- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794209061
作品紹介・あらすじ
いまや政治家も、学者も、官僚も、マスコミも、こぞってフェミニズムに媚びている。しかし本書の著者は、フェミニストの主張が屁理屈にすぎず、実際には多くの女性を苦境に陥れているという実態を明らかにする。
感想・レビュー・書評
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女友達に一度、却下されたことがあったが、やはり在りし日の僕は、第一級のフェミニストであった。しかも、本書で「歪んだものへと狭隘化し、硬直化」(9頁)したと語られる、ダメフェミニズムの「害毒」に冒されたような、「男女平等」「女性の生き方多様化」を「働けイデオロギー」としてのみ考え、「フェ理屈」を述べるような。本書を読むかぎり、それは間違いなさそうである。おそらく僕のフェミニズム幻想を産むことに一役買っていた宮台真司にたいしても、しっかり批判が加えられている。曰く、「宮台の言論は、勢いのいい女性たちの意向にそった意見を言って、「いい子、いい子」と言ってもられることを期待した、マザコン的な男の行動様式」(150−1頁)だそうだ。ハハハ。あー啓蒙されちゃったなー
「らしさ」は「私らしさ」だけで充分。
「男らしさ」「女らしさ」は不要。
主婦は家畜同然。
共働きはすばらしい、女性の社会進出はますます増えるべきだ。
保育園での集団保育はすばらしい、ますます増えるべきだ。
シングルマザーは女性の自立の反映ですばらしい、ますます増えるべきだ。
「母性神話」?「三歳児神話」?クソ喰らえ!
といった公式主義的観念らに、否、が突き付けられるわけである。
なにも本書で語られている内容すべてに同意するわけではない。いくらなんでも、それほど、あたま、わるく、ない。書かれたのもちょうど10年前であり、いまの社会を見渡せば著者が敵視するフェミニストもフェミニズムに冒された価値観も、ほぼ効力を失っているとするのが共通認識として、すでにある。その思想の中身は、有用性のあるもの(都合の良いもの)だけが自然淘汰されるかたちで、適宜中和されて残っていると言っていい。今では専業主婦も悪くないかな、大学を出て一度働いて、時期を見計らって出産、退社、というのが女性の心性としても、女性を受け入れる社会(男性社会、と言ってしまっていいと思う)の心性としても、大半を占めているように感じられる。あとは、棚上げされている育児休暇後の復帰にかんする諸問題についての解決のみが待たれる、というのが実感である。いわゆる「M字型就労形態」の問題である。
しかし、このような状況は大体、本書で語られているところである。やはり、本書は現在でも十分アクチュアリティを持った、すぐれたフェミニズムの本だと言えるのかもしれない。現在の社会状況を、結局のところ男性の庇護下に置かれているものとしてフェミニズムの敗北ととるのか、男根社会に少なくない変化を与えることに成功したとして肯定的に捉えるのか、で評価は分かれるところだと思うけれど。
少なくとも男女問題を反省的に(相対的に)思考せよ、という意味において著者には完全に従わざるを得ないことは、真理であるように思う。通俗的なフェミニストであろうが、著者のようにフェミニストから嫌われ、実際、通俗的フェミニズムを批判しまくっているのだが、それに代わって在るべきフェミニズムを提示するアンチ・フェミニズム・フェミニストであろうが、どちらでもよい。肝要なのは、本質を見失わないために反省的に思考することである。その点ではどうも、著者には完敗らしい。乾杯。
中途半端なフェミニストは必読。詳細をみるコメント0件をすべて表示