- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791768172
感想・レビュー・書評
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もと東工大教授、今野先生の物語。アメリカ留学で博士課程をとるための猛勉強。アメリカの大学では大学院でも大量に宿題がでるのですね。でもこうしたほうが確実に身につくのでしょうね。日本だと数学系では大学に入ると理論を理解する方に重点をおかれ、演習がややおろそかになりがちな印象がありますが、本当は数学はたくさん問題を解くのが理解の早道なのかもしれませんね。
本書の大きなテーマは父との葛藤といったところでしょうか。地方大学の助教授として終わってしまった父を超えたいという思い、そして最後のあたりでは父に対する温かい思い、ほろりときました。
ヒラノ教授にとっては父はありたくない姿、反面教師、だったのでしょうが、私のような普通の人間からすると、父が大学の数学の先生というだけでものすごい恵まれた環境、DNA、だと思うんですけどね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
涙無くして読めない.今野先生御自身の,米国での競争原理が精神浸食していく様,そしてそもそもの御自身の哲学を無意識に形成するに至った,お父上と御家庭について.どれも,(第一級の)研究者を目指すなら避けて通れない,しかもそう簡単に知ることのできない超重要情報である.人生場所の落日を迎えられた(と御本人が記載されている)今野先生をして,人間は運が80%(それ以外は才能と努力)と言わしめる,魔窟たる研究人生を我々は歩んでいるのだ.
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ヒラノ教授の時代に米国に博士留学するのは、現在の留学を超える過酷な状況だったのかもしれない。
その代わり、博士号を取得しての帰国はそれなりの見返りはあったはず。
ヒラノ家の確執が凄すぎて、凡人には理解できないかも。
ヒラノ教授シリーズは好きなのですが、ちょっとこれは辛かったかなあ?? -
ヒラノならぬ今野先生が、電中研からスタンフォードのダンチック教授の所へ留学して博士号を取るときの苦労と、その後、ウィスコンシンで苦闘する思い出。
工学の研究は、大きく分けると「モデリング・定式化を行う」「実験を繰り返し計測する」の二つに分かれると思う。非実験の前者の代表である数理工学の分野では、ポストを得るのも厳しい競争だったであろう。
今野先生は、研究者人生の前半は暗中の時が多かったが、後半は、斯界の第一人者として充実されていたと思う。