分かれ道 ―ユダヤ性とシオニズム批判―

  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791770793

作品紹介・あらすじ

世界的思想家による、ユダヤそしてシオニズムをめぐる画期的提言
いまなおその混迷を極めるパレスチナ/イスラエルをめぐる問題に、現代を代表する思想家がせまる。なぜこの問題は解決しないのか。イスラエルという国家の本質、そしてパレスチナの人々の苦難。そこにはシオニズムという大きな問題が横たわっていた。ユダヤ性とは何かを徹底的に主題化して論じ、たがいに手をとりあう「二国民国家創造」の可能性を追求する。

感想・レビュー・書評

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  • 反ユダヤにならずに、どうすればイスラエルを批判することができるか?

    日本にいると、それは別の問題のように思ってしまうのだが、この問題について、しかも歴史的な事実の整理ではなく、あくまでも思想としてこの問題を論じて、400ページを超える本が必要になるということにまずは驚く。

    しかも、ユダヤ人が、イスラエル批判するのは、反ユダヤ的ととらえられる危険は少ないんじゃないとおもうのだが、そうでもないようだ。

    かつて、ハンナ・アーレントが、「エルサレムのアイヒマン」を書いたときに、ユダヤ人社会から激しい批判を受けたし、ジュディス・バトラーも批判を受けた経験があるようだ。

    というなかで、いかに反ユダヤにならずに、また結果として、反ユダヤの益にならないように、またイスラエルの行動を正統化につながらないように、イスラエルを批判するためにどうするか?ということを行きつ戻りつ(?)しながら、議論している感じかな?

    バトラーのとった戦略は、「ユダヤ性」という概念から、イスラエル批判の思想を引出そうというもの。そこで、論じられるのは、レヴィナス、ベンヤミン、アーレントと言った「ユダヤ」人の思想家。バトラーは、これらの思想家からヒントを掘り起こしつつ、批判的に議論を積み上げていく。

    バトラーのアーレント批判は、「国家を歌うのは誰か?」でなされていたが、「それはそうかもだけど、それを言ってもね〜」なものだった気がしたが、ここでは一定の分量をもって、しっかりとした議論になっていると思う。

    個人的には、「エルサレムのアイヒマン」の宣告の扱いについては、モヤモヤしていたところを議論していて、その読解には、共感した。

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著者プロフィール

カリフォルニア大学バークレー校教授。主な著書に『ジェンダー・トラブル――フェミニズムとアイデンティティの撹乱』『アンティゴネーの主張――問い直される親族関係』(以上、竹村和子訳、青土社)、『アセンブリ――行為遂行性・複数性・政治』(佐藤嘉幸・清水知子訳、青土社)、『分かれ道――ユダヤ性とシオニズム批判』(大橋洋一・岸まどか訳、青土社)、『権力の心的な生――主体化=服従化に関する諸理論』『自分自身を説明すること――倫理的暴力の批判』(以上、佐藤嘉幸・清水知子訳、月曜社)、『生のあやうさ――哀悼と暴力の政治学』(本橋哲也訳、以文社)、『戦争の枠組――生はいつ嘆きうるものであるのか』(清水晶子訳、筑摩書房)、『触発する言葉――言葉・権力・行為体』(竹村和子訳、岩波書店)、『欲望の主体――ヘーゲルと二〇世紀フランスにおけるポスト・ヘーゲル主義』(大河内泰樹・岡崎佑香・岡崎龍・野尻英一訳、堀之内出版)、『偶発性・ヘゲモニー・普遍性――新しい対抗政治への対話』(エルネスト・ラクラウ、スラヴォイ・ジジェクとの共著、竹村和子・村山敏勝訳、青土社)、『国家を歌うのは誰か?――グローバル・ステイトにおける言語・政治・帰属』(ガヤトリ・スピヴァクとの共著、竹村和子訳、岩波書店)などがある。

「2021年 『問題=物質となる身体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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