清貧の思想

著者 :
  • 草思社
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  • レビュー :10
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794204776

作品紹介・あらすじ

生活を極限にまで簡素化し、心のゆたかさを求めたわれらの先達。西行・兼好・光悦・芭蕉・良寛など清貧に生きた人々の系譜をつぶさにたどり、われら今いかに生きるべきかを改めて問い直す。

感想・レビュー・書評

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  • 若い頃に読んだときは、辛気臭くて好きでなかった。
    当時ベストセラーで購入したけれど、挫折して手放した本。

    いまの若い読者の多くがそうだろう。我慢しろ、耐えろ、誇るな、奢るな、持つな。こんなことを説かれて、血気盛んな時期に頭に来ない方がおかしい。老人の訓戒と言われてもしかたがない。

    いま読み直してみると、書かれていることがすっと頭に入ってくる。人生の断捨離を迎えた頃に、余分なものをもたない、しがらみを捨てることがどれだけ豊かなことか。

    本阿弥光悦は吉川版武蔵の造形が、かなり本人と異なると聞いて驚いた。池大雅や与謝蕪村のような文人の生き方は、あきらかに名声だけを求める現在のクリエイターとは雲泥の差。教科書でしか知らずにいた『方丈記』を紐解きたくなる。

    若い頃、なぜしっくりこなかったかといえば、あのころは何者にかなりたくてウズウズしていたからのだろう。現在は、悪い意味で社会とかかわりたがらない隠者のような生活を好む若者が多いけれど、清貧に生きることが増えても経済が回りづらくなるので、考えものでもある。

  • “清貧”って思想は悪しき過去の遺物だと思っている。
    だからこそ読んだが…
    苦労すれば必ず報われると思ってる人はどうぞ、お読み下さい。

  • ジャパニーズスピリット

  • 生活を極限にまで簡素化し、心のゆたかさを求めたわれらの先達。西行・兼好・光悦・芭蕉・良寛など清貧に生きた人々の系譜をつぶさにたどり、われら今いかに生きるべきかを改めて問い直す。

    本阿弥光悦と肩衝の茶入れ
    本阿弥妙秀の暮しと生き方
    本阿弥光徳、光甫の刀を見る目
    鴨長明と方丈の庵
    越後五合庵での良寛
    良寛、山中の沈黙行
    鴨長明が讃えた芸道一筋の名手たち
    子供と遊ぶ良寛の内なる世界
    池大雅の暮しと人となり
    桃源郷に心を遊ばせる与謝蕪村
    蕪村、市井に住むことこそ己れの風流
    橘曙覧、雨の漏る陋屋に万巻の書
    吉田兼好の死生観とその普遍性
    風雅に身を削る松尾芭蕉
    旅で死ぬ覚悟の芭蕉に見えた景色
    清貧の思想―日本文化の一側面
    古代インド哲学と良寛の同質性
    西行、花を愛し孤独に耐えきる精神
    清貧とは清らかで自由な心の状態
    自然の中のいのちの気配に耳をすます
    現実の無残な相をも直視する精神
    庶民に生き続けてきた清貧の思想
    何が必要で何が必要でないか
    われらいかに生きるべきか

  • 足るを知らば貧といえども冨となづくべし、財ありといえども欲多ければこれを貧となづく 大雅には悲劇性が感じられないのは、認められなくても貧しくともそんなことに頓着せずただ画を描くことを楽しみにした 日本とは、日本人とは一体なにものだという関心が高まって来た  清貧とはたんなる貧乏ではない 日本家屋は広い開口部を設けて自然に向かって自己を開放している 

  • 図書館で借りた。

    海外で「日本文化の一側面」を講演していた著者がその内容をまとめたもの。主に本阿弥光悦や西行、良寛、芭蕉をひきながら日本文化として受け継がれてきた「清貧」について説明する内容となっている。

    当時海外では日本の製品は見えるけど、日本人の顔が見えないと言われていた。日本人と接した人によると、彼らは金の話しかしない、という評判もあった。著者はそれに対して、金儲け以外に心の世界を重んじる文化が日本にあるのだ、と紹介してきた。

    本書は第1部と第2部に分かれており、第1部は本阿弥光悦や池大雅などのエピソードとそこにある思想の解説、第2部は海外で話していた内容を流れに沿ってまとめ、適宜解説を行っている。
    第2部から読むとその説明を自分が聞いているつもりになれるため、よいかもしれない。

    ドイツ中世の神秘学者マイスター・エックハルトとも結びつけられて語られている部分がある。西洋でも持たないことが心を自由にする方法であるという考えがあることに驚いた。

    清貧はただの貧しさや節約という消極的なものではなく、自ら最低限の生を選択することで内的な自由さを得るものなのだという考えはもっと広まってもいいように思う。

    エピソードで紹介されるような貧しく暮らし、詩や俳句などを作っていた人たちはどのように食べていたのかが非常に気になった。畑は持っていないだろうし、作品は売るものではないだろうから、人からもらっていたとしか思えない。中には作品を売っている人もいたからそのような人は特に疑問を感じないけれど、それ以外の人のことがもっと知りたくなる。
    最低限の衣食住で住は草庵、衣はぼろ、で納得できるが、食は毎日のものだけれどあまり描写がない。現代で同じような暮らしをしようとするとどこまでできるのかも気になる。

    最低限の生の意味を知るには、まず過剰なものや金に囲まれた生活を知らなければならないということにも触れられていた。紹介されている歴史上の人は裕福な家に生まれてからそれを捨てている人が多いらしい。現代は生活に困らない状態を知っている人が多いから、そのような生活の見直しもできるはずだとも述べている。

    一方、『徒然草』第百十二段をひきながら、従わないと仲間外れにされる日常のきまりについて述べている。そのようなものに従っていたら「一生は、雑事の小節にさへられて、空しく暮れなん」だと。今の若い人はものへの執着が薄れているけれど、繋がることへは執着していると見聞きする。

    ここで考える。ものに関しての見直しは簡単だが、対人関係(他人からの目線?)の見直しは難しいということなんだろうか。それとも最初に豊富な対人関係に恵まれていないから、まずは得ることだとして繋がりを求めているのだろうか。もし後者なら、豊富な対人関係を築ける仕組みがあれば、ものにもつながりにも執着しない人が多くなるのだろうか。

    ただ、そのような人間が多い世の中が成り立つかどうかは分からない。良寛の時代でさえ、子どもと遊んでばかりいる良寛を苦々しく思っている人がいたのだから。
    生産する人と内的に自由な人と分かれるのではなく、生産したりお金を儲けたりすることを考えながらも、どこまでが持ち過ぎで、自分にとっての最小限を見定めようとする態度を養っていくことが大切なんだろうかと思った。

  • 清貧の思想が世に出たのは1992年秋、長い年月を経て現在読んでも色褪せることなく身に染みて学ばなければならないと感じるのは名作だからか?
    それとも長いバブル崩壊後遺症の中、日本国民がそこから何ひとつとして教訓が残されなかったのか?
    どちらとも言えるしどちらにしても未来に残るべき傑作である
    過去の詩人が残した美しい言葉は未来へ伝える哲学であり日本の未来を憂い遺言だったのかも知れない

    現代人は有形の価値しかわからなく無形の価値を理解出来ない風潮がある
    子供をテストや偏差値の数字で見て
    絵画も高値が着いたモノに価値があると見る
    平均寿命やGDP、スポーツの祭典ではメダルの獲得数・・・。

    数字として目に見える価値だけしか評価出来ないのは所有をはじめとする欲望に精神が支配されてしまったからだろう

    文中では歴史上の詩人が登場するが吉田兼好の徒然草が度々引用される

    著者はその徒然草の重点を「所有を必要最低限にすることが精神の活動を自由にする
    所有に心を奪われては人間的な心の動きが阻害される」とあるが清貧の思想をよく表した言葉です

    本も終わりに近づく頃に何気なく登場する一言「人生とは足し算ではないのだ」著者の核心に迫る言葉だろう
    人生とは足し算ではない・・・何かを求めて何かを失う・・人生も世界もゼロサムですから
    この奪い合いの社会からの脱却こそが清貧の思想なのかも知れない

  •  
    ── 中野 孝次《清貧の思想 199209‥ 草思社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/4794204779
     
    ── 中野 孝次/沢田 重隆・絵
    《西洋の見える港町 横浜 199712‥ 草思社》\2,310
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19520121
     挿絵画家のスタンプ
     
     質実剛健 ~ メザシを食って月十万円で暮した男 ~
    http://q.hatena.ne.jp/1256783735#a962082
     一貧一富 ~ 紳士録の人々 ~
     

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