〈ポスト・トゥルース〉アメリカの誕生 ―ウェブにハックされた大統領選―

著者 :
  • 青土社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791769728

感想・レビュー・書評

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  • GAFA分析での投稿文で気になった筆者の本を探し出して読んでみたのですが、やはり分析力、文章力ともにすごい!

    大番狂わせだと思われた2017年のトランプ大統領誕生のドキュメンタリーです。
    本書の内容は、大統領選の予備選と同時進行に投稿した文章22本を、新たに脚注だけをつけてそのまま掲載しているので、選挙期間中に起こった様々なハプニングの驚きや心情をそのまま伝えており、読み物としても十分楽しめます。
    泡沫候補だったはずのトランプが、自身の知名度を利用し、醜聞に紛れながらも勝ち残る様はまさにドラマです。

    具体的には、予備選の最中に起こった移民のオーランド銃乱射事件(ゲイバーでの発砲)では移民問題、銃規制問題、性差別問題がクローズアップされ、英国のEU離脱を住民投票で決めたブレグジット問題はネットの無視できない影響力とポピュリズムの到来を予感させ、トランプは脱税やセックススキャンダルをやり玉にあげられ、ヒラリーは私用サーバー疑惑や健康問題、夫のセックススキャンダルなどが蒸し返され、3回行われたテレビ討論ではお互いを誹謗しあう泥試合で有名になりましたが、唯一「お互いの優れた点を1つだけあげるとすれば?」という参加者からの質問だけがよかったといわれる始末。
    最終的には全得票数では圧勝していたヒラリーでしたが、中央南部の各州と民主党の牙城だった州(ミシガン、ウィスコンシン、アーカンソー)や大票田の州(フロリダ、ペンシルバニア、オハイオ)をとったトランプが勝利という結果はご存知の通り。
    誰もが、ヒラリーの勝利と信じて疑わなかった国民の反動は、トランプ政権誕生に怨嗟となって現れましたし、ブレグジットでも投票のやり直しを迫る運動になったことから、その場の雰囲気で投票に流されてしまうダイナミズムがネット社会の功罪でもあるようです。

    こうした時代を生きる我々は、この2つの事例をポストトゥルースの象徴的な出来事として受け入れ、対応しなければならないということです。

  • 4年経っても時代があまり変わってないことを再認識した

  • ・wired.jpでのIT・メディアの活用、という視点から米大統領選挙を追っていた連載のまとめ。
    ・フェイクニュースの話題は少し出てくるのみだが、マスメディアとソーシャルメディアの違いを考える上で有用。

  • 2016年のアメリカ大統領選のトランプの勝利を、遡ること9ヶ月前、まだ共和党、民主党ともに候補者争いが続くタイミングから、その模様とそこでのwebの用いられ方をレポートするWired連載をまとめた書籍。

    アメリカ大統領選の政治システムや共和党と民主党の各候補者の顔ぶれ、トランプとヒラリーだけではなく、副大統領候補やピーター・ティールなどの関係者も含めて、極めて多岐に渡るトピックが網羅的にまとまっており、アメリカの大統領選を理解するのに役立つ。特にリベラリズム/リバタリアニズム/ネオ・コンサバティブ等の政治思想のワーディングを超えたところに今回の大統領選の意外さがあったわけであり、その点で、「小さな政府」(どころか無政府に近い)を信奉するピーター・ティールが、明確に「大きな政府」を志向しているトランプ支持の理由を、その政治思想ではなく、アジャイルのその場の変化に対応していくというビジネスマンならではの行動様式に共通性を感じた点にあるのではないかという推察などは非常に面白い。

    また、webという観点から見れば、現在もまだ真相が定かではないものの、ロシアによるハッキングがアメリカの内政にここまでの影響を与えたという点で、「ソフトパワー」の時代から、「サイバーパワー」の時代になったのだ、という指摘は、今後のITを考える上で、極めて重い。

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著者プロフィール

1965年生まれ。FERMAT Inc.代表。コンサルタント、Design Thinker。コロンビア大学大学院公共政策・経営学修了(MPA)。早稲田大学大学院理工学研究科修了(情報数理工学)。電通総研、電通を経て、メディア・コミュニケーション分野を専門とするFERMAT-Communications Visionary-を設立。著書に『ウェブ×ソーシャル×アメリカ』(講談社現代新書)、『デザインするテクノロジー』(青土社)、『ウェブ文明論』(新潮選書)など。

「2015年 『〈未来〉のつくり方 シリコンバレーの航海する精神』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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