- 本 ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791770786
作品紹介・あらすじ
古来、「凶星」とされてきた土星は、人生の危機から、より高い自己への成長をうながす導き手でもあった。ユング心理学をこころの分析ツールとし、シャドウ(影)の現れと一致する土星の真の姿を鮮やかに描き出す。ホロスコープ解読、パートナーとの相性診断にも役立つ実践的心理占星学。待望の復刊。
感想・レビュー・書評
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伝統占星術において、土星は「大凶」の星とされてきました。運命の重荷、制限、孤独、失敗、老い―人生の暗部を司る「悪魔」として恐れられ、忌避されてきた惑星です。
しかし1976年に出版された本書は、この「暗い星」の意味を根本から捉え直しました。深層心理学的な視点から土星を読み解くことで、そこに人間の成長と深化のための不可欠な原理を見出したのです。
例えば、土星が牡羊座に位置する人は、自己主張や独立に対して深い不安や制限を感じやすい。しかしその制限との格闘こそが、その人の個性を鍛え上げていく。土星が乙女座にある人は、完璧を求めるあまり自分を追い詰めてしまう。だがその厳格さは、その人固有の仕事の流儀を生み出していく。
グリーンは、土星の「制限」や「重荷」を、魂の成熟のために必要な試練として捉え直します。土星は私たちの内なる教師であり、私たちを表層的な生き方から深みのある存在へと導く案内者なのです。
特に重要なのは、土星と時間の関係です。土星の運行は遅く、約29年で一周します。その周期は人生の大きな節目と重なり、特に「土星回帰」と呼ばれる27-30歳の時期は、多くの人が人生の大きな転換を経験します。グリーンは、この時期を単なる「厄年」としてではなく、自己実現に向けた重要な通過儀礼として描き出します。
また本書は、各ハウスに位置する土星の意味も詳細に論じています。例えば、第7ハウスの土星は関係性における恐れや制限を示しますが、それは同時に、真摯な関係を築くための試練でもある。第10ハウスの土星は社会的な重圧を表しますが、それは自分固有の使命を見出すための道標ともなる。
この本の革新性は、占星術を運命論から解放し、心理的成長のツールとして捉え直した点にあります。「悪魔」とされてきた土星を、魂の深化をもたらす「賢者」として再解釈することで、占星術解釈に新しい地平を開いたのです。
現代でも、この本は占星術文献の古典として読み継がれています。それは単に占星術の解釈書としてだけでなく、人生の困難や制限とどう向き合うかを考えるための深い洞察に満ちた書物として。
土星の運行は今も続いています。そして私たちは今も、この「古き悪魔」との対話を通じて、自己理解を深めていくのです。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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