- Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791790876
作品紹介・あらすじ
心のひだをどう読むか。意識のフィルムは、どのようなプロセスで現実を現像するのだろうか。現実は、歴史も文化も性も親子関係も、もしかしたらわれわれが共有する共同の幻想ではないのだろうか。精神分析理論を自在に駆使するユニークな応用編のほか、創見にみちた基礎理論、二論文を併せて収録。
感想・レビュー・書評
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サリンジャーや太宰治の作品をパトグラフィの観点から分析した論考のほか、著者が学生時代にスリ師の男と一晩酒を飲んだ体験など、心理学とはまったく関係のない話題をあつかったエッセイも収められています。そのほか、中公文庫版の『ものぐさ精神分析』正・続には収録されていない、著者の書評や、早稲田大学に提出された修士論文とストラスブール大学に提出された論文も収められています。
早稲田大学に提出された「フロイド理論の発展と批判」では、フロイトの機械論的なリビドー説を批判し、人間の心理の発達を観念体系の発達としてとらえる見方が示されています。また、ストラスブール大学に提出された「ある一つの精神分析的人格理論」では、自己保存のために有益なものを保存する「ナルチドー」と敵対するものを破壊する「ディストルドー」、および性衝動の「リビドー」がどのような発展プロセスをたどるのかを明らかにし、人間の人格や性的倒錯の由来を解明しています。これらの論文では、さすがに著者もていねいに学説のサーヴェイをおこなっていますが、後年の著者の思想につながる発想が随所に見いだされ、興味深く読みました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
出がらしとはいえ、なかなか味がある