暴力の人類史 上

制作 : 幾島幸子  塩原通緒 
  • 青土社
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レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (700ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791768462

感想・レビュー・書評

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  • ピンカー氏の大文明論と言っても良い大作の上巻。上巻だけで完結する内容になっており、下巻はまた違った論が展開されるようだ。上巻は、いかに現代が平和な時代か?多面的に分析した著作。そしてピンカー言う所の、現代は「長い平和」の時代だが、なぜそれが現代人に実感できていないのか?という問いに対しても、律儀に分析している所が、並の人ではない証拠。彼はユダヤ系無神論者だと自称しているが、本当にユダヤ人は、賢い人が多い。歴史に名を残すような「古典」を世に生み出したと言っても過言ではない。

  • ビル・ゲイツ氏の推奨図書。上下巻合わせて1,300ページを超える超大作だが読み応えも示唆も多分にあった。

    昨今、映画やゲームの暴力描写が人格に及ぼす影響に警告が発せられているが、人類史上最大のベストセラーである聖書には眼を背けたくなるような悍ましい暴力と数々の理不尽が描かれている。

    日本人からすると中世から近代にかけてのヨーロッパは傍若無人で野蛮の極みだが、「第4章 人道主義革命」で考察されている恋愛小説の影響で他者理解の精神が促進され逆方向へ極端に転換されていったのは西洋的で面白い。特に驚いた内容は「第5章 長い平和」だ。集団的暴力がここまで科学的に分析されているのは素晴らしい。戦争の発生回数と死者数の相関がべき乗であるのは何か法則性を感じさせる凄い発見に思える。

    カントの思想を拝借し民主主義、貿易、国際機関による平和の段階的獲得かつ構成要素が述べられているが、暴力史と平和化のプロセスについて人間が過大評価しがちな「印象的な出来事」「時間的に近い出来事」を膨大なデータと分析から検証し反証しており圧巻の内容である。

  • 非常に良い。
    現代が今までの中で一番平和であることを統計や逸話などから教えてくれる本。

  • 歴史を題材としたすべての創作者にとっては必読の一冊。今の時代は並外れて平和だと言われているけど、過去って実は「異国とも思えるほど、衝撃的で暴力的だった」。『ヒストリエ』や『ヴィンランド・サガ』に見られる、理不尽で残酷な描写が誇張でも何でもないことがよくわかる。アイスマンなど今日発見される古代の遺体に、殺害や生け贄といった悲惨な最期を遂げたものが意外に多い。ホメロスは戦争を、一方では浪費であると嘆きつつも、それを避けられない人生の現実として受け入れていたし、あの聖書でさえ暴力を称賛する長い物語と読めるのだ。

    「戦闘は決闘になぞらえられるが、歴史において決闘はやがて笑いの種にされ、ついには消滅した事を思い出してほしい。いまや戦争も同じように縮小しつつあった。まさにオスカー・ワイルドの予言『戦争は邪悪なものと見なされる限り、その魅力はいつまでも消えない。だが野蛮ものと見下されれば人心は離れていくだろう』が成就したと言っていいかもしれない」

    「かつて戦争は輝かしく英雄的で、神聖で、スリリングで、勇ましく、全てを浄化するものと見なされていたが、いまや戦争は、不道徳で、不快で、野蛮で、無益で、愚かで、無駄ばかりで残酷なものになった」
    つまり、戦争の正当性が信じられた時代は去り、戦争を嫌う感情が大勢となったのだ。

    もちろん著者は、これですべての戦争がなくなり平和になったのだと考えているわけではない。戦争はただポワソン過程にしたがってランダムに起きるものなのだから、地震のように周期性があるわけでもなく、今日明日にも突然勃発しても全然不思議ではない。しかし世界は、多くの犠牲者を出しながらも、その度に過ちを反省し、徐々に戦争勃発の確率を下げていく歴史的過程にあることは間違いない。

    戦後の平和の時代が続いているのは、なぜか? 平和をもたらしているのは核なのか民主主義なのか貿易なのか? そうではないのか? 両方の側に証拠と反証がいくつもあり検討が加えられる。読者は、「1940年代後半以来、他国を征服することによって領土を広げた先進国の数はゼロ」であり、いかなる領土拡張も「侵略」と断罪され、国境不可侵の規範が作られたという著者の指摘に対し、ロシアによるクリミア併合などを思い浮かべるかも知れない。しかし一部に例外はあっても、やがて撤退もしくは無効とされてきた歴史があるとする。

    上巻での結論は、長い平和が「暴力の減少をもたらす心理的回帰の結果だ」ということだ。奴隷制や車裂きの刑、異端者の火あぶり、決闘、鞭打ちの刑、そして死刑でさえも、かつては多くの人にとって当たり前のものと考えられていた。しかしやがて「意見の分かれるものへ、そして不道徳なもの、考えられないもの、ついには想像ができないものへと変わっていった」ように、戦争もこうした人間を規制する規範や慣習によって形を変えていくに違いないとする。日本人にとっての死刑や、肉体への暴力とも言える切腹について考えさせられる結論だ。

    これは初版本に限ったことであって欲しいのだが、誤字・脱字・字下げの間違いの多さには閉口させられた。決して訳文は読みにくいわけではない(むしろ読みやすい)のだが、監訳者のいない共同訳出の弊害か、はたまた編集者の点検漏れかは知らないが、落丁本と言いいたいくらいのありえない数の誤りがあり、決して安い本ではないので残念でならない。

  • 人類の歴史がいかに暴力に満ちていたか――という内容かと思ったら、そうじゃなかった。
    むしろ、暴力はどんどん減ってきていると。それを豊富で詳細なデータを使って説明しています。

    本書を読む前は、私は「人間ってのは暴力から逃れられないんだ……」と悲観していたので、だいぶ気が楽になりました。
    もちろん、「ほうっておけば世の中よくなるから万事オッケー!」みたいな能天気な話ではありませんが。暴力の数は減っているけど、質(一度に殺傷できる数)は増しているので、気を抜くなと著者のピンカーは警告しています。

  • 筆者の伝えたいことは良く分かるし、平和化・文明化のプロセスについては、実現困難ながらも暴力フリーの理想的な社会の構築条件を想像させる画期的な構想だと思った。先史時代から現代に至るまで、市民生活レベルで暴力が減ってるのは良く理解ができるし、個人的な細かいレベルにおいても相互不信を最小限にするため、悪い言葉使いを控えたり最低限のマナーを守ることは重要だと認識させられた。 ただ過去の出来事の羅列とそれが発生した背景について、分かりきった内容が続くためにページが無駄に多くなってしまってる。筆者は色んなデータを収集、把握しているかもしれないが、カミカゼ特攻隊員が偉大な精神世界に飲み込まれていたと考えているのは、各事象を正確に把握できていないし想像力に欠けていると思わせる

  • 歴史
    社会

  • 世界は数千年の歴史の中で最も安全な時代になっているという。日常の感覚としては、テロや内戦など、とても安全とは言えないニュースが多いが、本書にあるように、暴君が気まぐれで村の住民を皆殺しにしたり、秘密警察に連れて行かれたり、特定の民族を大量虐殺したり、宗教戦争が何十年も続いたり、武士に問答無用で斬り殺されたりはしない。戦争はあっても期間が短くなったことで、民間を含む死者は激減しているという。9.11のようなテロは数十年に一度の発生確率。これは、民主主義と国際貿易が浸透し、戦争などを行うコストが得られるメリットと見合わないことを指導者も国民も理解したこと、文明文化の発達により私刑や虐殺などが容認されなくなったこと、平和推進活動が世界的な潮流となることができたことなどが理由とされている。ただし、このような「長い平和の時代」が「永遠の平和の時代」にはならないだろうとも警告している。イスラム過激派の活動がどうなるか、中国・ロシアをはじめとする民主的でない国がいつ暴発するのか、大量破壊兵器がテロリストに渡る確率は低いがゼロではない、天変地異が大量の難民や暴動を引き起こす可能性、などなど。わずかな変化も見逃してはならないという主張に賛同。

  • 上下巻合わせて、1300ページ超。

    2年くらい前に買って、かなり長い積ん読を経つつ、読んでは休みしながらも、ついに読了。

    単純化すると世界の暴力は減少している。わたしたちが今生きてるのは、世界史的にもっとも暴力の少ない世界である。という話。

    読む前には、「そんな馬鹿な」と思ったが、読み出すと、圧倒的なデータ、研究の統合がなされていて、かなり説得力は高い。

    本のかなりの部分は、人間の暴力が減少してきたことの論証。

    ここまで、説明されても、本当か?と思うほど、「世界は暴力だらけだ」という観念はなかなか消えない。

    でも、それは、私たちの暴力への感度が上がり、昔だったら、気にならなかったようなことが、暴力的と感じ、報道されるからかも。

    では、なぜ暴力は減少するのか?

    という説明は、結構難しい。

    まずは、人間の心の中に暴力的なものがあるということを理解しないと、昔は暴力が一杯であったといことが説明できない。

    だが、ここで人間には生まれながらに暴力的なものがある、ということを認めない思考がある。(この非暴力的な思考がまさに暴力を減少させている一因であるが)

    次に、その暴力を抑制するメカニズムも色々あって、決定的なものではないのだが、20世紀以降の急激な暴力の減少を説明するためには、「理性」の役割が大きかったという話になる。

    現代においては、「理性」というのは、批判の対象となりやすいのだが、著者はその観念も打ち消していく。

    そんな感じ、これまで「暴力」について、持っていた観念が、大きくひっくり返る。

    そして、この本は、私が素人なりに、少しづつ考えてきたことを統計と実証研究でサポートしてくれる。

    人間性に対して、新しい形の信頼を取り戻してくれる本。

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