貧困と思想

著者 :
  • 青土社
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本棚登録 : 70
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791764617

感想・レビュー・書評

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  • 戦前の軍国少年時代から2008年当時までの吉本隆明の思想遍歴について、晩年の本人へのインタビューを通してふりかえる。
    かつて戦前の価値にそまりきっていたことを深く認めるが故に、そののちはイデオロギーや党派性を排除し、自らの力で徹底的に考えることを模索してきた様子を垣間見られる。特に丸山真男ら戦後民主主義の旗振り役を露骨にこき下ろしている理由は、彼らの戦前の不作為を棚に上げたスタンスに嫌悪を抱いているとともに、戦後に屹立した自明な価値やその自明さが振りかざす権力に対する積極的な懐疑でもあるように見える。
    意識的にまた、無理やりに自らの言葉で語るためか、熱っぽく語るわりに読んでいて意味がよくわからない箇所がある。特にオウム真理教の麻原とのテレパスのくだりなど。冗談にみえて本気ぽい。そんなところも含めて吉本隆明なのでしょうか。

  • とっかかりとして読むには戦後日本や近現代思想の知識が浅かったと反省。脚注や質問者のかみ砕いた語りがありがたかった。言語の本質、大衆のとらえ方、産業と精神病、宗教観、関係性などについて、戦争、戦後、冷戦、安保闘争、オウム事件、秋葉原事件などを俯瞰して論じている内容には驚くものがあった。

  • タイトルに期待して読むなら、一章の「『蟹工船』と新貧困社会」のみでも考えるヒントになる。
    二章は戦後のトピックについて述べている。必要になった時に一読する価値あり。
    脚注は充実している。
    三章は「難しくて易しい問題 関係とはなにか」のみ読了。「自分以外の人、あるいは集団との関係には、絶えず『控えねばならぬ問題』があるような気がします(175P)」の吉本の言葉には、公と私を分けるエッセンスが詰まっていると感じる。
    この辺りは斉藤純一『公共性』とも関連して考えることができる。

  • 吉本隆明氏の最後の書籍。語り口調で書かれ、読みやすい。前半は若者へ、孤独の時間を作り、内面の自分と対話しろとのメッセージが込められていた。また、産業革命後に肺結核が流行した事と、現代の精神病が増えている事を重ね、そこを専門家がちゃんと説明して、予防策を講じるべき時だと主張している。

  • 【読書リスト9】吉本隆明『貧困と思想』青土社。心に残ったのは「言葉はコミュニケーションの手段や機能ではない。それは枝葉の問題であって根幹は沈黙」「沈黙とは内心の言葉を主体とし、自己が自己と問答すること」思索の厚みの大切さであり、言葉で仕事をする専門職にとっても警鐘だと思います。

  • 吉本隆明が「貧困と思想」で嘆いた現代日本の現状

    不況不況の大合唱は鳴りをひそめたとは云え、先の見えない状況はいっこうに変わる気配など無い。数年前から小林多喜二の「蟹工船」のブームがさかんに取りざたされているのだが、かつて「蟹工船」が発表されていた時代に於ける新しい息吹きさえもが見えてはこないのである。見えているものと云えば、いまだ横行するリストラという名の不当解雇、ワーキングプアの増大、そして時代が共犯者となって引き起こされる大量の凶悪犯罪、等々といった暗澹たる世界。

    このような状況を目の前にして、思想家、吉本隆明氏が述べている言葉は、重くしっかりと状況を見据えている。「貧すれば鈍する」といった類いの浅薄な通俗論議とは、真逆の論調なのである。

    さて、同書の中で吉本氏は、現代文学の世界に於いて「蟹工船」を越えるくらいの作品が現役作家から生まれてこないことを嘆いていた。たしかにそうだろう。同様の思いは常々感じているところである。

    純文学作家たちが「文壇」という名の閉ざされた村社会で胡坐をかいている。そうした状況からは真に感動的な文学作品など生まれ得る余地など無いのかもしれない。誰が今の状況に突破口を開いて、あるいは描いていくのだろうか? はたしてそれは可能なのだろうか?

  • 言及してる事柄についての知識が少な過ぎて全くついていけなかった。
    10年後にもう一度読みたい。

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著者プロフィール

1924年、東京・月島生まれ。詩人、文芸批評家、思想家。東京工業大学工学部電気化学科卒業後、工場に勤務しながら詩作や評論活動をつづける。日本の戦後思想に大きな影響を与え「戦後思想界の巨人」と呼ばれる。2012年3月16日逝去。

「2018年 『吉本隆明全集 第16巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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