砂漠の女ディリー

  • 草思社
3.96
  • (27)
  • (29)
  • (25)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 199
感想 : 36
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794209207

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ノンフィクション。ソマリアの遊牧民として生まれたワリスディリーは、その伝統に漏れず僅か5歳で割礼を受けています。それがその時期にアフリカの多くの地方で生まれた女の宿命であり、割礼を受けていない女の子は不浄とされて結婚ができないのです。多くの女性は少女の頃に傷口からの感染などで命を落とし、生き延びても健康被害を受け続けて生きることになるというにもかかわらず、その伝統はアフリカの多くの地域で親から子へと受け継がれてきていました。そして彼女たちの結婚はラクダ数頭との引換えで父親が決めるものだそうです。

    老人と結婚させられそうになったワリスは、まだ10歳くらいにもかかわらず、砂漠を何日も走って逃げるという方法で家族を離れました。そしてニューヨーク、パリ、ミラノなどのファッション都市を渡るナオミキャンベルらと並ぶようなスーパーモデルになったのです。

    有名になった彼女は、自分が数々の困難の場面で神から命を救ってもらった意味を考えるようになります。そして、どれだけ考えてもその意義が理解できないFGMの理不尽さについて、自らの経験を含めてメディアに語ることを決めます。それはソマリアの女達自身が語られたくないことであり、自分や家族の命を狙われる危険もあるとても覚悟のいる行動です。そして最終的に国連特別大使としてFGM排斥運動に参加します。

    割礼はどれだけ不衛生な残酷なものなのかが克明に説明されていて衝撃的です。それと並行して、彼女が語る故郷ソマリアの自然とそこに生きる人々の日々の営みが神々しいほどに清貧で、愛に溢れて美しく、そこに涙が自然と流れました。自分でもなぜ涙が出るのかわからないような感動の涙でした。

    読まれる方は、まずワリスディリーがどれだけ美しい人か、先に画像検索されることをお勧めします。
    この使命を果たすために神が彼女に美を与えたのかもしれないとさえ思わされます。

    割礼の描写はしんどいので一度でいいですが、ソマリアの遊牧民の生活の部分だけを再度読みたいと思っています。

    おそらく訳者の武者圭子さんという方も、とても優れた方なのだと思います。吸い込まれます。

    とても良い読書時間を過ごせました。小説を読むのは楽しいですが、ノンフィクションの迫力には敵わないなぁと感じた一冊でした。

  • アフリカ・ソマリアの砂漠の遊牧民に
    生まれた ワリス・ディリーの自叙伝。

    13歳で砂漠から逃げ出し
    ロンドンヘ困難にあいながら出て、その後
    スーパーモデルに転身するという
    華やかな面を持ちつつも
    5歳の頃に受けた女子割礼
    精神的・肉体的に苦しみ続けた半生。

    最初の行のロンドンまでの困難は、なんでもないと思うほど、次々とんでもないことばかり起こる。よく覚えているなと思うほど、細かく描写されているので、映像より訴えるものを感じる。

    華やかな外見に比べて、内面は筋の通っている張り詰めた美しさを、この本から感じた。

    知らないことが多くて、無知の恥ずかしさを思う。

  • とてもおもしろかった。
    ソマリアで遊牧民の子どもとして育ったワリス・ディリーがニューヨークでスーパーモデルとして活躍するようになるまでの半生記。
    砂漠での暮らしについて彼女は淡々と語っているけれど、これがすごい。

    「万が一、夕食になにも食べるものがなくても、わたしたちは騒ぎ立てたりはしなかった。だれも泣いたり、文句を言ったりはしない。もちろん小さなこどもは泣くかもしれない。けれど少し大きくなれば、それが砂漠の掟だということを知り、なにも言わずに横になって寝る。食べ物がなくても落ち込んだり、大騒ぎしたりはしない。明日になれば、道は開けるだろう。インシャッラー、神のご加護があれば、きっと食べ物は見つかるだろう。それがわたしたちの哲学だった。わたしたちの暮らしは自然に頼っていて、自然を動かしているのはわたしたちではなく、神だったから。」(p.28)
    このような子供時代をすごした人が私とは違った感じ方をするのは当然だろうな、と思える。

    彼女は13歳の時、らくだ5頭とひきかえに老人と結婚させられることになり、それがいやで家族のもとを逃げ出した。紆余曲折を経てロンドンで暮らすこととなり、大きなカルチャーショックを受けながら、やがて自分の生きる道を見出していく。いろいろなことにとまどいながら、きっと神への信仰が支えになっているところがあるのだろう(彼女はそれほど敬虔なイスラム教徒という感じではないけれど)、自分は自分らしく生きていけばいいんだ、と未来を信じられる強さがあるのが気持ちいい。

    中でFGMについての経験が語られる。とてもショッキングな内容だけれど、こうして実際に切除を受けた人の話を聞くと、やっぱり部外者と言われようと声をあげなければ、と思う。「FGMはその部族の伝統的な慣習なのだから、他の文化に口出しすべきではない」とか、「何事も西洋の価値観を押し付けるのはよくない」と言う人もいるが、FGM は女性に苦痛を与えるのが確実で、部外者が何か言わないことには内部から声をあげるのは大変だし、きっとこれからもこのために苦しむ女性達を作りつづけるのだろうから。そしてワリスも、女性達が苦しむことになるこんな慣習をなくすために、大変な思いをして自分の体験を語っているのだから。

  • 圧倒的である。

    女であることを考えさせられた。
    この本が書かれてから時が経っているが、現在の状況は
    どうなっているんだろう。
    フェミニストって別の世界の生き物みたいに思っていたけど
    コレを読んだら…。女の性を考えずにはいられない。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001200753

  • 想像を絶する
    彼女だから出来たんじゃない

  • ノンフィクション

  • 彼女の半生は実に興味深かったが、作品としては読み進めるのが辛かった。

  • ノンフィクションで、こんなにグイグイ引っ張られる本は、初めてかも。

全36件中 1 - 10件を表示

ワリス・ディリーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×