チンギス・ハーンの末裔: 現代中国を生きた王女スチンカンル

著者 :
  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794206084

感想・レビュー・書評

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  • もう少し重厚な読み応えでもよかったかな。
    さらっとすぎる。
    しかし、それは私にもブーメランのように返ってくる言葉だが。

  • チンギス・ハーンの血をひく、内モンゴル・オルドスのモンゴル貴族の西公家に生まれた最後の王女の一人、スチンカンルの生涯を描いたドキュメント。
    清朝時代には貴族として遇された家柄も、スチンカンルが生まれた1927年には既に清朝が滅亡し、一族は中国の内乱に翻弄されて没落。
    世が世なら王女であったスチンカンルだが、家来の身分にあたる男性と結婚し、家畜の世話で汗を流しつつ先祖の誇りを胸に気高く生きる。
    しかし幸福も長くは続かず、中華人民共和国の成立は貴族出身の彼女を「ブルジョワ階級」と位置付け、文化大革命の暴風雨によって過酷な批判と重労働を課され、先祖の聖地を開墾させられるという屈辱まで受ける。
    スチンカンルという一人の女性の過酷な生涯を綴ることで、現代中国の狂気と、その沈静化の過程が描かれています。
    彼女に対する残酷極まる仕打ちは現代中国の負の面の醜さを如実に表し、その後の名誉回復への道は正常化(?)の過程を映し出しています。
    文化大革命は既に過去のもので、中国自身が誤りであったと認めていますが、昨今の反日デモなどでも中国人の怒りのパワーが発散された凄まじさは変わらないのではないかと思います。
    著者はスチンカンルの実家・西公家の家臣の家柄の出身で、やはり「ブルジョワ階級」に位置付けられたため両親も文化大革命で辛い思いをしたそうです。
    スチンカンル本人から聞いた話を再現することで、文化大革命の誤りを、少数民族に対する処遇という観点からも描いています。

    しかし本書の内容と比べると、「チンギス・ハーンの末裔」というタイトルはいささか誇大ではないでしょうか?
    たしかにチンギス・ハーンの末裔たる女性の波乱に富んだ生涯を綴っていますが、このタイトルだと英雄物のように思えてしまいますねw
    むしろ副題である「現代中国を生きた王女スチンカンル」を主題にした方が良かったんではないかと。

    ニン、トン♪

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著者プロフィール

1964年南モンゴル・オルドス高原生まれ。静岡大学人文社会科学部教授。北京第二外国語学院大学日本語学科卒業。専攻は文化人類学。博士(文学)。著書に『「中国」という神話』(文春新書)、『墓標なき草原――内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』(岩波書店・司馬遼太郎賞受賞)、『日本陸軍とモンゴル』(中公新書)、『逆転の大中国史』(文藝春秋)など多数。

「2018年 『モンゴル人の中国革命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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