- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794210067
感想・レビュー・書評
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ようここまで広範囲のことを1人で書けるなと感心しながら読んだ。
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征服され植民地化してしまうところと、征服する側の差。
環境要因によってつくられていく歴史。
歴史ってつながってるんだな・・・と当たり前のことを理路整然と再認識させてくれる本。 -
なぜ、16世紀に南アメリカのインカ帝国を、そして中央アメリカのアステカ帝国をスペイン人が征服することができたのか、なぜ反対にインカの人たちがヨーロッパを征服することができなかったのか。なぜ、ヨーロッパの人間が 「銃・病原菌・鉄」でもってアメリカ大陸を征服することができたのか・・・・。人類の発祥はアフリカから始まったのに、なぜアフリカ人がユーラシアに覇権を持つことにならなかったのだろうか。なぜ、ヨーロッパ人とヨーロッパ人の子孫が世界の富と権力を握ることができたのだろうか・・・・・。
現代のこの時代、当然のことと思っているこの事実はどうして導かれてきたのだろうか、というその原因を追っ掛けたこの 「銃・病原菌・鉄」、なんだか眼からウロコの感じさえする。要は、①農業に適応できる植物種と家畜化できる動物の存在、②農業・家畜の伝播を妨げる地形上の障壁の有無、③大陸や人口の大きさ、これらによって各大陸に住む人類のその後の展開が大きく変わってきたということになる。もともと農業と動物の家畜化は1万年以上前にメソポタミアから始まったものだが、それが西に進んでヨーロッパに定着。余剰食糧が人口を増大させ、競争を激化させ、次々と新しい発明・技術が生まれ、国家や政治体制が出来上がってきたという経緯を辿ったということだ。もし、アフリカに食料となる植物の原種が多くあって、シマウマやサイ、象などが家畜化できていたとしたら、アフリカ人がそれらの家畜を戦車のように使ってヨーロッパを征服していたかも知れないということになる。(ハンニバルが象を使ってローマを攻めたが、これは野生の象を飼いならしていただけということらしい。家畜化していたわけではない)
この著者のジャレド・ダイアモンド は、ヨーロッパの人間が人種的に優れているということでは決してないとし、ただ地理的・気候的要因や生物学的な偶然によって導かれたに過ぎないと説く。場合によってはアフリカの黒人が世界を支配したかも知れないとの話は、にわかに信じられないものの、それが1万年の積み重ねの故だとしたら、納得するもしないもないということだ。我々日本人にはなんとなく白人の方が見た目もよく優秀だという意識が奥底にあるが、この話はそれをひっくり返しているわけで、ひとつ痛快な気分にもなろうというものだろう。なんとなく胸のつかえが降りるような感じもある。
こんなことからしても、本を読むというのは、実に面白いものと云えるのだろうね。 -
下巻。
上巻では、文明が興っていった原因をひとつひとつ探っていたが、下巻の第4部からは大陸ごとにその仮説を検証していく。
文明がいち早く花開いたユーラシア大陸と比較して、オーストラリア大陸や南北アメリカ大陸、アフリカ大陸がなぜ出遅れたのかを考察している。結論から言うと、地理的特性によって食料となる植物の栽培や家畜の飼育がユーラシア大陸ほど進まなかったために人口が増えず、社会も未発達のままで、病原菌への抵抗性も持たなかったことが理由とされている。
このあたりは上巻での考察とほぼ同じだが、興味深かったのは同じユーラシア大陸で古くから文明が興ったにもかかわらず、「中国」がヨーロッパを侵略して支配しなかったのはなぜかということだ。
いまだに不統一なヨーローッパの国々と比較すると、中国は何度も興亡を繰り返してはいるが、長きにわたって政治的にも文化的にも言語的にもほぼ統一されているのはあらためて考えると特殊に見える。そして、この特殊性ゆえに徐々にヨーロッパにリードを許してしまったという。
著者の考えでは、中国は政治的に統一され過ぎていたために競争が生まれにくく、内部の権力闘争の結果、ただひとつの決定によって技術開発が禁止されてしまったという。真相はわからないが、ひとつの仮説としては大変面白いと思った。
上下巻を通して、多くのデータや考察をもとに導いた結論は、単なる居住環境の差によってその後の文明の発達スピードが異なったということであり、人種などの生物的な差でないのはわかった。
歴史学や人類学的に考えるとまっとうで受け入れやすい結論なのだが、いま我々が生きている日々の生活を冷静に考えると、いわゆる”親ガチャ”ではないが、人は持って生まれた才能やその後の努力よりも、生まれ育った環境によって運命が決まってしまうということを示唆しているようで、少し引っかかる部分が残った。 -
ためになりました。
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世界史において征服する者とされる者の違いは食料だという事を理路整然と説明しているのが本著である。
食料を持てる者が圧倒的優位に立って持てない者達を征服できると言うことと、なぜ食料を持てる者と持てない者に分かれたのかと言うことを1万3000年の歴史を通じてわかり易く説明している。
この本を読み終わった時、この本で得た知識を誰かに話したくてウズウズする自分に出会えるだろう。 -
文明の発展は人種の差ではなく、置かれた環境によって進展のスピードが変わってくるということが分かる。
自然環境、他者との切磋琢磨、これは個人の成長に影響する外的要因も同じだと思う。この外的要因が人類の文明というマクロなモノに影響した場合、何千年というスパンで途方もない差ができてしまう。この事に改めてショックを感じてしまう。