銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

制作 : 倉骨 彰 
  • 草思社
4.03
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レビュー : 343
  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794210050

作品紹介・あらすじ

なぜ人間は五つの大陸で異なる発展をとげたのか?人類史の壮大なミステリーに挑んだ話題の書!ピュリッツァー賞、コスモス国際賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • ゼロ年代の最重要歴史書。

    西洋人がニューギニア人を征服し、ピサロがインカを征服したのに、なぜその逆は起こらなかったのか、について地理的な要因から考察した本。この本の新しさは、人間の技術的な進展の背景にある条件について語られているところにあると思う。作者が語る要因は、そのどれもが非常に納得できるもので、「世界史」という構築が難しくなった分野を新しく生まれ変わらせることにも繋がった。

    小説を書いている身としては、ファンタジー小説の世界観を作る場合、この本を読んでいるときと読んでいないときとでは、天と地ほどの開きが出てくると思う。普段何気なく生きている世界にも条件があって、その条件下で栄枯盛衰があるのだと気付く。面白いエピソードも満載だし、単純に読み物としても面白い。

  • 民族のかかわり合いの成果である人類社会を形成したのは、征服と疫病と殺戮の歴史である。p21

    10万年前から5万年前=「大躍進の時代」p55

    ピサロが皇帝アタワルパを捕虜にできた要因こそ、まさにヨーロッパ人が新世界を植民地化できた直接の要因である。
    ピサロを成功に導いた直接の要因は、銃器・鉄製の武器、そして騎馬などにもとづく軍事技術、ユーラシアの風土病・伝染病に対する免疫、ヨーロッパの航海技術、ヨーロッパ国家の集権的な政治機構、そして文字を持っていたことである。p120

    植物栽培と家畜飼育の開始は、より多くの食料が手に入ることをいみした。そしてそれは、人口が稠密化することを意味した。植物栽培と家畜飼育の結果として生まれる余剰食料の存在、また地域によってはそれを運べる動物の存在が、定住者的で、集権的であり、社会的に階層化された複雑な経済的構造を有する技術革新的な社会の誕生の前提条件だったのである。したがって、栽培できる植物や飼育できる家畜を手に入れることができたことが、帝国という政治形態がユーラシア大陸で最初に出現したことの根本的な要因である。また、読み書きの能力や鉄器の製造技術がユーラシア大陸で最初に発達したことの根本的な要因である。p132

    【一歩の差がおおきな差へ】
    食料生産を独自に始めた地域は世界にほんの数カ所しかない。それらの地域においても、同じ時代に食料生産がはじまったわけではない。
    食料生産は、それを独自にに開始した地域を中核として、そこから近隣の狩猟採集民のあいだに広まっていった。その過程で、中核となる地域からやってきた農耕民に近隣の狩猟採集民が侵略され、一掃されてしまうこともあった。この過程もまた多くの時代にわたって起こったことである。最期に、環境には非常に適しているのに、先史時代に農耕を発展させたり実践したりすることがなかった地域が世界には複数存在する。そうした地域の人々は、他の地域の人たちより一歩先に銃器や鉄鋼製造の技術を発達させ、各種疫病に対する免疫を発達させる過程へと歩み出したのであり、この一歩の差が、持てるものと持たざるものを誕生させ、そのあとの歴史における両者間の絶えざる衝突につながっているのである。p148

    人為的な淘汰によって新しい品種が生み出される原理は、われわれが種の起源と自然淘汰の関係を理解しようとするうえで、もっともわかりやすいひとつのモデルを提供している。p191

    肥沃三日月地帯で食料生産が早期にはじまるのに好都合だったもう一つの点は、「狩猟採集生活」対「農耕生活」という生活様式の競合が、地中海西西部や他の地域に比べて少なかったことであろう。p209

    栄養面でみると、サンプウィードはタンパク質分32%、油分45%と特に優れていて、栄養学者の夢ともいえる作物である。
    しかし、サンプウィードは、花粉症の原因として悪名高いブタクサの親戚で、ブタクサと同じように群生状態で花粉を撒き散らし、花粉症の原因ともなりうる風媒花である。人によっては、悪臭ともとれる強烈な臭いもあり、触れると肌がかぶれる場合もある。
    p224

    より生産性の高い植物、より有用な植物を栽培化し、より多様な作物を作り出すことで、肥沃三日月地帯は集約的な食料生産システムを発展させ、地域の人口密度をより早期に増加させている。その結果、肥沃三日月地帯の人々は、ニューギニアや合衆国東部の人々に比べて、歴史上より早い時期に、より発展した科学技術、より複雑な社会構造、そして、他民族に感染しやすい伝染病に対する免疫力を発達させたのである。p226

    「由緒ある14種」のうち、世界各地に広がり、地球規模で重要になった家畜は牛、羊、山羊、豚、馬の「メジャーな5種」である。p236

    【大型草食動物が家畜化されなかった6つの理由】
    ①餌の問題
    ②成長速度の問題
    ③繁殖上の問題
    ④気性の問題
    ⑤パニックになりやすい性格の問題
    ⑥序列性のある集団を形成しない問題
    ※家畜化されるためにはこれらの条件すべてをクリアする必要がある p251~

    プリエンプティブ・ドメスティケーション(栽培化・家畜化の先取り):野生の動植物の家畜化・栽培化によって得られる利益よりも、すでに家畜化・栽培化されている動植物を利用したほうが利益が大きいことが理解され、家畜化や栽培化が独自に進行しない現象
    p267

    アメリカ大陸やアフリカ大陸が南北に長い陸地であるのに対し、ユーラシア大陸が東西に長い大陸であることの差異が文字、冶金術、科学技術、帝国といったものの発展速度と大いに関係している。
    そして人類の歴史の運命は、このちがいを軸に展開していったのである。p286

    究極的には、農作物や食料生産技術の伝播速度が大陸によって異なっていたことが、なぜ民族によって手にした権力と富の程度が異なるのかという問いかけの答えになる。
    しかし、そうなってしまった直接の要因は、農作物や食料生産技術の伝播速度のちがいではない。農耕民が何一つ有利なものを持たずに、丸腰で狩猟採集民に対して一対一の戦いを挑んでも、勝てるわけがないからである。
    農耕民を狩猟採集民より有利な立場にたたせた条件のひとつは、食料を生産することによって、狩猟採集民よりも人口の稠密な集団を形成できたからである。
    さらに農耕民は、狩猟採集民よりも優れた武器や防具を持っていた。より進歩した技術を持っていた。様々な病原菌に対する免疫を持っていた。集権的な集団を形成し、文字を読み書きできるエリートたちが征服戦争を指揮することもできた。p288-289

    戦史は、偉大な将軍を褒め称えているが、過去の戦争で勝利したのは、かならずしももっとも優れた将軍や武器を持った側ではなかった。過去の戦争において勝利できたのは、たちの悪い病原菌に対して免疫を持っていて、免疫のない相手側にその病気を移すことができた側である。p291

    1346年から52年にかけて流行した黒死病(腺ペスト)では、当時のヨーロッパの全人口の4分の1が失われ、死亡率70%という都市もあった。p298-299

    エイズは1959年に最初の患者が確認されている。p302

    ユーラシア大陸から運ばれてきた病原菌で命を落としたアメリカ先住民は、ヨーロッパ人の銃や剣の犠牲者となって戦場で命を失った者よりはるかに多かった。p310

    ユーラシア大陸を起源とする病原菌は、世界各地で、先住民の人口を大幅に減少させた。太平洋諸島の先住民、オーストラリアのアボリジニ、南アフリカのコイサン族など。p316

    【ミニ結論】
    非ヨーロッパ人を征服したヨーロッパ人が、より優れた武器を持っていたことは事実である。より進歩した技術や、より発達した政治機構を持っていたことも間違いない。しかし、このことだけでは、少数のヨーロッパ人が、圧倒的な数の先住民が暮らしていた南北アメリカ大陸やその他の地域に進出していき、彼らにとってかわった事実は説明できない。そのような結果になったのは、ヨーロッパ人が、家畜との長い親交から免疫を持つようになった病原菌を、とんでもない贈り物として、進出地域の先住民に渡したからだったのである。p317

  • 「銃・病原菌・鉄(上)」ジャレド・ダイアモンド著・倉骨彰訳、草思社、2000.10.02
    317p ¥1,995 C0022 (2018.09.25読了)(2017.05.24購入)(2009.05.28/14刷)
    副題「一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎」

    【目次】
    日本語版への序文 東アジア・太平洋域から見た人類史
    プロローグ ニューギニア人ヤリの問いかけるもの
    第1部 勝者と敗者をめぐる謎
    第1章 一万三〇〇〇年前のスタートライン
    第2章 平和の民と戦う民との分かれ道
    第3章 スペイン人とインカ帝国の激突
    第2部 食料生産にまつわる謎
    第4章 食料生産と征服戦争
    第5章 持てるものと持たざるものの歴史
    第6章 農耕を始めた人と始めなかった人
    第7章 毒のないアーモンドのつくり方
    第8章 リンゴのせいか、インディアンのせいか
    第9章 なぜシマウマは家畜にならなかったのか
    第10章 大地の広がる方向と住民の運命
    第3部 銃・病原菌・鉄の謎
    第11章 家畜がくれた死の贈り物

    ☆関連図書(既読)
    「ネアンデルタール人類のなぞ」奈良貴史著、岩波ジュニア新書、2003.10.21
    「ハワイ・南太平洋の謎」秋道智彌著、光文社文庫、1989.07.20
    「インディアスの破壊についての簡潔な報告」ラス・カサス著・染田秀藤訳、岩波文庫、1976.06.25
    「インカ帝国探検記」増田義郎著、中公文庫、1975.09.10

    (「MARC」データベースより)amazon
    なぜ人間は五つの大陸で異なる発展をとげたのか? この壮大な謎を、1万3000年前からの人類史をたどりつつ、分子生物学や進化生物学、考古学などの最新研究結果をもとに解明。ピュリッツァー賞、コスモス国際賞受賞作。

  • 今年読んだ中ではナンバー1。
    かなりくどいけど、中身は素晴らしい。

  • 教科書からの通り一遍の知識しかなかった私にとっては、目から鱗が落ちる経験だった
    征服って言うのかな、これって
    9割以上の先住民を殺してしまって

  • 友人に薦められて購入。
    本書は、カルフォルニア大学の生物学者が、世界史の壮大な謎に挑んだもの。

    銃や病原菌、鉄をはじめとする技術、政治力や経済力の向上をもたらす技術を、ある民族は他の民族より先に発展させたし、ある民族はまったく発展させることがありませんでした。
    このような民族間の違いがなぜ生まれるのか。
    これを解き明かすことが本書の主旨です。

    多くの人は、能力の違いがこのような違いを生むのではないかと思うかもしれません。
    しかし、本書で著者はこう言っています。
    「歴史は、異なる人びとによって異なる経路をたどったが、それは、人びとのおかれた環境の差異によるものであって、人びとの生物学的な差異によるものではない。」

    つまり、環境の差異によって、狩猟採集生活から食料生産生活へと移行するタイミングが異なるのです。

    そして、このタイミングが早いということが、技術、政治、経済の向上が早いということにつながると言います。

    現在のヨーロッパにあたる、肥沃三日月地帯で最初に食料の生産技術が登場しました。

    北米やサハラ以南のアフリカ大陸に比べてユーラシア大陸が最も早く登場したのです。
    これには、アメリカ大陸やアフリカ大陸が南北に長い陸地であるのに対し、ユーラシア大陸が東西に長い大陸であることに原因があります。

    つまり、大陸が縦に長いと、緯度によって気候が大きく変わるため、必ずしも隣国から伝わった種子が、伝わった先の国でも同様に育つ訳ではありません。

    しかし、東西に長いユーラシア大陸は隣国で大きく気候が異なるということはありません。

    だから、食料生産生活が広く普及するのも早かった。

    これが原因で、民族間の文明発展の差が生まれるのです。

    とても納得させられました。
    本書を読んで、これまで考えもしていないくらい壮大な人類発展の歴史が、なんとなくですが、大きくストーリーで理解することができました。

    ただ、まだ上巻。
    下巻もあるそうなので、気合いを入れて下巻に突入します。
    (結構重い  笑)

  • 面白かったです。世界史の勉強もここまで掘り下げて教えてくれたら、もっと好きになれたかもしれないと思います。内容は125ページの表にコンパクトにまとまってます。
    以下備忘録。

    現代社会の不均衡を生んだ各大陸間の格差➡紀元前1万5,000年〜西暦1500年の発展の違いの差

    植物の品種改良➡農耕生活➡人口増加➡非農民の出現、軍人、役人、職人

    家畜できる動物の有無
    家畜➡伝染病

  • 人類史、とひとことで括れない壮大な内容。
    この感動を伝えたいのに、言葉足らずで伝えられないのがもどかしい・・・

  • ある人にススメめられて、堅そうな内容だなぁとか思いながら読んだら、すっごく興味深くて楽しかった!上巻では、人類史を人類の大陸移動経路や食料という観点から説明しています。
    私は特に農耕と狩猟について書いてあるところが好き。日本史だと、縄文=狩猟で、弥生=稲作(農耕)なので、弥生時代の方が進んでいてスゴい、という説明になりがち。けれど、世界には狩猟→農耕→やっぱ狩猟と戻った民族もいて、農耕が全世界を通じて優れているわけではないということに目からウロコ。

  • 今まで全然気にしていなかった、「どのようにして農業は起こったのか」等、言われてみれば不思議、その通りだなという内容満載。
    勉強になります。
    下巻を読むのが楽しみです。

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著者プロフィール

ジャレド・ダイアモンド
1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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