バッハマン/ツェラン往復書簡 心の時

  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (578ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791765805

作品紹介・あらすじ

第二次大戦の傷跡生々しいウィーンで、若い男と女がめぐり合った。後に20世紀文学の煌く星となる二人。激しい恋のさなか、男は新天地パリに忽然と旅立つ…200通になんなんとする手紙に表わされた、20世紀文学の奇跡的ドキュメント。

感想・レビュー・書評

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  • 恋人同士であった詩人ふたり、そしてお互いのパートナーとの私信の翻訳。観念的なドイツ語の、語感をたいせつにした誠実な、直訳。しかし読後は圧倒的に心が震える。ナチスの収容所で両親を失ったツェランは、そのとがった感性と内向的な人柄で、だんだん人間不信に陥っていく。その彼を愛し、その思いを理解しようと試み、仕事上でも擁護するオーストリアの詩人インゲボルグ。夫とインゲボルグの関係を知りながらもそれを理解し、夫を支えようとして傷つく妻のジゼル。インゲボルグの想いを察しながら理解ある態度をみせるインゲボルグのパートナー、マックス・フリッシュ。戦後ヨーロッパの知識人たちが、微妙に傷つけあいや衝突を避けながら、人間関係はさりげなく崩れていく。もっとも先鋭なツェランの自死によって終結する。これは微妙な均衡で描かれた室内画、静かに流れる弦楽四重奏のような作品だ。もちろん、大きく、第2次世界大戦の傷がここに横たわる。感動的なのは、日本語解説にあるような妻ジゼルの「大きな愛」ゆえだとわたしは思わない。ジゼルは「いいひと」ではあるが、そう、「風と共に去りぬ」のメラニーのようなひとだと思うが、どこか健康的な色合いを感じる(現に4名で一番長命であった)。インゲボルグもパウルも魂に影があり、それがお互いに強烈に惹きあったのだろう。ともに暮らしていく組み合わせではなかったが、わたしはインゲボルグは終生パウルを愛していて、同時に一緒になれないことを知っていたのだと思う。彼女のひたすらな愛情が、全編の底流にある・・と思うのは、わたしがロマンティックすぎるのであろうか。インゲボルグはパウルの死後3年で、47歳で世を去る。

  • (後で書きます)

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