不可能を証明する 現代数学の挑戦

著者 :
  • 青土社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791765461

作品紹介・あらすじ

トポロジー・群・無限…、「解けない問題」が数学を進化させた!定規とコンパスだけでは引けない角の3等分線、公式を使って解けない5次方程式、正しいかどうか証明できない問題…。数学の世界には解けない問題がたくさんある。それでは、「なぜ」解けないのか?ほんとうの知的冒険はこの探究からはじまる!ユークリッドの『原論』からゲーデルの不完全性定理まで、数学のエレガントな発想を堪能できる名解説。

感想・レビュー・書評

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  • 不可能を証明する 現代数学の挑戦

  • 「角の三等分」という有名な問題があります。ギリシアの三大作図問題の一つで、

     どのような角が与えられても定規、コンパスを規定通り有限回用いて、その角の3等分線を見出せる方法はあるか?

    というものです。

    この問題は、「不可能」であることがわかっているのですが、数学でわかっているとは、証明済みであるということになります。
    そして、証明するためには、コンパスと定規の定義から始まり、この問題であれば「コンパスと定規のみで作図できる」ということはどういうことだろうか? ということを見出さないとなりません。

     ある図が作図可能である必要十分条件は、作図に必要な長さを、与えられた長さから四則演算と開平算の繰り返しでつくることができることである。

    ここまで来て、問題は幾何学から代数に変換され、解くことができるようになります。

    ★★★

    本書では、ユークリッドの『原論』からゲーデルの不完全性定理まで、不可能をどのようにして証明してきたかが書かれています。

    「数学を鑑賞するツボ」の指南書といってよいでしょう。

    もちろん、おもしろい問題ばかりで、

     「この文章の中には数字1が〇個ある」

    この〇の中に0から9までの数字のどれかを入れて「 」内を正しい文章にせよ。

    とか、思わず、にやりとしてしまいます。

    もちろん、この問題も何故不可能なのかについて解説されています。

    ★★★

    省みると、自分も「その問題がなぜ解けないのか」についていい加減にしたまま議論を進めていることがあるなあと思います。
    まず、問題を正確に定義して理解することと、解けない理由を証明しないといけないなぁと思いました。

    たとえば、「バグをゼロにすることは不可能」についてなら、「バグ」の定義が必要でしょう。
    「バグがゼロ」とはどういった状態を指しているのか? また、「枯れてきてバグが出ないソフトウエア」とどう違うのか等々について考察しなければなりません。

    そして、自分は何がしたいのか……。

  • いわゆる悪魔の証明「無いことの証明」。
    背理法ですらも直感的には理解しづらいのに、無理数、角の3等分や円積問題、平行線公理、トポロジーが成立すること、ケーニヒスブルクの橋や15ゲーム、5次方程式の解、対角線論法ときて、最後は不完全性定理。
    いずれも、果実のみを知識と得ているが、どのようにしてその成果が得られたか、かなり本書では簡単に解説しているようだがそれでもかなり手ごわい。
    高校数学では厳しいかも。

  • 中学・高校レベルのものから大学で学ぶような数学まで、幅広く紹介されています。少し難しい表現も出てきましたが、数学が好きな人ならばたのしく読める本だと思います(私個人としてはとても面白かったです!)。
    (教育学部・数学専修:匿名希望)

    タイトルにとても魅力を感じました。
    可能なことを証明することは難しいことであっても頑張れば証明が出来そうですが、不可能なことは一体どうやって証明するのか興味を持ったので、この本を選びました。
    (教育学部・国語専修:匿名希望)

  • 数学の証明に関する書籍である

    ときくと、難しそうだなと感じると思う

    でも、本書では、分かりやすく説明してますというのが、おすすめする流れだと思う

    残念ながら本書は難しいままである
    難しいとまでは言わなくても固い

    次、次、と読み進めたいという力は無い


    内容はとても興味深い


    でも、理系の仕事をしている私ですら、拒否してしまうんだから、一般の人には受け入れられないだろう

  • 不可能であることを証明することは、存在を証明するよりも難しいのか。

    Fermatの最終定理に代表されるように、与えられた命題を満たすような数は存在しないことを示すということは、大変難しいし、なぜ不可能であるかという本質的な問題へと展開することができる。

    本書は、その中でも易しい問題から入り、徐々に難易度が上がっていく。しかし、そこにはギャップが無く、読み手にとってすんなりと腹に落ちていくように論理的である。

    後半になると、角の三等分線の不可能性、Galois理論およびGödelの完全性定理・不完全性定理を解説している。

    が、しかし数学の証明方法の道筋を解説しているだけなので、やや退屈な感じ。例えば、Gödelの不完全性定理を勉強したいなら、岩波新書などを読めばもっと理解できるし・・・
    大切なのは、やっぱり考察だと思う。Gödelの不完全性定理に至っては、

    ------
    数学を形式的に矛盾から守ることはできなかった。しかし、そこにこそ数学が人の営みであることの意味があるのだと思う。(p.210)
    ------

    で終わっているし。
    大切なのは、それによって数学がどう変化し、どうなっていったら良いのかという所見ではないだろうか。

    まぁタイトルの「不可能性を証明する」という内容には合致しているが、読み手のレベルをどこに合わせているのか、最後まで判らない本であった。

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著者プロフィール

1946年、群馬県生まれ。東京教育大学大学院理学研究科修了。群馬大学教育学部教授を経て、群馬大学名誉教授。数学教育協議会会員。専攻は位相幾何学(トポロジー)。著書は『読む数学』『読む数学 数列の不思議』『読む数学記号』『読むトポロジー』(いずれも角川ソフィア文庫)、『はじめての現代数学』ハヤカワ文庫NF)、『幾何物語』(ちくま学芸文庫)、『数学 想像力の科学』(岩波科学ライブラリー)、『頭にしみこむ微分積分』(技術評論社)など多数。

「2023年 『読む幾何学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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