うな丼の未来 ウナギの持続的利用は可能か

制作 : 東アジア鰻資源協議会 日本支部 
  • 青土社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791767373

感想・レビュー・書評

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  • 【要約】
    ・このままだとうな丼の未来はなかなかに暗い。

    【ノート】
     小さい頃から魚が食べられない。強制的な矯正措置は取られたが、嘔吐してしまうぐらいだったので、結局食べられないまま今に至っている。ただ、魚介類が全くダメかと言うと、特殊な例外がある。例えばカマボコや魚卵系は大丈夫だし、タコ、イカもOKで、エビ・カニは苦手だが、食べられなくはない。また、これは北海道に来てからだが、刺し身は、所謂「光物」以外は結構食べられるようになった。加えて、ウニ、牡蠣は大好物になった。さらに、鮎とししゃももOK。これまでに、この嗜好の傾向を理解してくれた人は皆無である。
     ウナギも自分にとっては言わば「こっち側」。関西風だと生臭くてダメだが、関東風ならOKで、しかも、すこぶる好物の部類に入る。ウナギは家内の大好物でもあるのだが、今や絶滅危惧種に指定されており、どんどん減少していく流通量とどんどん高騰していく価格に心を痛めていたところで本書の存在を知った。
     ウナギは、その生態が謎に包まれているとのことで、養殖も難しいらしい。稚魚に何を食わせると健やかに成長するのかというのも解明されてはいない。本書で報告されている例では、サメの卵を粉末にしたものがOKらしいが、それもある時期までの話で、その段階を過ぎて成長すると食べなくなってしまうらしく、難しいようだ。

     本書は学際的なシンポジウムでの発表や討議内容をまとめたもの。この手の報告というのは大抵面白くなくて、環境省や水産庁など、官公庁も参加したものとなると、さらに面白くないことが多い。しかし、本書は面白かった。これは「うな丼」が皆の念頭にあるからじゃないだろうか、タイトルも「うなぎの未来」ではなくて「うな丼の未来」というところがキモだ。「うな丼が食べられなくなるかも」という危機感はリアルで切実なのであって、それがこのシンポジウムを面白くしたものと思われる。水産系の学者、環境系の学者にはじまり、蒲焼協会やら鰻協会の人、マスコミ関係者まで巻き込んでの討議は、ウナギをとり巻く多様な立場の人たちの意見を一望できて興味深い。
     ちなみに、自分が最も共感したのは「安いウナギではなく、ちゃんとお金を払って、職人が調理するうなぎを、ご馳走として食べてください」という蒲焼協会の発言だ。
     今や、吉野家が¥1,000以下でうな丼を扱ったりしているが、これは悪しき資本主義の行進なのであって、日本のうな丼文化を蹂躙することに直結するだろう。再びの引用だが、<a href="http://goo.gl/dxE0q9" target="_blank">「はじめてのマルクス」</a>で佐藤優が「経済合理性に反する行為をあえてする(P113)」と言っているのを、自分の具体的な行動の指針としてよいのではないか。タレでそれっぽさを演出しただけの、東南アジアの工場からの加工食品を乗せただけのうな丼を安価でいつでも食べられることと、お店で職人が作ってくれる本物のちゃんとしたうな丼を1年に2〜3回、奮発して食べられることと、どちらが幸せだろうか。

    【由来】
    ・honz

    【期待したもの】
    ・自分も好きなうな丼。「持続的利用」と言うからには、環境的環境からなのだろうから、その知見を自分で消化しておきたい。

  • 2015年2月新着
    まず、本書を読むまでこれほどウナギ問題が深刻化しているとは知らなかったと書かねばなるまい。本当に、ウナギを食べられなくなるかもしれない。というか、その頃には他にも食べられない魚が沢山出てきてしまいそうである。ううむ、とにかく、これは緊急の問題で、本書はそれを知る絶好の一冊である。
    東大で開かれたシンポジウム「ウナギの持続的利用は可能かーうな丼の未来」で、いろんなパネリストが行った講演を収録した内容なので、あらゆる面からウナギについて知ることができる。研究者、漁業者、蒲焼店、環境省、水産庁、マスコミなど。質疑応答で、彼らの相互の反応も読める。
    これから、どうウナギと付き合うか、いや付き合うことができるか。ウナギは野生生物である。獲り尽くしたら、それでおしまい。そ、それは困る・・・。

  • 「ウナギの持続的利用は可能か うな丼の未来」シンポジウムの2013・7 in 東京大学農学生命科学研究科 のまとめ本このうなぎのシンポジウムは実際に聴講したかったです!

    さて、けっきょくのところ
    うなぎが好きな消費者が聞きたかったのは
    うなぎ が絶滅危惧になっているけど やっぱり日本人はうなぎ好きだし、あとどれくらい食べたらなくなるの?保全したら昔のように増えるの?このまま食べていいのかな、あかんのかな、どっち?

    うな丼大好き日本人が知りたかったこの質問に答えてくれているシンポジウム    実際に聴きにいけなかったのがとても残念。読んでいてこれほど面白い活気あるシンポジウムだったとは。

    日本からウナナギが無くなれば捕れなくなれば 海外から外来種ウナギの輸入、あるいは海外で養殖してまで食べつづける・・・・ これもどうだろうか・・・天然ウナギも 限りある自然資源であり 食べたいがために捕獲し食べ続けるといつかは枯渇する。 

    日本のレッドデータブックでは絶滅危惧種指定であるが 現行では食べてはいけないというルールはないようですが、未だウナギの生態は謎だらけ、貴重な自然資源の枯渇を思ったら、今のひっ迫したうなぎ事情を思えば 果たしてこのまま食べ続けていいのか食べるのを止めたほうがいいのか ウナギ大好き日本人の良心に問ふところでしょう。 

  • ビブリオバトル@アースデイ神戸2014まちライブラリーブース テーマ「アースデイにちなんだ本」で紹介した本です。

    https://www.facebook.com/events/482250875237935/permalink/488947204568302

  • うな丼の未来、どうなるかですが、至って深刻ですね。

  • 本書は2013年7月に東京大学農学生命科学研究科で開催された「ウナギの持続的利用は可能か――うな丼の未来」での講演、ポスター発表、アンケートをもとにまとめられたものなので、ちょっと気を引くタイトルとしゃれた表紙のデザインの割には、中身は至ってスクエアなレポート集と言える。
    環境省は、2013年2月、世界に19種あるといわれるうちの1種「ニホンウナギ」を、絶滅危惧種に指定した。さほどに資源としてのウナギは、危機的状況にあることや、日本で消費されるウナギの99.5%は、半天然といえる養殖ものであり、漁によって得られる純天然ものは、極めて僅かであることなどが報告されている。

  • 鰻って、絶滅危惧種でレッドリストにも載ってるんだということをあらためて知る1冊。なかなか美味しい鰻を口にする機に恵まれないが、日本人の食文化を見直すきっかけを与えてくれる本だと思う。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授・前日本大学教授

「2019年 『ウナギの科学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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