暴力の人類史 上

  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (700ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791768462

感想・レビュー・書評

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  • マイクロソフトのビル・ゲイツ氏はその年1年で読んだ興味の引かれた本5冊を毎年発表しているが、本書は「ここ10年読んだなかで最高」「『今年の』ではなく『永遠の一冊』」として絶賛している本である。

    本書は、著者のスティーブン・ピンカー氏が「私たちは人類史上、最も平和な時を生きている」ということを数々の事実からがっちりと論じたガチガチの学術書である。
    だが、学術書でありながらも読みやすい。
      もはや辞書?
    としか見えないレベルの厚さであり、上下巻で1300ページ以上。
    しかしながら、一度ページをめくればどこも非常に興味深い内容であり、どんどんと知的好奇心が刺激される。
    まさに題名のとおり、本書は人類が歩んできた歴史の暴力の面に特化して論じられているのだ。

    今の時代は、毎日の様に報道される無差別テロや殺人事件を見聞きすると、人類は以前より暴力事件が多くなっているのではないかと感じられる。
    だが、今は人類史が始まって以来のレベルで暴力が少なくなっているのだ。
    しかも古代から現代までの範囲で見るとまさに右肩下がりで全世界的な殺人(戦争を含む)は減っているのだ。

    特に古代、中世の時代では戦争が頻繁に起き、他民族を根絶やしにするというような戦いが勃発するのは日常茶飯事であり、聖書のなかでは「異教徒を根絶やしにしろ」と神が命令し、また中世の人々は重罪人の公開処刑を日常娯楽として嬉々として楽しんでいた。

    そういった人類が今のような本当に平和な時代、つまり、第二次世界大戦が終了し、70年以上も世界大戦規模の戦争が起こっていないという現代は過去の時代に比べると間違いなく平和な時代なのである。

    しかし、これはどのような過程を経て実現していったのか?
    それを本書ではその傾向と原因を詳細に探っていく。

    僕が非常に興味を持ったのが人間の暴力性が薄くなっていった原因の一つには
      個人の人間が他人の立場に立てるような意識を持てるようになったから
    という仮説である。
    その他人の立場になって物事を考えられるようになった理由が「印刷」の発明により、『本』が一般大衆の手に入るようになったからだということなのである。

    活字や本が無かった時代は、人々の意識は「自らが経験したこと」以外はあまり意識の中にはなかった。
    もちろん他人の経験等はほかの人の口から聞いて知ることはできるだろうが、それはあくまでも想像の域を出ない。
    古代において、文字が発明され、手書きで記録ができるようになってからも、文書や記録はごく一部の聖職者や役人など専門的な職業に就いている人にしか、いき渡らなかった(『聖書』などのような聖典か税金を徴収するための専門的な記録のみ)。
    しかし、15世紀になり活字印刷が発明され、聖典のような書物だけでなく、徐々に個人的な記録を書いた書物(小説のようなもの)が一般大衆の手に入るようになり、このとき初めて、人は他人の心情が吐露されているものに触れることができるようになり、そしてそれを理解できるようになったのだという。
    そのころから、残虐な処刑行為や大量殺戮は減っていった。

    もちろん、これだけが理由ではないだろうが、本の出版の歴史と人類の暴力の歴史がこのようにリンクしているということは非常に考えさせられるものがある。

    以後、下巻にて。

    • kuma0504さん
      わざわざ質問したのに、探して読んで欲しいというのは失礼だと気が付いたので、コピペして置きます。面倒な質問なので、答えなくても大丈夫です。

      ...
      わざわざ質問したのに、探して読んで欲しいというのは失礼だと気が付いたので、コピペして置きます。面倒な質問なので、答えなくても大丈夫です。



      「はじめに」を読んで著者の言うように「信じられないような話」と私も思った。とてもとても驚いた。なんと、「長い歳月のあいだに人間の暴力は減少し、今日、私たちは人類が地上に出現して以来、最も平和な時代に暮しているかもしれないのだ」というのである。

      確かに北側諸国の飢餓や差別、戦死は少なくなったかもしれない。しかし、数千年単位では戦死者は多くなり、南北格差が言われ貧困による暴力による死者は増えているのでは無いか?単なる数字の操作なのでは無いか?しかし著者はこの文章のすぐあとにそれを否定する。

      「もっともその減少はなだらかに起きたわけではなく、もちろん暴力が完全にゼロになったわけでもない。また今後も減少しつづけるという保証もない。だが暴力が減少傾向にあること自体は間違いなく、これは数千年単位でも数十年単位でも、また戦争から子どもの体罰にいたるさまざまな種類の暴力についても見て取れる傾向である。」(11p)

      著者はそれをきちんと証明するために、この本はここまで分厚くなったという。この最初の衝撃に引っ張られて、私も図書館の借り出し期間が終わる前までに急いで読まざるを得なかった(一冊4200円もするので買えない)。

      私の関心は、言うまでもなく古代である。私は佐原真氏の云う「人類史の中で、戦争を始めたのはつい最近である。人間が始めた戦争は、人間がやめさせなくてはならない」という指摘に目覚めさせられて、考古学を学び始めた者である。佐原真氏は、イデオロギーで言ったわけではない。根拠はあった。ではこの著者の根拠は何か。きちんと数量化して、根拠を出しているのか?

      1番大きな根拠は111pの表「非国家社会と国家社会の戦争により死亡する人の割合」である。死亡の絶対数ではなく、割合を出したのは当然である。「遺跡から発掘された骨に占める暴力死の割合」は「平均15%」と導き出す。その他「現代」の「狩猟採集民」や「狩猟採集農耕民その他」の割合も14%、24.5%も出していて、一方16世紀から現代に至る「一部」の「国家社会」の割合は1%未満になると言う。

      明らかに恣意的なサンプル抽出である。ここには、それぞれの遺跡の考古学的な資料批判もなければ、その他の遺跡の比較検討もない。確かに、遺跡の骨からすべての暴力死の痕跡を類推することは不可能である。だから、比較的資料が多い現代の非国家社会の資料も出してきたのだろうが、ともかくここだけを見ても考古学的な学問的厳密さからかけ離れている。

      因みに、佐原真氏の主張のきっかけは、縄文時代よりも弥生時代の方が石鏃の大きさが動物殺傷目的から人殺傷目的に変わったことに注目したのだが、当然人物の骨も後年検討し、質も量も(酸性土の日本ではサンプル数が少ないとは言え)、縄文時代に戦争があった証拠は見つけられなかったという。

      この著者のサンプル抽出は、先史の抽出は、最近では西暦1770年の遺跡も含み、注目すべきは1300年代の遺跡の割合がかなり突出しており、平均を大きく押し上げているのである。

      非国家社会と言いながら、間接的に国家社会の影響を持ったサンプルではないかと言う疑問は拭えない。

      ここで、つまづいたので、もう私はこの著者の主張を全面的には信用できなくなった。確かにこの数世紀は、暴力死の「割合」は減ってきているのは、説得力があるのかもしれないとは思う。

      2014年9月12日読了
      2021/01/16
    • kazzu008さん
      kuma0504さん。こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      kuma0504さんのご指摘も一理あると思います。

      という...
      kuma0504さん。こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      kuma0504さんのご指摘も一理あると思います。

      というのも、著者のスティーブン・ピンカー氏は歴史学者ではなく、心理学者なので古代史は専門ではないですから。

      ただ、本書では、古代の歴史を紐解くのは一例で、本書で主に述べられているのは
        暴力についての人間の意識はどのように変化していったか?
      ということなのです。
      まさに心理学的な要素が大きいので、その部分にはなるほどと思わせられることが多かったですね。

      とはいえ、僕なんかのような専門家でも研究者でもない、ただの読書好きなビジネスマンにとっては、本書のような本を読むことは、あくまでも『世界的なベストセラーになっている本にはこんなことが書いてある』という事実を知ることが一番の目的なので、僕なんかはkuma0504さんのように専門的な視点で読むことができるレベルにはまったく到達していないのです(笑)。

      これから僕も一生懸命に勉強してkuma0504さんと議論できるようになれるよう頑張りますね!
      2021/01/19
    • kuma0504さん
      kazz008さん、こんにちは。
      ご心労おかけしてすみませんでした。

      テーマ自体は、私には拘りのあるモノだったので、全部読んだ人から、私の...
      kazz008さん、こんにちは。
      ご心労おかけしてすみませんでした。

      テーマ自体は、私には拘りのあるモノだったので、全部読んだ人から、私の意見がどう思えるのか、真面目な反応が知りたかったのです。
      ここに書いてあるように、佐原眞さんの主張を元に考古学を始めている私です。だから、暴力は減少しているという主張は、ホントは歓迎したいのです。だからこそエビデンス(証拠)を真面目に欲したというわけです。

      世界の評価は、どうなっているのか?またおいおい気をつけておきたいと思います。
      2021/01/19
  • 読書家としても有名なビルゲイツ氏が「私が読んだなかでもっとも重要な一冊❕それも今年『今年の』でなく、『永遠の一冊』だ❕」と大絶賛した本です。

    辞書のような重厚感のある本で、ビビりましたが、ハーバード大学教授の著者が、膨大な研究資料をもとに『暴力は減り続けている。現在は、とても恵まれた時代だ!』という主張を丁寧に、具体的に描いた本です。
    ちょっとお高めの本ですが、一度は読むべき本だと思います。

    ぜひぜひ読んでみてください

  • ピンカー氏の大文明論と言っても良い大作の上巻。上巻だけで完結する内容になっており、下巻はまた違った論が展開されるようだ。上巻は、いかに現代が平和な時代か?多面的に分析した著作。そしてピンカー言う所の、現代は「長い平和」の時代だが、なぜそれが現代人に実感できていないのか?という問いに対しても、律儀に分析している所が、並の人ではない証拠。彼はユダヤ系無神論者だと自称しているが、本当にユダヤ人は、賢い人が多い。歴史に名を残すような「古典」を世に生み出したと言っても過言ではない。

  • 「はじめに」を読んで著者の言うように「信じられないような話」と私も思った。とてもとても驚いた。なんと、「長い歳月のあいだに人間の暴力は減少し、今日、私たちは人類が地上に出現して以来、最も平和な時代に暮しているかもしれないのだ」というのである。

    確かに北側諸国の飢餓や差別、戦死は少なくなったかもしれない。しかし、数千年単位では戦死者は多くなり、南北格差が言われ貧困による暴力による死者は増えているのでは無いか?単なる数字の操作なのでは無いか?しかし著者はこの文章のすぐあとにそれを否定する。

    「もっともその減少はなだらかに起きたわけではなく、もちろん暴力が完全にゼロになったわけでもない。また今後も減少しつづけるという保証もない。だが暴力が減少傾向にあること自体は間違いなく、これは数千年単位でも数十年単位でも、また戦争から子どもの体罰にいたるさまざまな種類の暴力についても見て取れる傾向である。」(11p)

    著者はそれをきちんと証明するために、この本はここまで分厚くなったという。この最初の衝撃に引っ張られて、私も図書館の借り出し期間が終わる前までに急いで読まざるを得なかった(一冊4200円もするので買えない)。

    私の関心は、言うまでもなく古代である。私は佐原真氏の云う「人類史の中で、戦争を始めたのはつい最近である。人間が始めた戦争は、人間がやめさせなくてはならない」という指摘に目覚めさせられて、考古学を学び始めた者である。佐原真氏は、イデオロギーで言ったわけではない。根拠はあった。ではこの著者の根拠は何か。きちんと数量化して、根拠を出しているのか?

    1番大きな根拠は111pの表「非国家社会と国家社会の戦争により死亡する人の割合」である。死亡の絶対数ではなく、割合を出したのは当然である。「遺跡から発掘された骨に占める暴力死の割合」は「平均15%」と導き出す。その他「現代」の「狩猟採集民」や「狩猟採集農耕民その他」の割合も14%、24.5%も出していて、一方16世紀から現代に至る「一部」の「国家社会」の割合は1%未満になると言う。

    明らかに恣意的なサンプル抽出である。ここには、それぞれの遺跡の考古学的な資料批判もなければ、その他の遺跡の比較検討もない。確かに、遺跡の骨からすべての暴力死の痕跡を類推することは不可能である。だから、比較的資料が多い現代の非国家社会の資料も出してきたのだろうが、ともかくここだけを見ても考古学的な学問的厳密さからかけ離れている。

    因みに、佐原真氏の主張のきっかけは、縄文時代よりも弥生時代の方が石鏃の大きさが動物殺傷目的から人殺傷目的に変わったことに注目したのだが、当然人物の骨も後年検討し、質も量も(酸性土の日本ではサンプル数が少ないとは言え)、縄文時代に戦争があった証拠は見つけられなかったという。

    この著者のサンプル抽出は、先史の抽出は、最近では西暦1770年の遺跡も含み、注目すべきは1300年代の遺跡の割合がかなり突出しており、平均を大きく押し上げているのである。

    非国家社会と言いながら、間接的に国家社会の影響を持ったサンプルではないかと言う疑問は拭えない。

    ここで、つまづいたので、もう私はこの著者の主張を全面的には信用できなくなった。確かにこの数世紀は、暴力死の「割合」は減ってきているのは、説得力があるのかもしれないとは思う。

    2014年9月12日読了

  • この世界から暴力が減少している事を膨大なデータから検証している。データーも膨大だがページも膨大。上だけでお腹いっぱいだ。
    本書によると、古代人は残虐な事を残虐だとは思っていなかったそうだ。それは数々の処刑装置を見れば一目瞭然。
    一番腑に落ちたのは、印刷技術が発達し本が出回り、他人の感情を理解出来る機会が増えたから、と言う事。これは人間のみが読み書きをし、知識や経験を形あるもので他者に伝達出来るからこそだと思う。いわば古代人は読み書きこそ始めたが、まだ動物的本能が強かったと言えるのではないか。下巻も楽しみ。

  • ビル・ゲイツ氏の推奨図書。上下巻合わせて1,300ページを超える超大作だが読み応えも示唆も多分にあった。

    昨今、映画やゲームの暴力描写が人格に及ぼす影響に警告が発せられているが、人類史上最大のベストセラーである聖書には眼を背けたくなるような悍ましい暴力と数々の理不尽が描かれている。

    日本人からすると中世から近代にかけてのヨーロッパは傍若無人で野蛮の極みだが、「第4章 人道主義革命」で考察されている恋愛小説の影響で他者理解の精神が促進され逆方向へ極端に転換されていったのは西洋的で面白い。特に驚いた内容は「第5章 長い平和」だ。集団的暴力がここまで科学的に分析されているのは素晴らしい。戦争の発生回数と死者数の相関がべき乗であるのは何か法則性を感じさせる凄い発見に思える。

    カントの思想を拝借し民主主義、貿易、国際機関による平和の段階的獲得かつ構成要素が述べられているが、暴力史と平和化のプロセスについて人間が過大評価しがちな「印象的な出来事」「時間的に近い出来事」を膨大なデータと分析から検証し反証しており圧巻の内容である。

  • 非常に良い。
    現代が今までの中で一番平和であることを統計や逸話などから教えてくれる本。

  • すべての人に読んでもらいたい。
    現代がいかに恵まれているか、希望があるのかと分かる本。とは言え、このままで良い訳はなく、より永遠平和に近づくために我々が行動していくことが必要だろう。
    そのための仕組みも人類は作り上げてきている。民主主義が危機に貧している今だからこそ、読んでほしい。

  • 人類史上、暴力の量がどのような変遷を遂げて行ったのか、統計・歴史両観点から分かりやすく説明されていて面白かった。個人的には、人はなぜ他者を傷つけるのか、のメカニズムが本書で語られている物理的な攻撃以外に、心理的な観点からも適用されるのではないかと思い、考察を続けたいなと思った。

  • 読み終えるのに一カ月かかってしまった。膨大なデータと各専門家の知見を凝縮させ、各テーマに沿ってなぜ現代が暴力が減っている言えるのか、つぶさに論じてっております。歴史、心理、宗教、人文、科学とあらゆる分野を包括的に捉えているので、もう大満足の読後感です。まだ、下巻があるとは。。。。

    キーワードとしては「民主化」、「文明化」、「啓蒙主義」、「人道主義」。概して、数字や統計に裏付けられた検証は、個人的な感覚としての印象とズレが生じている。まさに、ファクトフルネスの大切さを、暴力(戦争、ジェノサイト、テロなどに細分化されながら)を題材として訴えているようにも感じた。

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著者プロフィール

スティーブン・ピンカー(Steven Pinker)
ハーバード大学心理学教授。スタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学でも教鞭をとっている。認知科学者、実験心理学者として視覚認知、心理言語学、人間関係について研究している。進化心理学の第一人者。主著に『言語を生みだす本能』、『心の仕組み』、『人間の本性を考える』、『思考する言語』(以上NHKブックス)、『暴力の人類史』(青土社)、『人はどこまで合理的か』(草思社)などがある。その研究と教育の業績、ならびに著書により、数々の受賞歴がある。米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」、フォーリンポリシー誌の「知識人トップ100人」、ヒューマニスト・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた。米国科学アカデミー会員。

「2023年 『文庫 21世紀の啓蒙 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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