹴落とすことができるなど、問題もある。

  • ふむ

  • プロローグ
     親ナチか腐敗政治家か-ルイジアナ州知事選で有権者が迫られた究極の選択

    第1部「問題」
    1.ゲーム理論
     ゲーデルとヒトラー。フォン・ノイマンの核抑止研究とアローの「投票のパラドクス」。
    2.ビッグ・バン
     公正な選挙はありえない?アローの不可能性定理が民主主義の理想に与えた衝撃。
    3.票割れ小史
     リンカーンからブッシュまで、二番人気の候補たちが大統領になれた仕組みを解明する。
    4.アメリカで最も邪悪な男
     「不可能性」につけこんで選挙を牛耳る政治コンサルタントの驚くべき手口。
    5.ラン、ラルフ、ラン!
     ゴアの票を食ってブッシュを当選させた急進派ラルフ・ネーダーの影の応援者たち。
    6.スポイラーの年
     2005年、共和党が急進派を、民主党が超保守派を応援しはじめた理由とは。

    第2部「解」
    ・相対多数投票以外のさまざまなシステムを検討
    7.キリバスのトラブル
     票割れを防ぐために考案されたボルダ式得点法、コンドルセ投票にひそむ意外な弱点。
    8.新しい鐘楼
     ルイス・キャロルが「アリス」の父の建てた鐘楼に対抗して考案した投票法の数々。
    9.即時決選投票
     現行システムより優れているはずの投票方式が抱える「勝敗逆転のパラドクス」。
    10.循環なんてこわくない
     通過確実の学校法案を葬った循環のパラドクスは、民主主義をすべて無意味にするのか。
    11.バックリーとクローンたち
     似た者同志の票の食い合いで最悪の候補が当選した。これを防ぐ是認投票の歴史と現在。
    12.バッド・サンタ
     北国のこわもて老教授が指摘する是認投票の悪夢-ミスター凡庸が大統領になる!
    13.ラスト・マン・スタンディング
     すべての一騎打ちを勝ち残ったコンドルセ投票の勝者は、ほんとうに勝者といえるのか。
    14.ホット・オア・ノット?
     異性の「ホット」度を評価するサイトの「範囲投票」こそ、投票者を最も満足させる。
    15.出席すれども投票せず
     候補者をランク付けせずに評価する範囲投票がアローの「不可能性定理」の盲点を突く。

    第3部「現実」
    16.民主主義の未来の姿
     範囲投票も、最有力の代替案「即時決選投票」ですら採用されにくいアメリカの事情。
    17.ブルーマン大当たり
     民主党を与党にした保守派の青い男。こんなことを繰り返さないために何ができるのか。

  • 選挙のパラドクス―なぜあの人が選ばれるのか?
    (和書)2011年01月13日 21:08
    ウィリアム パウンドストーン 青土社 2008年6月25日


    柄谷行人さんの書評を読んで面白そうなので読んでみました。

    想像以上に面白い内容でした。

    オススメします。

  • 普通の相対選挙で生じる票割れ、スポイラーの存在と、それを防ぐために考案されたいろいろな選挙方式、それに対する支持と反対など。
    知的におもしろい

  • 思索

  • 2520円購入2010-01-21

  • 図書館

  • うん。これもいい本。
    厚さに比例しないほど、すいすいいける。

    選挙ってあくまで一つの手法に過ぎない。
    公平公正で、絶対的に正しい手法のような認識は
    やはり改めるべきなんだと改めて実感させてくれる。

    思い出したのは、中学時代の学級委員の選挙。
    あの頃、自分や友達がいろいろ頭をひねって、誰かを
    はめたり、逆に防衛戦を仕掛けたり。
    それを洗練させた姿を見た。

    きっと、政党ではこんなことも研究しているんだろうね。

  • [掲載]2008年9月7日
    [評者]柄谷行人(評論家)
    ■民主主義を実現する投票制度とは

     民主主義は選挙による多数決の支配である、といわれる。しかし、民主主義は一つではないし、選挙システムも一つではない。さまざまな選挙システムは、それぞれ政治形態をも決定する。たとえば、アメリカのように勝者総取りシステムである相対多数投票の国では、二大政党制になりがちで、比例代表制の国では多数の政党が林立する傾向がある。また、近年の日本では、小選挙区と比例代表制の採用が、政治家のあり方をかなり変えてしまった。

     本書は、アメリカの選挙制度を検討しつつ、さらに、もっと原理的に投票システムを検討しようとするものである。アメリカの大統領選挙では、スポイラー(有力者の票を食う候補者)が問題となってきた。たとえば、2000年の大統領選挙で、環境問題を唱えた民主党のゴアが、緑の党のネーダーが立候補したため、共和党のブッシュに僅差(きんさ)で敗れた。しかし、このような例は偶発事ではない。これは根本的に、「相対多数投票制度」につきまとう問題なのだ。

     たとえば、3人以上の候補者がいるとき、その中で、意見が似ている候補者らに票が割れ、どちらも落選してしまうことがある。つまり、意見としては多数派なのに、少数派に負けてしまう。この種の「投票のパラドクス」は、18世紀にコンドルセによって発見され、20世紀後半アローによって、もっと一般的に定式化された。これを避けようとして、さまざまな工夫がなされてきた。比例代表制をはじめ、選好順位によって違った得点を与える各種の方法などが提案されてきた。しかし、どのような方法も「投票のパラドクス」を超えるものではなかった。

     本書にはその歴史的経緯がわかりやすく書かれている。著者は今後に、よりよき投票システムが得られるという希望を捨てていないようだ。だが、「投票のパラドクス」は民主主義の「致命的欠陥」だろうか。むしろそれは、民主主義の核心が投票システムなどに還元できるものではないということを、逆説的に示しているのではないか。
     GAMING THE VOTE、篠儀直子訳/William Poundstone 米国の科学ライター・コラムニスト。

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